アジアの手仕事~生活と祈り~

アジア手工藝品店を営む店主が諸国で出逢った、愛すべき”ヒト・モノ・コト”を写真を中心に綴らせていただきます

19c英領インド時代ビルマ シルバー彫金ボウル

2018-05-23 00:15:00 | 技巧・意匠・素材




製作地 ビルマ(ミャンマー) 英領インド時代
製作年代(推定) 19世紀半ば~後半
素材 シルバー
サイズ 口径:約11cm、胴径:約14cm、高さ:約8cm、底径:約10cm、重さ148g

英領インド時代のビルマ(ミャンマー)で手掛けられたシルバー彫金ボウル、19世紀半ば~後期のアンティークの作品です。

この見事な打ち出し・浮彫のレリーフで装飾がなされたシルバー彫金ボウルは、ビルマ現地で托鉢用の鉢を意味する”ザベイク(thabeik)”と呼ばれる品モノで、実際には托鉢に用いられることは無く、宮廷貴族・富裕層(統治者の英国人含む)を中心とした人々の装飾用の調度品として手掛けられる伝統を有してきたものとなります。

銀を素材に巧みな打ち出し及び彫金により立体感豊かなレリーフ入りのボウルに仕立てられますが、デザインは”仏教・ヒンドゥ”に由来する神話や説話(ジャータカ等)の場面、 宮廷貴族装束による踊り等の宗教儀式の場面、またミャンマーの土着の”ナッ神”に由来するモチーフなど専ら信仰から題材がとられており、漆器・染織・木彫等とともに信仰と不可分の美術工芸として技術が高められていった様子を伺うことができます。

本ザベイクは胴径約14cmのふっくらとした造形の器側面に、様々な仕草の貴族装束姿の人物6体が立体感豊かかつ細やかに表わされた作品で、瓔珞や唐草等の背景モチーフを併せて卓越した彫金技術と作品の完成度の高さが感じられます。取り分け本品は人物の表情や仕草の硬さの無い生き生きとした表現が秀逸で、衣装の細部にわたり見飽きることがありません。

高度に熟練した世襲の銀細工職人(シルバースミス)が、貴族・富裕層の求めにより一点一点の作品を丹念な手仕事により製作にあたったものであり、19世紀コロニアル美術工芸期の時代の精神性が伝わる逸品です。