新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

アメリカの大統領候補のテレビ討論会に思う

2016-09-28 08:44:04 | コラム
素直に感想を述べれば:

その前に、クリントンとトランプ両氏の何れが優勢だったかを語らずに、先ず2014年3月11日に論じた「アメリカにおける女性の地位」から下記の2節を引用しておきたい。

>引用開始
これは俗説で真偽のほどは保証出来ませんが、「女性が男社会に進出して負けないように仕事をするためには、中途半端な能力と仕事の質では地位も収入も確保することが難しいので、懸命に努力する高学歴の女性が増えていった」との説も聞きました。その結果か、現在のような明らかに男に対抗心を示す女性が増えてきたのだそうです。実際に私の経験でも「女性と見て迂闊に対応しては大変なことになる」と痛感させられた能力が高い女性はいくらでもいました。そこに「男女均一労働・均一賃金」の思想を具体化した雇用機会均等の法律もあるのだと思います。

言葉を換えれば、「アメリカの女性たちは長い年月をかけて戦い、現在の女性の地位を勝ちとった」と見るべきかも知れません。私の経験の範囲内でも非常に挑戦的な人もいれば、男性に露骨に対抗意識を見せる女性にも出会いました。そういう場合には外国人である私のような者は対応に苦慮させられたものでした。しかし、中には非常にしっとりとした日本の女性のような控え目の優しい人もいます。要するに人を見て扱わないと痛い目に遭わされるのが、アメリカの社会かと思います。

<引用終わる

昨27日は夜にしか、この討論会の模様をBSフジのPrime Newsとテレ朝の古館なき後の報道ステーションで細切れに同時通訳付きか録画で彼ら二人主張を聞けただけでだった。それだけでは、解説者の説明が聞けても到底何かしたり顔で内容などを評論できるような材料はない。勝手を言えば同時通訳付きではない方が、我が衰えし聞き取り能力には有り難い。

私の見方は、最初に引用したように飽くまでも「アメリカの会社や同僚、管理職、副社長、CEOに接し、彼らの家庭にも入る機会を得たし、責任ある地位を確保している(中にはMBAでもある)優秀な女性マネージャーたちや、アッパーミドルの極めて知的水準の高い家庭婦人たちや、ホテル・商店・空港職員とCAたちと接することが出来ていたこと」が基本にある。即ち、我が国の女性と何処が違うかの多少以上の経験と知識はある。

それは「男性に対する対等で・対抗と言うべき意識が強烈である女性の多さと凄さと恐ろしさ」に発していると見て頂いて良いだろう。ここにはアメリカ慣れしてはいても、私は何処まで行っても日本人だとの条件があった。日本の女性的な優しさは期待しない方が無難な世界だ。だが、確認しておくが、アメリカの女性全てが対抗意識に満ちあふれ「男」に対抗し、押しのけようとしている訳ではないのは言うまでもあるまい。

ヒラリー・クリントン氏の論法と主張を聞いていると、極言すれば「男を男と思っていない程度では間に合わない。やるだけやってみよう」という考え方が根底に激しく流れており、何としてもドナルド・トランプ氏を全ての論点・問題点・主張でこき下ろし、誤りを細部まで炙り出し、徹底的に倒そうという姿勢だけで圧倒して見せていた。だが、そこには何らの建設的や改革論的な言論が見えなかった。ただただ、余裕とも見えた笑顔で口角泡を飛ばしているだけかとすら見えた。

しかし、長年アメリカの鋭く厳しい姿勢で仕事をする女性社員やマネージャーたちと日常的に交流してきた経験から言わせて貰えば、当に在職中に「そら、また来たぞ。負けないように、十分に三段論法的な論旨を事前に構築し、英語による表現を、言葉を選んで戦わないことにはえらい目に遭う。間違っても感情的になってはならない」と常に気を引き締めて、彼女らと会議(打ち合わせでも良いが)をしていたことを思いだした。

昨夜のヒラリー・クリントン氏は短時間聞けただけの討論では明らかに政策論争ではなく、トランプ氏の大小を問わない論旨の破綻や過去の暴言と政治・経済・防衛等に関する勉強不足を論うだけに主力を置く「男ならもっとしっかりし準備してからお出で」とでも言いたいような激しい攻撃と口撃で「矢張り怖いな」と懐かしく思わせてくれた。私は以前から彼女の”r”が巻き舌になる傾向が濃厚な発音を非難してきた。それは、私の英語が「支配階層のそれ」と仏文学のTK博士がいみじくも評されたことから考えても、後難を恐れて言うが、彼女に出自が何だったのかに思いが至ってしまう。オバマ大統領よりは品位が高いとはいえるが。

私が政策面でクリントン氏がお解りではないのか、あるいはおとぼけかと疑いたくなった点があった。それはアメリカの全世界の大多数の貿易額が少ないので、今後は輸出を伸ばして成長を計ると、シレッとして言ったのには寧ろ驚いた。アメリカからの対日輸出に22年もそれこそ命を懸けて励んできた私から言えば「何を仰る事やら」なのだ。私は1994年にUSTRのカーラ・ヒルズ大使が「対日輸出を伸ばそうと思えば小学校教育の徹底と識字率の向上が必須」と断言された労働組合員の質、労働力の質を改善することが焦眉の急務だった状態を、未だに脱し切れていないと知らないはずがないと思っている。

私はアメリカ経済は内需依存で、それもロッキー山脈以東の東海岸地域が主体で70%も占めていると、クリントンさんが知らないはずはあるまいと思う。そのアメリカでの製造業の劣化は目下中国の過剰生産にかき回されている鉄鋼や自動車産業を見れば3歳の児童にも解ることで、アメリカからの最大の輸出品目がボーイングの航空機であり、1990年代初期には、何と紙パルプ・森林産業界の我がW社がボーイングに次いで会社単位では対日輸出の2位だったほど不振だったのだ。

しかも、ICT化に押されたアメリカの製紙産業では世界最大の製紙国に成り上がったが原料を確保できていない中国に対する、世界最大の古紙輸出国でありながら、その中国の世界最新・最高の設備が生み出す世界的な品質の紙の輸入を100%以上の関税をかけて閉め出すような保護貿易政策を採っているのだ。その国が輸出立国をどうやって目指すと言うのか。

トランプ氏にも触れておかねばなるまい。我が友人のYM、SM両氏ともヒラリー・クリントン氏の大勝利を予想していた。私には全く予想など出来ない。評論家の中には「アメリカ人の良識に期待する」などと言ってトランプ氏が共和党の指名を獲得することなどないと曰った方がおられたのだから。Prime Newsでは産経の古森義久氏が「トランプ氏の日本は米軍の駐留費等を100%負担せよと言うのは(山本一太氏は既に75%だと指摘)実態をご承知ではないのだろうが、そこを言いたければ安保条約に依存せず、自分で守る体制を採れと言えば良かった」と指摘して、もしも大統領になればもう少し勉強して実態を知るだろうと解説したのが印象的だった。

この討論会については、我が国のマスコミはCNNの調査が67%だったかでヒラリー・クリントンの大勝利と報じていたが、山本一太氏は他のネット等の調査の例を挙げて反論していた。結論めいたことを言えば、私如きにはアメリカの実情を最早知ることは出来ない。しかし、既に述べたように男性、それも外国人としてアメリカの大企業の中にいて女性社員や幹部や知性高きMBAの婦人コンサルタントたちに接触の機会があった経験から言えば、クリントン女史のあの攻撃的姿勢を男性たちが快く受け入れるのか、などとつい思い込んでしまうのだ。



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