♦️376『自然と人間の歴史・世界篇』所得分配の原理の発見

2017-10-18 21:42:34 | Weblog

376『自然と人間の歴史・世界篇』所得分配の原理の発見

 カルドア(1908~1986)は、近代経済学派にいながら、自主・気鋭の経済学者として知られる。ケインズにはなかった分配理論を構築した。ハンガリー生れのイギリスの経済学者にして、1947~49年に国際連合経済委員会での職に就いていた。その彼がこしらえた経済モデルの仮定・想定は次のとおりである。
(1)ある国を舞台に、外国とのやりとりのない「閉鎖経済」を考える。
(2)労働と資本ストックが完全に雇用、利用されている産業社会を想定する。総産出と国民所得(Y)は与えられている、短期モデルとおく。
(3)所得は、労働者の所得としての賃金(W)と、資本家の所得としての利潤(P)という2つのカテゴリーに分かたれる。
(4)投資は、完全雇用を維持する水準に与えられると仮定する。
(5)貯蓄は、労働者の所得に占める貯蓄の割合をsw、資本家の所得に占める貯蓄の割合をspとおく。
 以上の仮定・想定のもとで、カルドアの所得分配モデルは次のように表わされる。
Y=W+P:(1)
社会の総貯蓄(S)は、労働者と資本家の貯蓄の和に等しいから、
S=swW+spP:(2)
(2)式をYで割ると、
S/Y=sw+P/Y(sp-sw):(3)
Y/Sは国民経済全体の貯蓄率、P/Yは資本分配率のことだ。
 ここで労働者の所得に占める貯蓄の割合としてのswより、資本家の所得に占める貯蓄の割合としてのspが大きい、つまりsp>swと考えられるので、(3)式の意味するところは、P/Yとしての資本分配率が高まると、国民経済全体の貯蓄率が上がる。労働者の貯蓄率が下がることがあっても、それを相殺する程の資本分配率の上昇があれば、
これまた国民経済全体の貯蓄率が上がる。

(続く)

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