アジアの手仕事~生活と祈り~

アジア手工藝品店を営む店主が諸国で出逢った、愛すべき”ヒト・モノ・コト”を写真を中心に綴らせていただきます

江戸後期 縞木綿”和唐桟・微塵嶋”裂(1)

2016-11-23 05:32:00 | 染織




製作地 日本 ※地域不詳
製作年代(推定) 19世紀 江戸時代後期
素材/技法 木綿、天然染料 / 平地、格子織
サイズ 幅(緯):33cm、長さ(経):51cm

本布は白及び青藍・紅・黄(生成り)に染められた4色の木綿糸で構成される平地の縞格子で、繊細に手紡ぎされた細手の糸で密に織り上げられたもの、舶来の唐桟・奥嶋が意識された織物であることが文様と色彩から伺えるところとなります。

唐桟・奥嶋は経緯ともに双糸(二本引き揃えの糸)で織られるのが通常ですが、江戸時代に遡るこの種の唐桟写しは、未だ品種改良の進む前の短繊維で粗く毛羽のある糸、細く長く紡ぐことが困難な国産木綿で織られたため、本布のように双糸ではなく単糸で織られたものが見受けられますが、ここまで細く長く繊細に手紡ぎされた糸により平滑な織物、一見すると渡りの唐桟と見紛うほどの細密な織りが実現できているのは並々ならぬ手技によるものと言うことができます。

遠目ではほんのり赤み掛かった灰色(江戸鼠)の色無地とも思えるような視覚効果があり、目を近づけると縦横に格子が入っていること、更に肉眼以上に倍率を上げると白・青藍・紅・生成り(※生成りは画像では判別しずらい)の4色構成で格子縞が表現されている様子が確認できるもの、ここからは細密小紋の型染めとの共通項・美意識の有り様が見い出せます。

”微塵嶋”とも称され珍重された江戸期の上手木綿織物、時代の色香が薫る逸品です。
























●本記事内容に関する参考(推奨)文献