田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

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映画 204 南極物語

2018-01-10 20:22:20 | 映画観賞・感想

 この映画は高倉健の映画ではない。この映画の見どころはタロ、ジロをはじめとしたカラフト犬が南極大陸を疾走する姿であり、南極の雄大な自然を映し出すことだったのではないか。高倉健や渡瀬恒彦はあくまで脇役でしかなかったと私には映った。 

                  
                  ※ 映画ポスターには若き日の荻野目慶子が大きく取り上げられている。

 1月8日(月)午前、道立近代美術館において、同館で開催中の「特別追悼展 高倉健」の関連事業として、高倉健主演の「南極物語」の上映会があり参加した。
 1983(昭和58)年、制作・公開された映画である。
 映画は南極に置き去りにされたまま、過酷な環境を一年間にわたって生き抜いたタロ、ジロの奇跡の生還が日本中を感動の渦に巻き込んだことを題材としたものである。

 1983年の映画の制作から遡ること20年余り、1956(昭和31)年南極観測隊第一次越冬隊に同行したカラフト犬15頭は越冬隊の観測任務に大きな貢献を果たした。そしてカラフト犬は1958年に第二次越冬隊に引き継がれるはずであったが、荒天のため第二次越冬隊は上陸することができず、15頭のカラフト犬たちは置き去りにされることになった。
 ほとんどの犬たちが鎖につながれたまま餓死したり、鎖を断ち切ったものの事故や行方不明になる犬たちがほとんどだった中で、タロ、ジロの二頭の犬だけは一年後に上陸した第三次越冬隊によって発見・保護されたのであった。

               

 映画はタロ、ジロの生還という事実(ノンフィクション)を題材とはしているが、映画のかなりの部分はノンフィクションであるといってもよい内容である。というのも、映画の大半は南極の取り残された15匹のその後の運命を描くものであった。
 多くの犬は、鎖に繋がれたまま餌が与えられず餓死してしまった。うち何頭かの犬は繋がれた鎖を切り離し自由になったものの、餌を探すうちに南極の海に飲み込まれてしまったり、いずこへか消え去ったものあり、と散り散りバラバラとなってしまったところを描いている。このあたりのストーリーは、作者が想像したフィクションでしかない。
 しかし、たとえフィクションであろうがストーリーとしては上出来だった。さらには鎖を切り離し南極大陸を疾走する犬たちを追う南極大陸の雄大な映像が素晴らしい。
 もっとも、機材などが現代とは違うことから、現代のようなクリアな映像とはなっていないが、当時としては相当な予算を使って空撮を敢行したものと思われた。

               

 一方、この映画の主演とされる高倉は彼のキャラクターでもある寡黙な男を好演し、渡瀬はやや過剰な演技ながらも、彼の良さが出た役柄のように思われた。しかし、それとてこの映画においては二人とも脇役の域を脱していなかったと私には映った。

               

 しかし、映画は観る人たちにやるせない思いも残したものだった。
 人間の都合のために南極に取り残され、タロ、ジロ以外の犬たちは無念にも命を落とす結果となってしまった。その一頭、一頭の犬たちの生への執着を見せながらも無残に力尽きていく…。
 生あるものへの生きる権利が、昔と比べると格段大きく叫ばれるようになった現代において、はたして今「南極大陸」のような映画は成立するのだろうか? そんなことを考えさせられてしまった映画だった…。