田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 37 悪人

2011-01-19 15:19:39 | 映画観賞・感想

 映画のキャッチフレーズは「誰が本当の“悪人”なのか?」…
 出会い系サイトで知り合った女性を殺してしまった主人公の周りには、その時代背景も含めていろいろな“悪人”が登場する。何が彼を殺人犯へ追いやったのか、そしてそんな彼を一途に愛する一人の女性とは…。


          
          ※ 映画のパンフレットから          

 まるで主体性のない私の観賞映画の選定である。
 正月に観た「ロビンフッド」は、作家の椎名誠氏が絶賛したから…。そして今度は新聞で「悪人」が2010年のキネマ旬報ベストテンの日本映画部門の第一位に輝いたと知ったから「観てみよう!」と思ったのだった。

 映画館にも興味があった。上映館「蠍座(さそりざ)」にはまだ行ったことがなかったからだ。
 「蠍座」は北9条西3丁目のビルの地下一階にあった。映画館特有の看板などがなく、うっかりすると見落としてしまいそうなほどの小さな看板しかなかった。
 「蠍座」は道内唯一の名画座だそうだ。席数55席のスクリーンが一つだけの小さな映画館である。

        
        ※ 映画館「蠍座」が入るビルの入口です。

 さて映画「悪人」だが、主演の妻夫木聡、深津絵里の熱演が光った。さらに、その二人を支えた柄本明、樹木希林の二人のベテランの存在感も際立った映画だった。
 妻夫木演じる主人公清水祐一は出会い系サイトで出会った自分勝手な女をちょっとした偶然から殺めてしまった。
 殺人を犯した後で知り合った深津演ずる馬込光代は清水と二人で逃避行に走ってしまうことになった。
 殺された女の父親役の柄本明、主人公の祖母であり育ての親役の樹木希林、それぞれが清水の犯した事件で家族の絆も引き裂かれていく…。事件の背景には出会い系などでしか人と知り合うことができない寒村の事情も映されている。
 事件の遠因を作った大学生、自分勝手な言動が死因に直結した保険会社の女、樹木希林演ずる祖母のなけなしの金を強引な催眠商法で奪ってしまう漢方薬販売会社、などなど…。

        
        ※ 映画館「蠍座」の地下一階にあるエントランスです。

 しかし、しかしである。
 さまざまな遠因、要因があり、主人公に同情できる面はあるとしても、人を殺めるというけっして許すことのできない犯罪を犯してしまった主人公清水祐一はやはり一番の“悪人”とおじさんは言わざるを得ない。
 そんな清水を愛してしまったヒロイン馬込の悲しいまでの凄絶な愛の姿を深津絵里は体当たりで演じてみせた。その演技がモントリオール世界映画祭において最優秀女優賞を獲得することに繋がった。
 最初から最後まで緊張感に満ちた素晴らしい映画として完成させたスタッフ、キャストに大きな拍手を贈りたい。

          
          ※ 映画のパンフレットから

 最初に「蠍座」は道内唯一の名画座であると紹介した。名画座とは「旧作映画を主に上映する映画館」だそうである。
 ということは、私のように観賞映画を主体的に選ぶことのできない人間にとっては、映画の評判を確かめてから観賞できる都合の良い映画館なのかもしれない。こからも気にしてチェックしていく映画館になりそうだ。