田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

北海道の米で酒を造る!

2019-10-30 17:17:21 | 講演・講義・フォーラム等

 今や北海道産米は質の高さでは折り紙付きである。その北海道産米で全ての酒を造ろうと北海道の醸造元12社は結束しているという。北海道酒造組合会長の田中一良氏(小樽・田中酒造社長)は北海道の清酒業界の未来を明るく語った。 

 10月29日(火)午後、「ほっかいどう学」かでる講座の10月編(第8回)が開講された。今回の講師は北海道酒造組合会長であり、小樽市の田中酒造株式会社の社長である田中一良氏「北海道米で酒を造る~北海道の清酒は、生き残れるのか?~」と題するお話を伺った。

        

        ※ まだまだ若く、明るく楽しく精力的にお話された田中一良社長です。

 田中氏のお話は大きく二つのお話から成っていた。一つはご自身の会社の「田中酒造」のこと、そしてもう一つが清酒業界や北海道の酒造りの将来性についてのお話であった。

 田中酒造は他の酒造メーカーとは異なった生き方をしているという。田中酒造では代表銘柄の「宝川」をはじめ、全ての製品を販売ルートには乗せず自社の「亀甲蔵」で販売するのみだという。つまり小樽に観光で訪れた客のみに販売する「観光造り酒屋」に特化しているということだ。また、田中酒造は株式会社とはいっても田中社長が100パーセント株を取得している会社のため、思い切った経営ができることが特徴の一つでもあると話された。そして今、田中酒造は来日観光客の増加が田中酒造にとって追い風となり、お客の約3割が外国人観光客で、その数をまだまだ増やしたいと語った。

          

          ※ 田中氏の本拠地、小樽市の田中酒造の全景です。

 一方、清酒業界を取り巻く状況はかなり厳しいようだ。全酒類消費数量の中で清酒が占める割合は約7パーセントにすぎず、製造量も最盛期の3分の1以下に落ち込み、清酒醸造会社も4,000社から1,400社に激減したそうである。ちなみに北海道も明治時代の200社から現在は12社にまでなってしまったという。その理由として田中氏は①日本人の嗜好の変化⇒色々なお酒が楽しめる時代。②食生活の変化⇒洋食の普及。③少子高齢化⇒お酒を卒業する。④若者の酒離れ⇒楽しみの多様化。を挙げられた。

 そうした現状を打破する動きも清酒業界に出てきているという。その一つが清酒の差別化である。最近は外国産の清酒が出回るようなるなど、清酒の世界も多様化しているようだ。そこで清酒業界では原料米に国内産米のみを使用し、かつ国内で製造された清酒のみを「日本酒」と命名することに2015年に取り決めたそうだ。またそのこととも関連するが、最近は高品質の清酒(吟醸酒、純米酒など)が好まれる傾向にあるという。つまり高級路線が生き残りの戦略でもあるという。そうした中、地域の造り酒屋が元気になってきているそうだ。さらに、清酒の国際化が進み、外国人が清酒に興味をもちだしたことから、輸出額が大きく増加していることがあるという。

 こうしたことを背景に、北海道の清酒業界としては近年道産米の品質が向上していることから道産酒造米にこだわり、新しい酒造好適米を開発することによって質の良い純米酒を製造し高級化路線を進めることが肝要だと話された。また、北海道には年間300万人もの外国人観光客が来道しているが、こうした観光客をターゲットにした「酒蔵の観光化」「清酒の国際化」を志向することが北海道の酒造業界が発展する道ではないか、と田中氏は力強く話された。

 せっかく清酒の話を聞いた私であるが、アルコールは決して嫌いではないのだが「お酒」はどうもダメである。年齢を重ねてきて、猪口を傾ける姿には憧れさえ抱くのだが、体が受け付けてくれない。う~ん。これからも「お酒」には縁のない日々を過ごすことになりそうだ…。