ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

伊坂幸太郎さんの新刊ミステリー「残り全部バケーション」を読破しました

2013年01月27日 | 
 ミステリー作家の伊坂幸太郎さんのミステリー小説「残り全部バケーション」を一気に読みました。東京近郊のJR川崎駅に往復する車内で読みました。

 新刊「残り全部バケーション」は集英社から2012年12月10日に発行されました。これも準簡易装丁版です(定価を抑える工夫のようです)。



 主人公は、溝口と岡田という車の追突事故詐欺という裏稼業の小悪党二人です。これまで、4つのミステリー小説誌などに掲載した4編の短編に、4編を通したつながりなどを語る、取りまとめ編の1編を加えた合計5編で構成されています。

 中身は最初に読むと、あり得ないと感じる状況設定にかなり戸惑います。常識的な理解では話の展開について行けない場合が多いのです。例えば、第三章「検問」は小悪党二人が、女性を誘拐し車の後部座席に押し込んで走行中に、警察の検問に引っかかります(できるだけネタバレにならないように、簡単に中身を説明します)。

 有力政治家が刺された事件の犯人を捜すための検問でした。この検問を担当する警官は、運転している溝口に車のナンバーを質問します。運転席の溝口はスラスラとナンバープレートの記号と数字を答えます。実は、ナンバープレートの数字を少し間違えて答えていました。

 さらに、車のトランクを開けるようにも指示されます。その警官がトランクを検査します。運転している車は、女性誘拐を依頼したクライアントなどが用意したものらしく、溝口と岡田は車のトランクに入れられた荷物の中身を知りません。

 検問を受け、「問題ないので先に進むよう」に警官に指示された溝口は車を発進させます。しかし、何か腑に落ちない感じがすると、車を道脇に駐めてトランクの中を調べます。すると、段ボールの中に、大きなバックが入っており、そのバックの中に百万円の札束が詰まっていました。

 溝口と岡田と、誘拐された女性の3人は、なぜ検問した警官がこの札束に気づきながら、そのまま通したかという理由をあれこれ考えます。こんな奇妙な話が5つ並びます。常識を覆す話の展開に、筋を追うのがやっとです。簡単には理解できないケースもあります。

 奇妙な味の“非常識”ミステリーです。最近の伊坂幸太郎さんのミステリーやSF小説は「見方を変えると、見えてくるものがまったく異なる」というテーマを追究しています。第三章「検問」の話の筋は、一応成立するかなとも思いますが、そんなにうまくつじつまが合うかなとも感じます。

 伊坂さんの小説は、新刊が発行されれば、原則購入し、すぐに読むことにしています。ただし、最近は大型書店に行く機会が大幅に減り、発行直後にすぐに購入するケースが減っています。この新刊「残り全部バケーション」はある新聞の書評で発刊に気が付きました。

 次回の新刊でも、背負い投げのような“一杯を食う”ことを楽しみたいと思います。