「モモ」にみる「資本論」と「人間の条件」

2022-02-12 16:24:55 | 日記
ミヒャエル・エンデ著「モモ」を読了。
 
今年の初めにはすでに読み終えていたんだけど、
色んな思考が巡ってまとまらなかった。今もまだその途中・・・。
ファンタジーとしても本当に素晴らしいんだけど、
まず感じたのは、この物語は資本主義批判、つまりエンデ流「資本論」であるということ。
 
資本を持たない労働者は時間を切り売りして、生きねばならない。
この物語でいえば、それは時間貯蓄銀行に「時間」を預ける(時間を盗まれる)ということ。
盗まれた人は追い立てられるように効率だけを求めて仕事し、ぎすぎすしながら人間性を失っていく。
 
「時間」は「生命」のメタファーであって、つまり人間性を失うということは、
生物的には生きているけど人間としては死んでいるという、著者の警告である。
 
この考え方はハンナ・アーレントの「人間の条件」と近いものがある。
彼女は「近代社会は『労働社会』となり、私たちが人間であり、
自由となるために欠かせない『仕事』や『活動』を押しつぶそうとしている。
人間はいまや動物化の危機に直面しているのだ」という言葉を残している。
 
とりわけ日本は「労働『強化』社会」である。
一部を除き、ほとんどの人は「労働『強化』社会」でアーレントの言う
「労働」にほとんどの時間を費やしている。それは資本に時間を泥棒されているのと同じである。
そしてその悲惨で最悪の行末は自らを「社畜」と貶めて死んだように生きるか、過労死である。
 
この作品が発表されてから約50年。
日本では人々の時間が泥棒され放題ですでにこの物語を超えてしまった、と言えば言い過ぎだろうか。

2021年

2021-12-31 22:43:44 | 日記

2021年は変化の一年だった。

20年間、生業としていた労働組合を離れて研究員に。

もちろん労働組合という業界にはいるけど、研究対象として労働組合を見ることは、

自分にとってとても刺激的だった。

プライベートでも気づきや成長の促してくれる方のお陰もあって、

劇的に変革したと思う。内面のある部分はもう昨年の自分とは全く違う。

この年齢になって人はまだ成長できるんだなぁ、と改めて思う。

来年もいい年でありますように。

 

今年良かったCD

ボブ・ディラン「1970」

ダイナソーJr.「スウィープ・イット・イントゥ・ スペース」

ラナ・デル・レイ「ケムトレイルズ・オーヴァー・ザ・カントリー・クラブ」

ニルヴァーナ「ネヴァーマインド-30周年記念スーパー・デラックス・エディション」

ボブ・ディラン「スプリングタイム・イン・ニューヨーク : ブートレッグ・シリーズ第16集(1980-1985)」

オアシス「ネブワース1996」

Sheryl Crow「Live From the Ryman And More」

ピンク・フロイド「ライヴ・アット・ネブワース」

Neil Young「Carnegie Hall 1970」

モグワイ「アズ・ザ・ラヴ・コンティニューズ」

コートニー・バーネット「シングス・テイク・タイム、テイク・タイム」

フリート・フォクシーズ「Shore

ザ・ビートルズ「レット・イット・ビー<スペシャル・エディション>」

v.a.「I'll Be Your Mirror: A Tribute To The Velvet Underground & Nico」

プライマル・スクリーム「デモデリカ

エル​・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ「バック・ザ・ウェイ・ウィー・ケイム:VOL.1 (2011-2021)」

ニール・ヤング「ヤング・シェイクスピア

ブラック・ミディ「カヴァルケイド」

ラナ・デル・レイ「ブルー・バニスターズ」

ジョージ・ハリソン「オール・シングス・マスト・パス(50周年記念3CDデラックス・エディション)」

ジョン・レノン「ジョンの魂(アルティメイト・コレクション)」

スネイル・メイル「ヴァレンタイン」

ジェイマスキス「フェド・アップ・フェイーリング・ストレンジ・ライヴ・アンド・イン・パーソン1993-1998」

R.E.M. 「ニュー・アドヴェンチャーズ・イン・ハイ・ファイ(25周年記念エディション)」

ピンク・フロイド「原子心母(箱根アフロディーテ50周年記念盤)」

Neil Young & Crazy Horse「Way Down In The Rust Bucket」

レディオヘッド「キッドAムニージア」

ノラ・ジョーンズ 「ティル・ウィー・ミート・アゲイン ~ベスト・ライヴ・ヒット」

v.a.「Number Zero」

<番外>

David Byrne「American Utopia on Broadway (Original Cast Recording)」

フラメンゴ「時計の中の鶏」


「未熟な詩人は借用し、円熟した詩人は盗用する」

2021-09-09 22:59:16 | 日記
リチャード・F・トーマス著「ハーバード大学のボブ・ディラン講義」を読了。
社会学的にディランをどう捉えるかという市民講座は受けたことがあるけど、
こちらの本では、ディランの詩を古代ギリシャ・ローマ時代の詩から読み解き、
そのエッセンスを現代の文脈で蘇らせたことについて高く評価している。
 
まぁ、要は盗作なんだけどw、「未熟な詩人は借用し、円熟した詩人は盗用する」という
T・S・エリオットの言葉を引用し、単なる盗作ではなく、
ディランが全体の作品の中で昇華させていることに著者は着目している。
それを証明するためにディランの歌詞はもちろん、数あるインタビューにも目を通し、様々な詩からの引用を丹念に調べつくしたのは、著者の執念ともいえる・・・。
 
こう書くといかにもノーベル文学賞をとってあたり前という流れになるんだけど、
そこは著者もディランもちょっとだけ違う解釈をしている。
それはつまり、ディランの詩は純粋な文学ではなく、「歌詞」なんだということ。
そして、その醍醐味はギリシャやローマの詩を朗読で味わうように、
ライブにあると著者は言い切る。
 
自分は、ギリシャやローマの詩もラテン語も全然わからないけど、
その感覚は直観的に理解できる。
自分が観たディランのライブは「味わう」という言葉がぴったりだった。
過去のヒット曲をそのままのアレンジで聞きたい人には申し訳ないけど、
時代ともに変化していく楽曲と、そのことによって、
歌詞のもつ意味の変化を「味わう」ことができる人に、
至高の喜びをもたらすのがディランのライブなんだと思う。
 
最後に余談だけど、ディランは太田裕美の「木綿のハンカチーフ」を聴いたことがあるのかな。
この曲の歌詞はディランの「スペイン革のブーツ」を盗作したものと言われているけど、
ディランならきっと素晴らしい作品と褒めてくれるんじゃないかな。
松本隆氏はこの曲で「円熟した詩人」になったんだと思う。
1人、テキストの画像のようです

2020年

2020-12-31 22:27:25 | 日記

コロナウイルスに明け暮れた2020年が終わる。

仕事には多少(主に自分の周囲で)影響はあったでけども、もともと出不精だったし、自分のライブはコロナの前から残念なほどディスタンスが取れているので、ほとんど相変わらずの生活を送っている。

コロナウイルス自体はまだまだ未知の部分が多く不安には思っているけど、この世界的パンデミックは、社会が見て見ぬふりをし続けてきた、または矮小化し続けてきた構造的問題を改めて突き付けてきた感がある。

これを機に真正面からこの問題に取り組むのか、臭いものにまたもや蓋をしてしまった愚かな時代の人として歴史刻まれるのか、その分岐点に僕らはいるのだろう。

2021年も言葉とギターを頼りに自分に正直に生きるだけだ。

 

<今年よかったCD>

ボブ・ディラン / ラフ&ロウディ・ウェイズ

フィオナ・アップル  / フェッチ・ザ・ボルト・カッターズ

ジョン・フルシアンテ / マヤ

ニール・ヤング / ホームグロウン

ローラ・マーリング / ソング・フォー・アワ・ドーター

アークティック・モンキーズ / ライヴ・アット・ザ・ロイヤル・アルバート・ホール

Neil Young / The Times

(ジョン・フルシアンテ・プレゼンツ)トリックフィンガー / シー・スマイルズ・ビコーズ・シー・プレッセズ・ザ・ボタン

プスンブーツ / シスター

Bob Mould / Blue Hearts

ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス / ライヴ・イン・マウイDavid Bowie / No Trendy

Réchauffé (Live Birmingham 95)

David Bowie / Ouvrez Le Chien (Live Dallas 95)

パール・ジャム / ギガトン

エイジアン・ダブ・ファウンデイション / アクセス・ディナイド

ニール・ヤング クレイジー・ホース / リターン・トゥ・グリーンデイル

パール・ジャム / アンプラグド

ボブ・ディラン / 日本のシングル集