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サラ☆の物語な毎日とハル文庫

ネイチャーブック

『そばかすの少年』の著者、ジーン・ポーターはリンバロスト湿地の付近に住み、もともと夏の間は沼地で動植物の観察にいそしみ、冬場はその成果を文章にまとめるという活動をしていたそうです。(光文社文庫 『そばかすの少年』あとがきより)

19世紀末から20世紀初頭にかけて、主に北米の都市部では、「ネイチャーブック」というジャンルの作品群がもてはやされました。
自然をテーマとした作品が数多く創刊され、動植物や田舎暮らしに関する読み物が、読者の人気を集めていたそうです。

なんだか、21世紀初頭のいまの時代と似ています。

その流れの中で活躍したのが、ネイチャーライターと言われる人たち。
たとえば、動物記で有名なシートンも、その仲間です。
ジーンもネイチャーライターとして作家活動をスタートしました。
『そばかすの少年』のなかに、自然があふれるばかりに描かれているのは、そういう背景があったんですねぇ。
私は、あの自然描写にびっくりして、『そばかすの少年』が特別な本になったんですけど。

話は変わりますが、1926年にモンゴメリの作品『青い城』が出版されました。
谷口由美子さん訳で、篠崎書林から出ていたのですが、それが今年文庫化され、角川文庫の中に並んでいます。
『青い城』はプリンスエドワード島が舞台ではないのですが、魅力的な面白い本です。
少しハーレークイン・ロマンス的な感じはあるけれど、モンゴメリにしか書けない面白さです。
で、その本の中に、このネイチャーブックとネイチャーライターが登場します。
名前はジョン・フォスター。
もちろん小説の中の、架空の存在です。
その作家は、作品を通して、主人公のヴァランシーを夢中にさせます。

「ヴァランシーも、自分が本当に虫が好きなのかどうかはわからない。
彼女をその本に夢中にさせているのは、ジョン・フォスターの、野生の動物や昆虫の生態についての限りない知識ではないのだ。
なんと言ったらよいかわからないが──ベールをかぶった神秘の魅力というか、偉大な秘密が今にもわかりそうな暗示とでもいうか、忘れ去られていた美しいものが、かすかに姿を現したり隠れたりするような──ジョン・フォスターの魅力は、とてもひと言では言い表せなかった。」(角川文庫『青い城』より)

『そばかすの少年』も、『青い城』も過去から切り離されて、現代の書店に並んでいるけれど、同じ時代背景を持ってつながっていました。
そう考えると、なんだか、時間をさかのぼるタイムトラベラーになった気がして、面白いです。
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