アジアの手仕事~生活と祈り~

アジア手工藝品店を営む店主が諸国で出逢った、愛すべき”ヒト・モノ・コト”を写真を中心に綴らせていただきます

インド・ヴァラナシ 絹朱子地”蔓花文”モール錦

2017-02-04 06:40:00 | 染織




製作地 インド・ウッタルプラデッシュ州 ヴァラナシ
製作年代(推定) 20世紀半ば
素材/技法 絹、金属モール糸(撚金属糸・ザリ) / 朱子織、緯紋織、ブロケード
サイズ 横幅(緯):53cm、縦(経):46cm

ヴァラナシはヒンドゥの聖地あるとともに近郊に仏教の聖地(初転法輪の地)サルナートを擁する宗教の都として、古代からの長い歴史を刻んできた街で、近世ムガル帝国の時代にはダッカ(現バングラデシュ)と並ぶイスラーム宮廷織物の最盛地として栄えた土地でもあります。

このヴァラナシは、取り分け優れたモスリン、錦、金銀モール(”モール”は”ムガル”が語源)の織物が生み出された地であり、ムガルの時代とは素材や技巧は大きく変わったものの、現在も多色の絹に撚金属モール糸(ザリ)を織り込んだ“ヴァラナシ錦”は、婚礼を中心とする高級な衣装用生地及びタペストリー等の調度品及びお土産品としての生産が続けられております。

本品は”紅赤”の絹を経糸とする朱子地(経朱子)の中に、”紺(青)””緑”の絹糸及び撚金属の”モール糸”が緯紋織として織り入れられ、四周をボーダー文様で囲む”蔓花文”が端整に織り表わされたもの、祝祭・婚礼時に用いる小ぶりの掛け布(ルマル)として手掛けられたものとなります。上質な絹糸とモール糸が用いられジャカード仕掛けの紋織機で織られたもので、糸作りと織りの双方から、熟練職人が高度な技巧を駆使した織物としての精神性が伝わってまいります。






























●本記事内容に関する参考(推奨)文献