田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

兼好法師の恋??

2011-07-04 19:38:13 | 講演・講義・フォーラム等
 兼好法師(吉田兼好)といえば随筆『徒然草』の著者として有名だが、恋多き人物であったらしい!? 道新ぶんぶんクラブ教養講座「いにしえの日本を探る」で兼好法師の恋話を聴いた。

        

 30歳前後で出家したと伝えられる兼好法師だが、史家の調べでは恋多き人物だったことが浮き彫りとなっているようだ。本来、出家した人間に恋話などご法度のはずだが、「徒然草」と「兼好法師全歌集」を読み比べてみると、そこから兼好法師の心のうちが見えてくるということらしい…。

 7月2日(土)、道新ぶんぶんクラブと国学院大学の共催による教養講座「いにしえの日本を探る」と題して開催され受講した。
 講座は国学院大学教授の山岡敬和氏が「徒然草~兼好法師の恋」と題しての講座だった。
 山岡氏は気鋭の国文学者といった感じで、立て板に水のごとくスピード感あふれる話し方で、メモする手も追いつかないほどだった。

        

 山岡教授が解説するには、「徒然草」の方では兼好法師自身を第三者に見立てたり、他からの伝聞のような形をとって記述しているが、それと明らかに同じ場面と見られるところを「兼好法師全歌集」においては自身の心の内を率直に詠っているものがあるというのである。
 あるいは少し難しいかもしれないが(私自身が難しい)、紹介いただいたたくさんの証拠の文の中から一つだけ転写してみることにする。

◇『徒然草』第百五段
  北の屋かげに消え残りたる雪の、いたうこほりたるに、さし寄せたる車の轅(ながえ)も、霜いたくきらめきて、有明の月さやかなれども、くまなくはあらぬに、人はなれたる御堂の廊に、並々にはあらずと見ゆる男、女と長押(なげし)に尻かけて、物がたりするさまこそ、何事にかあらん、尽きすまじけれ。かぶし、かたちなど、いとよしと見えても、えもいはぬ匂ひの、さとかをりたるこそをかしけれ。けはひなど、はづれはづれ聞こえたるも、ゆかし。

◇『兼好法師全歌集』三十二
  冬の夜、荒れたる所の簀子(すのこ)に尻かけて、木だかき松の木より、くまなくもりたる月を見て、暁まで物語りし侍る(はべる)人に
 思ひいづや軒のしのぶ霜さえて 松の葉わけの月をば見し夜は

 この二つの文を見比べてみると、『徒然草』では二人の男女の逢瀬を第三者的に描写している。一方、『兼好法師全歌集』の中の詩は次のように解釈できるという。
「思い出していますか。軒の忍草に降りた霜が冷たくて、松の葉の間から月を見た夜のことを」と逢瀬を楽しんだ女に呼び掛けているのである。

 こうした箇所が何カ所も表れていてそれを紹介しながら、解釈してくれるという講座だった。
 このように『徒然草』と『兼好法師全歌集』を読み比べることによって、兼好法師の恋愛観のようなものが垣間見えるという。
 こうして教授されると出家した宗教者というイメージからかけ離れ、今風の言葉で言うと「ひらけたお坊さん」というイメージが拡がってくる。
 鎌倉時代にこんな「ひらけたお坊さん」がいたなんて面白いことです。

 古文を一人で楽しむだけの力量はないが、こうした機会を利用していにしえの世界に遊ぶのも面白いことである。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
恋と吉田兼好 (ちゃんこま    )
2011-07-04 20:07:46
 なかなか斬新な感じの吉田兼好研究ですね。恋愛の観点からの切り口は、さすが専門家的な追求経路をもって丹念に積み上げていったのでしょうね。ちょっと意外な側面も垣間見れたりしてそれはそれでまたおもしろかった講座だったろうなあと思いましたよ。恋愛の目で見ていくと「いにしえ」という感じがしなくなるところが愉快ですよね。
 ところで、写真拡大法を使っての投稿はこんどはいつかなと楽しみにしております。
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文面がうきうきしれませんか? (おなら出ちゃっ太)
2011-07-05 16:56:17
吉田兼好というと、元祖日本のオヤジエッセイストというイメージがあります。小説家の清水義範氏の受け売りですが。
徒然草も、世間に対してああでもないこうでもないと苦情をいうトコロが現代の男性エッセイに通じるそうで。
そういう兼好に対して「恋」なんてキーワードで見るのは意外性があるし面白そうですね。

丸尾さんの文章も、何かこう、華やいだものを感じさせます。
経済評論家氏の講演への記事とはまるで違う、知的喜びに溢れた心の内が溢れるようなブログ記事ですね。
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Re:恋と吉田兼好 (田舎おじさん)
2011-07-05 19:12:47
 さすがに超有名な「徒然草」ですから、さまざまな面から研究されているんでしょうね。
 こうした名作を愛とか、恋とかいう側面からはなかなか取り上げられない場合が多いように思われますが、新たな切り口から山岡氏は研究されたのかもしれませんね。
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Re:文面がうきうきしれませんか? (田舎おじさん)
2011-07-05 19:28:17
 元祖オヤジエッセイねぇ…。言い得て妙という感じですね。
 鎌倉という時代に出家した坊さんが世間のあれこれを評したり、恋話を文章に著すというところに兼好法師の洒脱さを感じますねぇ。
 文面が浮き浮きしているとのことですが、そう感じられますか?本人は無自覚なのですが…。
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