二人の友人と個別に語り合った:
YM氏と:
20日に約1か月振りで出会う機会があり、短時間だったが彼から色々と聞くことが出来た。私としては、矢張り気になるのがアメリカの現状で、特にFRBがゼロ金利を解消する決定をしたのが如何なる影響を与えるか等を聞きたかったが、実際には景気、失業率、大統領選挙等に触れたところで時間切れになったのは残念だった。彼はアメリカの景気は確実に好転しつつあるが、それほど先行きには楽観をしていないようだと私に解釈できる語り方だった。その主たる根拠は失業率が改善されているのは確かに良い指標ではあるが、問題はその中身だという。
それは、私が在職中からW社の内部でも取り上げられていた問題点である。アメリカでは極言すれば「マネージャー級と担当者及び事務員(clerkとでも言えば良いのか、身分の垂直上昇が望めない階層)との間で技術系でも事務職でも実務を十分にこなし実績次第ではマネージャーの肩書を取れそうな若手が致命的に不足している」ということである。我が国の会社組織と異なる感覚なので表現が難しいが、希望に燃えてその会社のその事業部に職を得ても、身分の垂直上昇が約束されていない立場という意味だ。故に、若い新卒の者たちには魅力に乏しいが、働き方次第ではある程度の収入は得られる職という意味でもある。YM氏が現在に至ってもそういう指摘をするのは、最早30年以上もそういうアンバランスな失業率事情(職業選択事情?)があるということだ。
それは、私が常々指摘してきたアメリカ全土の精々5%の人たちが占める支配階層には失業の危険性はあるが、能力のある人材は大袈裟に言えば何時でも売り手市場に近い状態にある。一方の対極にある労働組合員は法律による保護もあっても景気次第では何時工場が売却されるとか、事業が閉鎖されるとか、M&Aによるリストラという名の合理化が襲ってくるかの見通しは難しい。だが、景気さえ好転すれば失業率は改善されることになるのだ。
他に話題に上ったのが住宅事情で、相変わらず中古住宅は値ごろな物件は売れているが金融機関が抱え込んだ高級住宅の売れ行きはもう一息で、全体的には動きがあり、景気好転の恩恵は受けているとのことだった。実は、ウエアーハウザーはつい先ごろ残していた紙類、パルプ、日本との合弁事業の新聞用紙の売却計画を公表したとの話もあり、紙パルプ産業の先行きの暗さが一層際立ってきたし、同社がそもそもの出発点だった木材とその製品の専門の企業に回帰することが明らかになった。このことは住宅産業にはまだ未来があるということかと語り合った次第。
商社マンと:
21日に毎月の昼食会で語り合った。彼は元は輸出入を本職としているが、一時ヨルダンに駐在していたので、中近東というかアラブというかイスラム圏の事情には当然明るい。我々が知り得ることのない裏話というか、オスマントルコ以来の事情をもとに解説してくれるので、非常に興味深い話が聞ける。私は彼と同じ部門には彼と同時期にバーレーンに駐在していたやり手がいたので(既に定年してしまったが)彼ら二人から聞くアラブ世界の実情話には大袈裟に言えば「目から鱗」的なことが多かった。
今回は彼が新大久保まで来てくれたので「イスラム横丁」を案内したが、そこに行き着く前に「懐かしいスパイスの香りがする」と懐かしくなさそうに一言?バーレーン駐在経験者も中近東事情については全く同じことを指摘していた。それは「学校で世界史を本気になって勉強してキリスト教、ユダヤ教、イスラム教が現在に至るまでどのような歴史を経てきたのかを知らないと、パレスチナとイスラエルの対立などは分かり得ようがない問題だ」である由。尤もだとは思うが、いかんせん不勉強だった当方は頭を下げてでも解説してもらうしかなかった。
彼はイスラム社会を民主化すればアラブに春が来るなどと思うこと自体が疑問であったが、民主化?してしまった結果が現在の混乱の状態であるという。ではサダムフセイン等の排除されてしまった圧政的な統治者を残しておけば国民は押さえつけられたままだったろうし、IS等の台頭を許した現在の何れかを選ぶかと訊かれれば、彼らアラブの民は迷うだろうとのこと。但し、イスラム教徒はあくまでも教義に従って動くので小さな事には動じないが大きなことには反応するだという認識が必要なのだそうだ。
だから、小さな窃盗などは看過するが、イスラム教と教徒に対する大きな辱めやアッラーを侮辱したりする者には、テロ行為のような大きな反応を示すと思えば、やや極端ではあるが解りやすくはないかと教えてくれた。書いている私自身が中途半端な理解しか出来ていないので上手く表現できていない点をお許し願いたいが、イスラム教徒自体は本質的には凶暴な人たちではないと彼は認識していた。
話は古くなるが、当時というか今でも「サダムフセインはクエートに侵攻したが悪いことで、クエートは被害者だ」という認識が多いが、アラブ世界での認識はむしろ正反対なのだそうだ。「イラクはクエートに無法にも奪われた土地や資源を取り返しに行ったのであって、イラクに正義はあったのだ」と、当時本社にバーレーン駐在から帰任してきた「やり手」にも解説してもらった。商社マンはそれほどアラブとパレスチナとイスラエルの絡みの問題の正しい理解は難問であり、アメリカ等の欧米の諸国からの介入はご覧の通り容易ではないのだと締めくくった。
さて、私はこの懇談会の内容を上手く纏めきれたのか、この一文を以て読者諸賢に伺うという一寸不安な企てをしている次第。宜しくご理解のほどを。
YM氏と:
20日に約1か月振りで出会う機会があり、短時間だったが彼から色々と聞くことが出来た。私としては、矢張り気になるのがアメリカの現状で、特にFRBがゼロ金利を解消する決定をしたのが如何なる影響を与えるか等を聞きたかったが、実際には景気、失業率、大統領選挙等に触れたところで時間切れになったのは残念だった。彼はアメリカの景気は確実に好転しつつあるが、それほど先行きには楽観をしていないようだと私に解釈できる語り方だった。その主たる根拠は失業率が改善されているのは確かに良い指標ではあるが、問題はその中身だという。
それは、私が在職中からW社の内部でも取り上げられていた問題点である。アメリカでは極言すれば「マネージャー級と担当者及び事務員(clerkとでも言えば良いのか、身分の垂直上昇が望めない階層)との間で技術系でも事務職でも実務を十分にこなし実績次第ではマネージャーの肩書を取れそうな若手が致命的に不足している」ということである。我が国の会社組織と異なる感覚なので表現が難しいが、希望に燃えてその会社のその事業部に職を得ても、身分の垂直上昇が約束されていない立場という意味だ。故に、若い新卒の者たちには魅力に乏しいが、働き方次第ではある程度の収入は得られる職という意味でもある。YM氏が現在に至ってもそういう指摘をするのは、最早30年以上もそういうアンバランスな失業率事情(職業選択事情?)があるということだ。
それは、私が常々指摘してきたアメリカ全土の精々5%の人たちが占める支配階層には失業の危険性はあるが、能力のある人材は大袈裟に言えば何時でも売り手市場に近い状態にある。一方の対極にある労働組合員は法律による保護もあっても景気次第では何時工場が売却されるとか、事業が閉鎖されるとか、M&Aによるリストラという名の合理化が襲ってくるかの見通しは難しい。だが、景気さえ好転すれば失業率は改善されることになるのだ。
他に話題に上ったのが住宅事情で、相変わらず中古住宅は値ごろな物件は売れているが金融機関が抱え込んだ高級住宅の売れ行きはもう一息で、全体的には動きがあり、景気好転の恩恵は受けているとのことだった。実は、ウエアーハウザーはつい先ごろ残していた紙類、パルプ、日本との合弁事業の新聞用紙の売却計画を公表したとの話もあり、紙パルプ産業の先行きの暗さが一層際立ってきたし、同社がそもそもの出発点だった木材とその製品の専門の企業に回帰することが明らかになった。このことは住宅産業にはまだ未来があるということかと語り合った次第。
商社マンと:
21日に毎月の昼食会で語り合った。彼は元は輸出入を本職としているが、一時ヨルダンに駐在していたので、中近東というかアラブというかイスラム圏の事情には当然明るい。我々が知り得ることのない裏話というか、オスマントルコ以来の事情をもとに解説してくれるので、非常に興味深い話が聞ける。私は彼と同じ部門には彼と同時期にバーレーンに駐在していたやり手がいたので(既に定年してしまったが)彼ら二人から聞くアラブ世界の実情話には大袈裟に言えば「目から鱗」的なことが多かった。
今回は彼が新大久保まで来てくれたので「イスラム横丁」を案内したが、そこに行き着く前に「懐かしいスパイスの香りがする」と懐かしくなさそうに一言?バーレーン駐在経験者も中近東事情については全く同じことを指摘していた。それは「学校で世界史を本気になって勉強してキリスト教、ユダヤ教、イスラム教が現在に至るまでどのような歴史を経てきたのかを知らないと、パレスチナとイスラエルの対立などは分かり得ようがない問題だ」である由。尤もだとは思うが、いかんせん不勉強だった当方は頭を下げてでも解説してもらうしかなかった。
彼はイスラム社会を民主化すればアラブに春が来るなどと思うこと自体が疑問であったが、民主化?してしまった結果が現在の混乱の状態であるという。ではサダムフセイン等の排除されてしまった圧政的な統治者を残しておけば国民は押さえつけられたままだったろうし、IS等の台頭を許した現在の何れかを選ぶかと訊かれれば、彼らアラブの民は迷うだろうとのこと。但し、イスラム教徒はあくまでも教義に従って動くので小さな事には動じないが大きなことには反応するだという認識が必要なのだそうだ。
だから、小さな窃盗などは看過するが、イスラム教と教徒に対する大きな辱めやアッラーを侮辱したりする者には、テロ行為のような大きな反応を示すと思えば、やや極端ではあるが解りやすくはないかと教えてくれた。書いている私自身が中途半端な理解しか出来ていないので上手く表現できていない点をお許し願いたいが、イスラム教徒自体は本質的には凶暴な人たちではないと彼は認識していた。
話は古くなるが、当時というか今でも「サダムフセインはクエートに侵攻したが悪いことで、クエートは被害者だ」という認識が多いが、アラブ世界での認識はむしろ正反対なのだそうだ。「イラクはクエートに無法にも奪われた土地や資源を取り返しに行ったのであって、イラクに正義はあったのだ」と、当時本社にバーレーン駐在から帰任してきた「やり手」にも解説してもらった。商社マンはそれほどアラブとパレスチナとイスラエルの絡みの問題の正しい理解は難問であり、アメリカ等の欧米の諸国からの介入はご覧の通り容易ではないのだと締めくくった。
さて、私はこの懇談会の内容を上手く纏めきれたのか、この一文を以て読者諸賢に伺うという一寸不安な企てをしている次第。宜しくご理解のほどを。