♦️882の2『自然と人間の歴史・世界篇』シリア内戦(2017~2018現在)

2018-10-16 18:52:23 | Weblog

882の2『自然と人間の歴史・世界篇』シリア内戦(2017~2018現在)

 国連人道問題調整事務所の2017年1月時点の報告によると、2011年3月以降、シリアでは死者約25万人、負傷者は100万人を超過している。国外へ逃れた人々は490万人、国内避難民は650万人に上る。また、シリア国内では1350万人が人道支援を必要としている旨。
 2017年2月には、国連安保理がアサド政権の化学兵器使用に対する制裁決議案なるものを採決に持ち込むが、ロシアと中国が拒否権を行使して不成立となる。そのロシアは、2015年9月に、アサド政権を支援するために大規模な軍事介入に踏み切っていた。
 2017年4月、シリア北西部のイドリブ県で空爆がある。住民80人以上が死亡したと伝えられる。「政権軍が化学兵器使用」と反体制派が非難、アメリカも、化学兵器使用とみられると発表する。シリアのアサド政権は、そんなことはやっていないと否定する。これに対し、アメリカが、地中海に展開の空母からシリアに数十発の巡航ミサイルを発射する。政権軍の空軍施設などを狙った。
 6月には、OPCW(化学兵器禁止機関)がイドリブ県で使われたのは猛毒のサリンを用いた化学兵器であったとの見解を調査報告書にして発表するも、使用者は特定しなかった。7月には、イラクのアバディ首相がモスルの対IS作戦で勝利宣言を行う。
 この年の2017年10月になると、アメリカ軍が支援するクルド系のシリア民主軍(SDF、「人民防衛隊(YPG)」。後者はクルド人主体の連合部隊)が、ISの首都とされる北部の都市ラッカの解放を宣言する。ここにSDFとは、ISの掃討作戦を行ってきた少数民族クルド人勢力中心の部隊であり、自らの大義のため命を惜しまず、頑強に戦うことで知られる。
 追い出された側のISは2014年にラッカを占拠し、一方的に「首都」と宣言し、以来、この地を死守してきたのだが、ついに落城となった。
 SDFは米軍の支援を受け、2017年6月から市内で軍事作戦を展開していた。激しい戦闘により、推計3000人もの兵士が死亡したとされる。SDFは17日に大規模な戦闘の終結を宣言し、残る戦闘員の掃討や地雷除去などを行ってきた。SDFは、ラッカは「地方分権が進んだ民主的なシリア」の一部を構成するとして、シリア北部に広がるクルドの勢力圏に組み込みたい考えをにじませている。より俯瞰して言うと、ISから街を奪還したことで、クルド人自身による国づくりを視野に入れたい。11月になると、政府軍が反体制派拠点の東グータ地区への攻撃を開始する。

 そして迎えた2017年12月、ロシアのプーチン大統領が、シリアからのロシア軍の撤退開始を命令する。同12月時点のダマスカスと周辺の支配図(12月22日付け毎日新聞)によると、市の北東部の一角を反体制派が占め、旧市街の南にあるスペイナ地区には、反体制派地域とIS地域が混在する。アサド政権が全体的に優勢であるものの、反政府勢力との和平の見込みは立っていないし、ISの抵抗も散発的だが残っている。
 この2017年12月の時点で、「これまでに40マン人以上が命を奪われ、内戦前の人口約2200マン人の半数以上が家を追われた」(朝日新聞、2017年12月19日付け)ともいわれる。

 2018年1月、アメリカのティラーソン国務長官が、IS掃討後もアメリカ軍のシリア駐留を継続する考えを示す。同月、隣国トルコの政府軍と反体制派が、YPG支配下のアフリンに越境作戦を行う。2月、シリア首都ダマスカス近郊(約10キロメートル東にある農業地帯)の反体制派支配地域「東グータ地区」をアサド政権軍が攻撃する。これにより、反体制派の在英NGO「シリア人権監視団」によると、18日から22日朝までに少なくとも市民335人が死亡、1700人以上が負傷したと発表される。
 また、2月21日のシリアの少数民族クルド人勢力主体の武装組織「シリア民主軍」(SDF)は、同組織が支援を受けるアサド政権側の民兵部隊が、シリア北西部アフリンにおいてトルコ軍による砲撃を受けたと発表する。これに対しドルコの大統領報道官は、「政権軍であろうが別の部隊であろうが、クルド人に加勢する者は重大な結果を被る」と警告する。
 2018年4月3日、アメリカのトランプ大統領がアメリカ軍のシリアからの早期撤収につき、「すぐに判断する。撤収させたい」と表明する。4月7日、東グータ地区とドゥーマ地区へ空爆が行われる。救助組織などは、49人の住民が呼吸困難の症状で死亡、化学兵器が使われたのではないかと指摘した。10日、国連安保理において、化学兵器使用の調査チーム設立案を採決したところ、ロシアが拒否権を行使して廃案となる。13日、これをアサド政権側が仕掛けたと判断したアメリカ、イギリス、フランスの軍による、シリア政府軍軍事施設へのミサイル攻撃が1回にかぎり実施された。
 4月14日には、政府軍が反政府派の拠点東グータ地区を制圧したと宣言する。


(続く)

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