


自然をテーマとした作品が数多く創刊され、動植物や田舎暮らしに関する読み物が、読者の人気を集めていたそうです。
なんだか、21世紀初頭のいまの時代と似ています。

たとえば、動物記で有名なシートンも、その仲間です。
ジーンもネイチャーライターとして作家活動をスタートしました。
『そばかすの少年』のなかに、自然があふれるばかりに描かれているのは、そういう背景があったんですねぇ。
私は、あの自然描写にびっくりして、『そばかすの少年』が特別な本になったんですけど。

谷口由美子さん訳で、篠崎書林から出ていたのですが、それが今年文庫化され、角川文庫の中に並んでいます。
『青い城』はプリンスエドワード島が舞台ではないのですが、魅力的な面白い本です。
少しハーレークイン・ロマンス的な感じはあるけれど、モンゴメリにしか書けない面白さです。
で、その本の中に、このネイチャーブックとネイチャーライターが登場します。
名前はジョン・フォスター。
もちろん小説の中の、架空の存在です。
その作家は、作品を通して、主人公のヴァランシーを夢中にさせます。

彼女をその本に夢中にさせているのは、ジョン・フォスターの、野生の動物や昆虫の生態についての限りない知識ではないのだ。
なんと言ったらよいかわからないが──ベールをかぶった神秘の魅力というか、偉大な秘密が今にもわかりそうな暗示とでもいうか、忘れ去られていた美しいものが、かすかに姿を現したり隠れたりするような──ジョン・フォスターの魅力は、とてもひと言では言い表せなかった。」(角川文庫『青い城』より)
『そばかすの少年』も、『青い城』も過去から切り離されて、現代の書店に並んでいるけれど、同じ時代背景を持ってつながっていました。
そう考えると、なんだか、時間をさかのぼるタイムトラベラーになった気がして、面白いです。