都会のカエル

昨今、少子高齢化が益々深刻な都心は、気がつくと昔ながらの大きなお屋敷が
取り壊され、新たにマンションが建ったりお店になったりと懐かしい風景が
どんどん少なくなっていく。
会社の近くの旧家もその一つになってしまった
話に聞くとおばあさんが数年前まで一人で住んでいたそうだが、その後は
他に住まいを変え、たまに庭の手入れをする人が定期的に訪れていた。
その家が今週のはじめから取り壊され、今日はもうすっかり更地になってしまった。　　　　　
庭は日本庭園調で大きな石があちこちに置かれて趣のある庭だった。
また、そこは野良猫の格好の遊び場でもあった。
通る度にながめていたのでちょっと寂しい

更地を均している工事の人の熊手の隙間から何かがピョンと跳ねるのが見えた。

「っん　　なんだろう」

「あっ　　また跳ねた」

そう、それは土ガエルの子供だった。
人の耕す熊手を一生懸命逃れようと逃げている姿を見て、思わず

「すみません。そこのカエル貰ってもいいですか？」

と聞いてしまった

「ど～～うぞ～」

外国なまりの発音で答えが返ってきた
すかさずカエルを捕まえ、5分ほどの処にある公園の植木の陰に放してあげた。
どうか新しい住みかで元気に育ってくれますように・・・　
あの家は無くなってしまったけど、あそこに住んでいたカエルはがんばって
生き抜いていってほしい