くまのお気楽日記

好きな漫画や映画の話を主にその日あった事や感じた事等をお気楽に書いていきたいと思います。宜しくお願いします。

「複雑系」

2007-07-25 23:59:59 | 本好き
みなさん、こんにちは。
ちょっとお久しぶりです。くまです。

前回に引き続き、今回も柄に似合わぬポピュラーサイエンス本なんですが、またまた図書館で借りて読んでみて面白かったので、今度はなるべく短めにご紹介を。

タイトルは「複雑系~科学革命の震源地・サンタフェ研究所の天才たち~」(M・ミッチェル・ワールドロップ著)です。

複雑性の科学とは、物理学、生物学、情報処理、経済学、社会学、環境学、脳神経学…etc人間世界の諸事すべてを包含するような学問であり、また非常に新しい学問であるそうです。
従来の還元的(複雑な物事を、その分解された比較的単純な構成要素をまず理解し統合することで理解しようとする)アプローチに対して、アリストテレスの「全体とは部分の総和以上のなにかである」という言葉に代表されるような、全体を全体として捉えて理解しようという学問のようです。

巻末を見ると、この本は少なくとも10年以上前に書かれた本のようなのですが、著者は科学ジャーナリストで、80年代に創立されたサンタフェ研究所の多分野を代表するような主要メンバーに対するインタヴューに基づいて、分野を越えて協力し合い、共通する問題に取り組もうとする試みを、ドキュメンタリー調に書きながら、複雑系という学問が生まれていく過程をも書いている…という本です。
以下に面白かった点を本文から抜粋していきます。

なぜ太古の種やエコシステムが何百万年と安定した後突如として死滅するか新しいものに進化したのか?
なぜ40億年前アミノ酸などの単純な分子からなる原初のスープは、ランダムに組み合わさったとするならばバカバカしいほど少ない確率にもかかわらず、最初の細胞にその姿を変えたのか?
なぜ個々の細胞は合体し、人間といった多細胞生物を生み出し、またなぜ人間は社会を組織し、進化が適者生存であるならば個人間の冷酷な争いとは異質の、信頼や協力を存在させ、それが栄えるのか?
生命とは何か?コンピューターウイルスのような創造物は根本的な意味で生きているのか?
心とは何か?脳はどのようにして感情、思考、目的、自覚といった特質をもたらすのか?
なぜ無ではなく何かが存在するのか?宇宙が無秩序、崩壊、衰退へと向かう傾向に支配されているにもかかわらず、様々な規模の構造(銀河、恒星、惑星、生物など)を生み出し、またこの秩序、構造、組織への欲求とどう釣り合い、どうして同時に進行し得るのか?

これらの問いに共通する点は複雑なシステムと関連しているということ。
「複雑な」とは例えば何百万の相互に依存した人間が人間社会を形成するようなことである。
また例えば物質的欲求を満たそうとしている人間は個人間の売買行為を通して無意識の内に一つの経済活動に自己組織化し、ばらばらでは持ち得ない生命、思考、目的といった集合的特質を獲得する。
さらにこうした自己組織化のシステムは例えば種が変わり行く環境の中でより良い生存を求めて進化していくように、積極的に「適応的」であり、
そしてこうした複雑で自己組織的な適応的システムには一種のダイナミズムがあり、コンピューターチップや雪片のようにただ複雑であるだけの静的な物体とは質的に違い、より自発的、無秩序的、活動的である。
が、同時にその特異なダイナミズムは、カオスとして知られるあのどうにも予測不能なものともかけ離れて違う。
これらすべての複雑系は、秩序と混沌をある特別な平衡に導く力を有している。
「カオスの縁」と呼ばれるこの平衡点は、生命が自らを支えるのに十分な安定性を有し、生命の名に値する十分な創造性を有するところである。

第一に「複雑適応系」のシステムは並行的に作用する多くのエージェントのネットワークである。
例えば脳におけるエージェントはニューロン、エコロジーにおけるエージェントは種、細胞のそれは細胞内小器官というように。
どのエージェントもそのシステム中の他のすべてのエージェントとの相互作用をとおして生まれる環境の中に置かれている。
そしてたえず影響を与え合い反応しているので本質的に固定されていない。
さらにその制御は極度に分散化される傾向がある。
例えば脳には主ニューロンが、発生中の胚には主細胞が、といったものはない。
もしシステムの中に一貫性のある振る舞いがあるとするなら、それはエージェント間の競合と協力から生まれている。
第二に「複雑適応系」には多くの組織化のレベルがあり、どのエージェントもそれにより高いレベルのエージェントの構成要素になっている。
例えば一群のタンパク質、脂質、核酸が細胞を形成し、一群の細胞が組織を、組織の集合体が器官を、器官の連関が一個の生物を、生物の集団がエコシステムをというように。
さらに複雑適応系は経験を積みながらたえずその構成要素を改めたり再構成したりしている。(これを創発というが、それぞれの創発が、次のレベルの創発を起き易くするようにステージを整える役割を果たしているのではないか、とも考えられる)
第三に「複雑適応系」は未来を予感している。
どの複雑適応系も様々な内なる世界モデルにもとづいてたえず予測している。
これらのモデルは能動的であり、内部モデルは行動の構成要素であるとみることができる。
最後に「複雑適応系」は一般的に多くのニッチを有しており、ニッチ一つ一つはそれを満たすように適応したエージェントによって利用される。
経済の世界に配管工、製鋼所、の為の場が、熱帯林にナマケモノ、蝶の為の場、があるのと同じである。
さらに一つのニッチを満たすという行為そのものが、新しい寄生者、捕食者、獲物、共生相手のためのさらなるニッチを開く。
このことから、システム内のエージェントがその適用や有用性を最適化できる、などと考えるのが無駄である、と言える。
複雑適応系を特徴づけるのは、この不断の斬新さである。

囚人のジレンマというゲームの話。
二人の囚人が別々の房に入れられ、警察は二人をある共犯の罪で取り調べている。
それぞれの囚人は、相棒を密告する(離脱する)か沈黙を守る(協力する)かのいずれかを選べる。
二人が沈黙を守れば二人とも釈放される。
一人が密告すればその囚人は自由になり報奨金が貰えるが、密告された相棒は刑を科せられたうえ報奨金を賄うための罰金を支払う。
二人ともが互いを密告すればどちらも刑に服し報奨金も貰えない。
このゲームを1回だけでなく同じ相手に対して200回繰り返し戦う、というトーナメントを行うとする。
すると勝利の栄冠は、もっとも単純な戦略(しっぺ返し)のうえに輝いたのだ。
1回目の対戦ではまず相手に協力し、それ以降は相手が取った行動をそっくりそのままなぞる、というものだ。
このプログラムは決して相手より先に離脱しないという意味では「いい」やつで、相手のよい行ないに対して次回に協力を持って報いるという意味では「やさしい」やつで、相手の非協力的な行動を次回の離脱によって懲らしめるという意味では「タフな」やつだ。さらに戦略がじつに単純で相手にとって事態の把握が容易であるという意味では「わかりやすい」やつだった。

機械の「機械性」はハードウェアにあるのではなく、ソフトウェアにこそある。
生物が「生きていること」の根源もまたソフトウェア(分子そのものではなく、分子の組織化のあり方)にある。
生きているシステムは機械だ。
生きているシステムは、エンジニアが機械を設計するときのようにトップダウン方式でつくられるのではなく、つねに、ずっと単純なシステムの群れからボトムアップ方式で創発してきているらしい。
この考え方を突き詰めていくと、生命には単なる物質を超越したある種のエネルギー、力、あるいは精神が宿っているという古くからある「生気論」の完全に科学的な新しいバージョンに行き着く。
それは単純なものの集合体にはこの上なく驚異的な仕方で振舞う能力があるからである。
生命はじつはある種の生化学的な機械かもしれない。
そういう機械を生きたものにするということは、いくつもの機械の集合体を、それらの相互作用のダイナミクスが「生きる」ような仕方で組織化することである。
また、生物の最も著しい特徴の一つは、遺伝子型(DNAに書き込まれた青写真)と表現型(その青写真に従って作られる構造)の二段構えになっていることだ。
簡単に言ってしまえば、遺伝子ごとに小さなコンピュータ・プログラムが一つあるとして、同時に走るそれらプログラムの集まりが遺伝子型であると考えてもよいということだ。
プログラムは相互に作用しあいながら全体としてのコンピューテーションを遂行する。
これが表現型、つまり生物の成長過程で現れてくる構造である。
生命は文字通りコンピューテーションそのものなのである。
コンピューター科学が到達した深遠な結論の一つに「決定不可能性の定理」がある。
コンピューター・プログラムがまるっきり自明のものでない限り、そのプログラムが何をするかを知る一番早い方法は走らせてみることだ。
だからこそ生きているシステムは、プログラムの完全な制御下にある生化学的機械でありながら、驚嘆すべき自発的な振る舞いを示すことが出来るのである。

「我々は決して変化することなくつねに変化し続けるこの世界の一部だ。例えるなら川下に流されていく紙の船の船長にすぎない。流れに逆らおうとすると何処にもたどり着けない。逆に、流れを静かに観察し、自分もその一部であること、流れが絶えず変化し続け、常に新しい複雑さを生み出していることに気付けば、時々オールを漕いで、渦から渦へと船を進めることもできる。」

余談ですが、佐藤史生さんの「ワン・ゼロ」のなかに「マニアック」という名前の学習型コンピューターが出てきますが、この本の中で、40年代にロス・アラモス研究所で、ニック・メトロポリス、フォン・ノイマン、らによって、最初に構築されたコンピューターが「MANIAC」と呼ばれていた(語源は「数学的解析器、計算機、積分器、兼コンピュータ」を意味する英語の頭文字をあわせたもの)、ということが書かれています。
佐藤さんはやはりここから名前を思いついたんでしょうか?


それでは


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ノースさんへ (くま)
2007-07-29 15:23:01
はじめまして。
コメント、ありがとうございます!

今少し、ご紹介くださったHPを拝見してきたのですが、とても面白く、興味深いです!
しかしあまりにも高度で、私の頭ではなかなか理解するのが難しそうですので、これから少しずつ勉強させて頂きたいです。
お声かけてくださって、ありがとうございます!
返信する
はじめまして (ノース)
2007-07-28 21:00:42
一風変わった脳内構造のホームページがあるのですが、話のネタにでも、いかがでしょうか?
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ブックさんへ (くま)
2007-07-28 16:30:25
コメント、ありがとうございます!

>私には理解力~ごめんね
とんでもねえですダ!
アッシの分かりにくい文章で、尚且つ自分でもよくわかってない難しいことを書いたりしてるのに…
読んで下さってありがとうございます!

>囚人のジレンマの話はどこかで読んだ~
ブックさんも、沢山本を読んでおられるから流石っスね~~!!
アッシははじめて読んだ話なんですけど、「良いやつで、優しくてタフでわかりやすいやつ」が勝つ…ってところが、人生訓としても考えられるような気がして、何だか好きなんですヨ。

>おんなじ様なこと考えてるんだな~
そうですよね~~!!
アッシは実際にはきっと出来てない事の方が多いようなんですけど、だけど人生の真理ってこういうものかもな~(だといいな~)って思ってたんで、やっぱ同じような事を仰ってる方がいたりすると、嬉しくなっちゃいますよね~!

>ま~るく10歳違う~
そうなんですか~!
ブックさんって、勿論「しっかりされてる方だな~」っては感じてましたが、同時に「ほんわか~っとした雰囲気のある方だな~」っても思ってまして、何となく勝手に、2、3歳上の方かな?とか思ってました!
失礼しました!すみません!

アッシ、中身はさらに若輩者ですが、今後ともどうぞ、宜しくお願い致します。

返信する
難しかった (ブック)
2007-07-27 21:35:49
私には理解力がないのか、よくわからなかったです
ごめんね
でも囚人のジレンマの話はどこかで読んだのか、見た気がします
なんかの漫画で読んだのかもしれない・・ここだけわかりました(笑)

それとすごい偶然なんですが、私がバトンを回した方の
質問が「困難に出会ったときどうしますか?」で
私の答えは「慌てず騒がずまず静観する、そのあと流れに
身を任せて、一番いい方法を探す」だったんです!!
おんなじ様なこと考えてるんだな~って思えて(失礼?)
嬉しくなっちゃいました

くまちゃん、私とま~るく10歳違うんですね~
でも考え方は私のほうが子供のようだけど(笑)
返信する
満天さんへ (くま)
2007-07-27 12:49:56
コメント、ありがとうございます!

>面白そうなニオイがするのだが…細かい所の単語が
すみません。本文にはちゃんとその論理独特の用語の説明も書かれていたんですが、それを上手く短めに説明出来なかったもんで、いっぱいはぶいちゃったんです。
アッシも英語とか科学用語とかチンプンカンプンだったので、旦那さんに聞いたり、ウィキで調べたりして読んだんですけど、それでも結局は漠然としか理解してないです。
だけど、この面白そうなニオイだけでも結構お腹いっぱいになっちゃうんですヨ~。

>この話はだいぶ前に聞いた事があります~
流石!満天さんだな~~!!
アッシはこの本を読むまで、全然知らなかったっス。
だけど互いに関わりのある世の中のことをバラバラに考える、って学問だけでは、不足なのではないか、っていう考えは、至極全うな気がしますよね。

>現在はこの形を医学界でも~
そうなんですか~~!!
東洋医学と西洋医学との融合、っていうだけでなく、さらに様々な学問(環境学とか心理学とか)からの、人間の病や健康に対するアプローチが進められてる…って話だったらいいな~。
そしたらいっぱい長生きして、その恩恵に浴したいですヨ。

>人生は…~
そうなんですよ!
以前満天さんもこのようなことをブログにお書きになってたかと思うのですが、アッシも世界には流れみたいなものがあって、人間もそれに沿って生きる方が幸せに感じるように出来てるんじゃないか…みたいなことは感じてましたので…
何か嬉しくって興奮しちゃうんですよね。

>くまちゃん=マニアック
最初一瞬分からなくてオタク的な意味の「マニア」かと思って、「いや~ごもっともっスヨ~お恥ずかしい~」みたいに思ってたんですが、もしかして↑の学習型コンピューター「マニアック」の意味!?褒めて頂いたの!?って気付いて、超~~~~嬉しいっスヨ~~!!
んだけど、ホントのところは正直に申し上げますと、「大人子供」です。
大人というには思慮が浅く、子供というにはヒネてます。(笑)
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すげ~~~ (満天)
2007-07-27 11:47:06
もの凄~く、面白そうなニオイがするのだが…
細かい所の単語が理解出来ないので
結局は半分も理解出来なかった~(アハハハハ)
しかも…今、満天さんは
理解しようと努力した分だけ
自身の脳が溶けてしまったっという現象に
悩まされている~(笑)

この話はだいぶ前に聞いた事があります
各分野のエキスパートが集合して
新しい分野の統括学問を作ろうっとしている
動きがあると聞きました
現在はこの形を医学界でも取り入れる方向だそうな~

人生は…
確かに大きな大河に身を委ねている感覚があるが
抗わずに身を任せた時に自分の舵が効くって所が
納得です~

しかし…くまちゃんって…
いったい…どんな人なんだろうか~????
私の中のイメージが…
くまちゃん=マニアックに思えてきた~~~
(アハハハハハ)
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