プチ熟年OL憂さ晴らし記

嗚呼、すまじきものは・・・
憂さを晴らして明日を生き出づプチ熟の情熱駄文。

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夏の思い出・恐怖夜話

2005年08月16日 | 戯れ言
これは、数年前に、ある地方新聞に載った話である。
だから、見聞きしてご存知である方もいらっしゃるかもしれない。

T市の総合病院に、事故に遭い、下半身を切断された男性が運ばれてきた。
医師の手当ての甲斐なく、残念ながらその男性は亡くなってしまった。
身元がわかるようなものがなく、その晩は病院で安置されることとなる。

その晩の出来事だ。

いつものように、警備員が病院内を警備して歩く。
この病院では、夜の11時と深夜3時の2回にわたり、警備員が病院内を巡回することになっていた。

この日は、S氏の当番である。
彼は、ここでの警備の仕事は好きではなかった。
日中は日が差し込み明るい病院内も、夜はその様子が一変する。
夜の警備には慣れてはいるものの、病院の夜は他のビルの夜とは全く違かった。
異質の世界を呈している。

痛みのためか、どこかの病室からうめき声が聞こえる。
そういった苦しむ声は、耳の奥底でいつまでもこだましてやまない。
彼は、出来るだけ、そのような声を聞かないように努力していた。

「警備に集中しよう」

彼は、心の中でそう唱えながら警備に務める。

今日も、いつも通りに2回目の巡回を始めた。
各事務室、ホール、談話室、・・・
何事もない。
いつもの通り、である。

霊安室の前に来た。
この部屋を見て回れば、今日の仕事はお終いだ。
重たく冷たい扉を開き、室内を懐中電灯で照らす。
蝋燭のほのかな灯りと、線香の香りが体を包む。

彼は、懐中電灯で部屋の左奥を照らす。 
異常はない。

ゆっくりと明かりを右に移動させる。
右奥を照らした。
異常はない。

明かりを手前に移す。
遺体を安置する寝台が、明かりの中に浮かぶ。
異常はない。

いや、

そうではなかった。
遺体にかけてある白いシーツがめくれていたのである。

「ん?おかしいな。」

彼は寝台に歩み寄り、めくれたシーツを元に戻そうとそれを手に取る。

「!」

彼は、手を止めた。
今日は、たしか一体安置されているはずである。
なのに、シーツのその下には、その存在すべきものが、いない。

その時である。
彼の足元で、何かが微かに動く気配がした。
何かを引きずるような音。

ズッ・・・

彼は、懐中電灯を足元に向けた。

「ぎやあ゛ぁぁ!!」

足元のそこには、下半身のない男が両腕で立つ姿が浮かび上がった。
その男は、彼を恐ろしい目つきで彼を見上げ、血が滴る口を開き、

「オ、オレ ノ アシィィ・・・」

ズズッ

と、腕で歩き彼に近付く。

「ヒーーーーッ」

彼は慌てて、その部屋から逃げ出した。

あれは、いったいなんなのだ!
いや、今は考えるな、とにかく逃げろ。

彼は、必死に病院内を走った。
だが、その後ろを、両腕の男が追いかけてくる。

ペタッ、ペタッ、ペタッ、ペタッ

男が、両腕で走りながら近付いてくる音がすぐ背後に聞こえる。

フゥーッ、フゥーッ、フゥーッ

その荒々しく生臭い息遣いも、すぐ耳の後ろで聞こえる。

「マテェェ、オレノ アシィ」

ペタッ、ペタッ、ペタッ、ペタッ

彼の足に、男の一部が触れる。
もう、すぐ後ろまで迫っている。

わぁぁぁ、助けてくれぇー!
逃げろ、逃げろ、逃げろ。

彼は、無我夢中で逃げた。
病院の外に逃げ、夜の公道を走る。

助けて、助けて、助けて

ズッ、ズッ、ズッ、ズッ 

男の走る音が更に迫る。

も、もう、駄目だ。
もう、走れない。

力尽きる寸前の彼は、咄嗟に傍の電柱にしがみつき、男から逃れるために懸命に登った。

ズッ、ズッ、ズッ、ズッ
フゥーッ、フゥーッ、フゥーッ

「オリテコイィィ」

男は、彼が登った電柱の周りをグルグルと回り始める。

ズッ、ズズッ、ズッ、ズズッ

時折、彼を見上げては「カーッ」と口を開き、断末魔の叫びを上げる。

・・・あぁ、どうか、早く朝になりますように。

彼は祈った。

どのくらいの時が経ったのだろう。
突如、彼は下から声をかけられた。

「君、そこで何をやっているんだ。降りてきなさい。」

朝を向かえ、そこを通りかかった警察官に声をかけられたのであった。

「君、早く降りてきなさい。」

「いやだ、死体が、死体が追いかけてくる...そ、そこに居るはずです。」

「死体だと?何をバカなことを言ってるんだ。」

訝しがる警察官は、電柱の根元に目を移す。
そこには、下半身のない男の死体が転がっていた。

当時、説明のつかない話として地元・地方紙が取り上げた。
あらゆる角度から、この出来事が検証されたが、納得のいく説明が出来た者はひとりもいなかったらしい。
警備員の精神錯乱、彼が自ら死体をそこに持ってきたのではないかという説明に一度は落ち着いたのだが、病院内や公道に残された両腕男の血の付いた手形、土埃で汚れた男の手までもは説明がつかなかった。
世の中には、説明のつかぬ出来事は本当にあるのである。


っていう話を、高校時代、帰宅途中の電車の中で友達が話してくれた。
「何か面白い話をしろ」とせがむ私に、嫌々話してくれた話なのだが、ま~~、兎に角話し方がうまかった。
手振り・身振りに、話の間、どれをとっても秀逸であり、表現がリアルであったせいか、見たこともない夜の病院や霊安室、両腕男の姿を想像することが出来た。

おかげで、警備員が霊安室で両腕男に懐中電灯を照らし発見するくだりで、私は不覚にも電車内で大声を張り上げ、尻餅をついてしまった。
(友達はこのくだりを、自身が両腕男となり私に襲いかかる演技までして話した。)
その声に驚く乗客もおり、ちょっとしたパニックを起こしてしまったことは言うまでもない。
(謝りました)

しかし、本当に現実味溢れた話し方であった。
それを問うと、友達は「実は、地元で起きた話なんだ」と一言言って口をつぐみ、最後に「誰にも言わないで」と付け加えた。
最後の一言が、妙に現実っぽくて、シッコちびりそうになったということは余談である。

よくある都市伝説話ですが、夏なので、夏らしい思い出話をいたしやした☆

またね。
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