新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

トランプ大統領の政策批判

2017-03-03 07:29:18 | コラム
大統領には未だ学習すべき余地が残っているのでは:

施政方針演説の批判はしないと言ったが、矢張り一言指摘したくなった。

あの演説でも重要な部分を占めていたことの一つに「雇用」=jobとその増加があると思う。兎に角“job”を増やすことを強調しておられた。その点ではメキシコとの国境に壁を建設することだけを捉えても、“job”は増えるだろうと思うのだ。トランプ大統領は海外に工場を建設せずにアメリカ国内に工場を設けるか海外から戻せと言われている。

私は海外から戻そうと何だろうと、いきなり工場が建設出来て翌日からでも新規の雇用が生まれるものではないと思う。先ずは我が国とは違って価格が安い土地を購入し設計から着手して、新工場が出来上がるまでに数ヶ月あるいは何年かを要するだろう。その間に事務要員や労働組合員を雇って遊ばせておくことはないだろう。即ち、新工場建設投資計画が直ちに明日からの雇用の増加とはならないと思うのだが。

それだけではない。何人かの専門家が既に指摘しておられたが、アメリカの失業率はオバマ政権の下に4%台の低率にまで改善されているのである。そこに、現時点で考えても、いきなり新規の人の需要が増えた場合にそれを賄うだけの「職がない新規のjobに当てはまる人」が残っているのかなという単純且つ素朴な疑問も感じてしまう。もしも既に職がある人が異動していけば、そこには空席(opening)が生じてしまうのではないか。

私は部外者というか素人だから感じるのだが、大統領は新規のjobを増やすことを強調しておられるが、その間に企業のリストラや倒産や撤退や業界再編による失業者は出ないという想定なのだろうかと考えてしまう。即ち、プラスがあればマイナスもあるのは考慮されていないのではないかということ。

同様に疑問に感じたことを言えば、TPPやNAFTAを嫌って2国間の話し合いによるFTAをお好みのように聞こえる点だ。TPPだって参加各国が批准すれば発効という段階に漕ぎ着けるまで何年を費やしたか。2国間であればもっと簡単に短期間で締結出来るだろうとお考えだったならば甘いのではないかと思わざるを得ない。2国間でもTPPと同様に利害が絡む業界が同じ数だけあるのだから、話し合いはそうは簡単には進まないと思うのは間違いか。
第一、TPPと違って交渉を進める相手個別であり、数カ国を相手にして同時進行とは行かないのではないか。

仮に我が国だけを考えても、TPPではなくなった以上、米だの牛肉だのという農産品というか一次産品は高率の関税が残ったままなのだ。それを再び各個撃破でやり直さねば、売りたかったというか買わせたかったものが残ってしまうままだ。それだけではない特許関係だの知財だのという項目別の交渉もせねばならないのだが、それらを相手国別に交渉するのは簡単な作業ではないという気がする。

FTAでは、各国との折衝を何時始めるお考えか知らないが、TPPに参加していた国全部との交渉が終わるまでに何年かかるのだろうか。そこまで考えてと言うか読み切って離脱宣言をされたのだろうか。私には矢張り海外との商いがどういうものかを知らずに選挙キャンペーンと独断的理想で打ち出された政策ではなかったと思えてならない。「これがアメリカの政策だ。呑まない貴国が間違っている」で済む交渉事ではないと思うのだ。



コメントを投稿