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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 新根室プロレス物語 №372

2024-01-06 18:26:06 | 映画観賞・感想
 プロレス物だからといってけっしてキワモノ的な映画ではない!映画はアマチュアプロレス団体「新根室プロレス」を率いたサムスン宮本(本名:宮本隆志さん)の後半生を描いたヒューマンドキュメンタリーである。
             
 本日(6日)からシアターキノにおいて映画「新根室プロレス物語」が公開されるとあって、いち早く観たいと思いチケット販売開始時間の9時30分にシアターキノに向かった。
 私同様に公開を期待していた方が多かったとみえて私がチケットを購入したのは53番目だった。その後も続々と観覧客は詰めかけて、小さなホールは満杯の状況だった。
 私はけっしてプロレスファンではない。なのになぜこの映画に興味を持ったかというと、小さな根室の街で産声をあげたアマチュアプロレス団体が、地元のプロレスファンのみならず全国的な人気を得ることができたのは何故だろう?と興味を抱いたからである。
 映画は根室市で小さなおもちゃ屋を経営していたプロレス好きのサムスン宮本が中古のリングを自ら買い、根室の昆布漁師や酪農家らと共に2006年にアマチュアプロレス団体「新根室プロレス」を結成して地元ファンの根強い支持を受けていた。転機は2017年に身長3メートルの「アンドレザ・ジャイアントパンダ」を導入したことがSNSを通じて全国に伝わり注目を集める存在になった。
    
 映画は「新根室プロレス」を率いるサムスン宮本を中心に描かれているのだが、宮本はメンバーたちと地道な練習を積み重ねるとともに、観客の笑いを誘うリング上のシナリオづくりにも才能を見せ徐々に人気を博する団体に育てていく。また宮本はリーダーとしてメンバーに対して人間味溢れる優しさで接し、メンバーの信頼を勝ち得ていく。彼らの合言葉は無理しない。ケガしない。明日も仕事!というフレーズも人気を博した。
  
 ところが人気絶頂だった2019年、宮本に悪性の腫瘍が見つかり、団体は2019年末に解散し、宮本は翌2020年に55歳の若さでこの世を去ってしまった。
 サムスン宮本の死から3年、今年6月に残されたメンバーは宮本の遺志を継ぎ、「新根室プロレス」は再始動したのだった。
 宮本の病気が覚悟のガンだったこともあり、彼は生前に彼の遺志をVTRに遺したこともあって、ドキュメンタリーは感動的な仕上がりとなった。
  
  ※ サムスン宮本亡きあと、3年後にアマチュアプロレスの聖地・東京新木場で復活公演をした遺されたメンバーによる記念撮影です。

 映画上映後、今日が全国公開初日とあって、サムスン宮本の弟である「オッサンタイガー(宮本賢司さん)」と映画制作を主導したUHB(北海道文化放送)の吉岡ディレクターが登場し挨拶された。その中で弟の宮本さんが兄であるサムスン宮本を人間としてとても尊敬していることが伝わってきた。その挨拶の中で、「アンドレザ・ジャイアントパンダ」誕生の秘話を披露してくれた。これは映画ではまったく触れられていない秘話で、以下は必見である! 
  
  ※ シアターキノで上映後に挨拶するオッサンタイガー(中)と吉岡ディレクター(右)のお二人です。左はインタビュアーのUHBの女子アナです。

 サムスン宮本は根室に漁業実習生として滞在していた中国人の王という方と交流があったそうだが、遠い日本で寂しい思いをしながら、けっして豊かな生活をしていない王さんに食事をご馳走したり、遊びに誘ってくれたり優しく接したそうだ。やがて王さんは中国へ帰国したのだが、10数年経って王さんは中国で成功して3社もの会社の経営者として成功したという。
 そして王さんは根室でお世話になったサムスン宮本のところを訪ね、「お世話になったお礼をしたい」と申し出たそうだ。それに対して宮本は「パンダがほしい」と答えたという。その願いを叶えてくれたのが「アンドレザ・ジャイアントパンダ」だそうである。サムスン宮本の人としての優しさを語るエピソードであるが、そのことが「新根室プロレス」が躍進に繋がったのである。
 私には分からない。あの3メートルもの巨大な「アンドレザ・ジャイアントパンダ」が機敏にとは言わないが、生身のプロレスラーたちとリング上で堂々と戦っているのが分からない。映画の中では中に人間が入り、コンピュータを操っているとも聞いたのだが、本当のところは良く分からない。その謎が良いのだが…。
       
 ※ 上映後の挨拶に会場に入れなかったアンドレザ・ジャイアントパンダは会場外で ファンとの記念撮影に応じていました。その大きさがお分かりいただけるでしょうか?

 いずれにしても、笑いあり、涙ありの上質のドキュメンタリーに仕上がっている「新根室プロレス物語」は一見に価値があるように私には思える。1月19日までシアターキノで上映だという。興味のある方はご覧いただきたいと思います。