あせった記憶

35年も前のことなんだけどね。
前の会社で外回りをやってるころのこと。
県北担当で鷹巣までが担当区域だった。
毎日車で遠くまで出かけるので、なんかあったときに備え、
財布には数千円は入れて持ち歩くのが当然のことだった。
まだ携帯電話などないころだったんでね。

その日、大館の手前まで仕事に出かけ、帰りは鷹巣で仕事して
夕方に会社まで戻る予定。
いつも乗ってる担当の車はダットサントラック。
ガソリンは満タンにして出かけてた。

鷹巣での仕事も終わり、帰りがけに営業所に電話を入れようと
思った。
そしたら財布がない。
忘れてきたようだと気付いた。
しょうがないなとそのまま帰ろうとした。
鷹巣から285号線に向かおうと。
暗くなってきたし。

坂を下ってる途中で車のエンジンが止まった。
あれ？ガソリンは入ってるはずだしどうしたんだろうと。
ボンネット開けてみたけどわかんない。
セルは回る。
プラグはずしてみたけどそんなに汚れてないようだし。
このままバッテリー上がっちゃうと困るなとしばらく車の中で試案。

電話しようにも金がないし、公衆電話もないし車や人も通らない。
街灯もない真っ暗な道の横に車停めて。
このまま野宿も覚悟した。
路上で遭難？

たまにエンジンかけようとセル回したりして1時間も経っただろうか。
突然エンジンがかかった。
「やった～」と飛び上がったよ。
それまでの間、車の1台も通らないって・・・