新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

私のアメリカ論

2020-01-10 08:25:51 | コラム
私が実体験したアメリカを語る:

先ずお断りしておくと、これはアメリカ批判ではなく「アメリカの会社の一員として、実際に経験したと同時に細かく観察してきたアメリカを論じていくもの」なのである。後難を恐れて言えば「留学するとか駐在されただけでは見えてこないだろうアメリカという国を、私なりに分析しよう」ということだ。予めお願いしておくと「読者の方々の常識と違うではないかと、抵抗なさりたい点が多々あると思う」のだ。

100人に1人だ:
これはこれまでに何度も採り上げてきたアメリカ人の総合的な質の問題点である。内容は出張の帰りの機内で偶々隣に座られた某大手企業の(確か技術系の)アメリカ支社長との会話だった。色々と論じ合った後で「アメリカにいると一般的なアメリカ人の教育乃至は教養の程度にウンザリとなることが多く、我が国のようなまともな人たちは精々100人に1人だ」という結論になったという話だ。この議論の意味は「現実に社内でも街中でも日常的に広くアメリカ人と接触していないと出てこない話だ」と後承知置き願いたい。

私は結論を出してから迂闊にも「アメリカにいてイヤになるのは空港やホテル等でチェックインをしても、買い物をしても対応してくれる連中ののろまなな事だ」と言ってしまった。それに対して、支店長氏は「貴方の言うことは自己矛盾だ。たった今、まともな者に出会える確率は1%だと合意したばかりではないか」と笑われたのだった。この議論は解りやすくする為にやや極端な表現を用いているが、我が国との違いを簡単に言えばこういうことにもなうのだと解釈願いたい。

識字率と初等教育の充実を図るべし:
この点も何度も採り上げた元USTR代表のカーラヒルズ大使が1994年7月にNHKと読売新聞が共催したパネルデイスカッションにおける指摘だ。ヒルズ大使は「アメリカが対日輸出を増やす為には識字率と初等教育の充実を図るべきだ」と発言されたのだった。これは経験上からも言えるので「労働力の質を上げないと日本市場に受け入れられる製品の製造は難しい」という意味で、その経験そして来た私は「そこまでお解りであれば、是非とも産業界を督励されるべきではないか」と思って聞いていた。それほど「職能別労組には問題点が多い」とも言えると思う。


これだけではなお理解に苦しむ方がおられると思うので、先日の「私とアメリカの間」からその説明になると思う点を抜粋してみる。それは朝鮮動乱中に休暇で日本に来て買い物をするアメリカ兵を相手にしたアルバイト中の経験談である。初等教育を経ていないとしか思えない兵士の発言だ。

「デイナーセットを買いに来た白人の兵士がケースの中のセットを指さして“Me lookin’ lookin’. OK?”と言ったのだった。既に兵隊たちのこの手の英語に慣れていた私は「そこのセットを出して見せてくれないか」と言っているのだと解った。どういうことかと言えば、ヒルズ大使が指摘されたように初等教育をまともに受けていない者が軍隊に入っていたのだという意味だ。このような言葉しか言えないのであれば、識字率だって高いとは思えないのだ。」

こういう話し方をする者が21世紀の現在でもいるかどうかはご想像に任せるが、ヒルズ大使の指摘はこの兵士がいた頃の40年以上も後のことである点にご注目願いたい。

アッパーミドル・クラスの存在:
この点も「私とアメリカの間」にも採り上げたし、私は常にその存在と彼等との付き合いを語って来た。勿論、我が国にもアメリカの中産階級に相当する方々は沢山おられると思う、だが、忌憚のないところを敢えて言えば、ごく一般的な我が同胞がアメリカ人と付き合われても、仕事上で交流されても、アメリカを個人的かパック旅行ででも旅されても、滅多に私が言うアッパーミドルの人たちと膝つき合わせて語り合うとか丁々発止と議論をされるような機会が巡ってくるとは思えない。まして、彼らの家にでも招待されて家族全員と食事でもされるような機会は滅多に訪れないと思う。


つい先日も採り上げたと思うが、永年の友人である某財界人OBのお孫さんはIvy leagueの一角である大学に進学されたそうだが、そこでは授業料だけで7万ドルになっていたそうだ。私のW社における元の上司2人は共に2人の子供さんをIvy leagueに送り込んだが、1980年代でも既に年間の学費は合計で1,000万円超だった。彼らの収入と資産ではこの程度の出費は蚊が刺したほどにも感じていないのだ。簡単に言えば、彼等がアッパーミドル・クラスを構成している人たちなのだとお考え願いたい。

そして、この子弟たちは先ず間違いなく4年制の大学(念の為に言えば“under graduate”などと呼ばれている)を終えた後はビジネススクールに進みMBAそ取得して、大手企業に幹部候補生として採用され、俗に言う「スピードトラック」に乗って出世して経営者となって行くのだ。即ち、アメリカの社会構造では資産家というか裕福な家庭に生まれた者たちが、こういう教育課程を経て、企業内でその地位を確保していくのである。私が思うところでは「アメリカにおけるこのような階層を占めている人たちは精々全体の5%以下ではないか」なのだ。

解りやすいと思って言えば「ヒルズ大使が指摘されたような教育に問題がある層は、明らかにアッパーミドルの人たちよりも圧倒的に多く、Ivy leagueの東海岸の大学に余裕を持って子弟を送り込めるアッパーミドル・クラスかそれ以上の人たちはごく僅かである」というのがアメリカの社会の構成要素であるのだ。と言うことは、トランプ大統領がその支持層として確保されている階層は今や絶対多数であるということだし、3億2千万人も膨れ上がった人口の中には“minorities“がそう遠からぬ将来に「多数派」となってアメリカを左右する存在になってしまうのだろうということだ。

労働組合員たち:
これまでに何度も「アメリカの企業社会では会社側の管理職たちや経営者と労働組合員たちとも交流は先ずあり得ないし、会社側には組合員として製造の現場を経験した者がいることは考えられない」と指摘した来た。この点は我が国とも明らかな文化的な相違点である。だが、会社側の一員だった私は、ほぼ(恐らく日本人社員としても)例外的に本部の指示もあって組合員たちと何度も何度も接触もしたし交流もあれば、彼等を全員集めて「これまでより以上に品質の向上に努力せよ」と言ったような訓話もしたし、その為のプリゼンテーションもやって来た。


その結果として組合の最も年功経験の長くなって現場を離れて試験室等の中で現場や製品のデータを取るような言わば優雅な仕事をしている者たちとは「ニックネーム」で呼び合うような間柄になっていた。誤解なきよう申し上げておくと「ニックネームで呼び合うことは特に親密であるという意味ではなく、ただ単にお互いに名字を知らない」というだけの場合があると言うこと。私の場合には会社側の者たちが私を“Mas“というニックネームで呼んでいるのを真似ただけだ。なお、ニックネームとはファーストネームから採った愛称のことを言う。

私はこういう組合員たちとの交流があったので、彼等がどういう者たちで構成されているのかを知り得たので解説しているのだとご理解願いたいのだ。品質改善の必要性のプリゼンテーションをした際に熱心に片言の英語で質問してきたアジア系の顔付きの小柄な者がいた。こちらも懸命に答えた。後で工場の管理職に聞いたのだが、彼はベトナム難民だったので、特に“job security”に熱心なのだそうだった。因みに、白人の組合員からは質問は出なかった。



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