アジアの手仕事~生活と祈り~

アジア手工藝品店を営む店主が諸国で出逢った、愛すべき”ヒト・モノ・コト”を写真を中心に綴らせていただきます

野外儀礼に荘厳美を演出するビーズワーク

2015-06-17 00:22:00 | 技巧・意匠・素材















(写真 インドネシア・スラウェシ島 タナ・トラジャにて)


繊細かつ華やぎ溢れる意匠に目を惹かれる多色ビーズワークの装飾品”カンダウレ”は、トラジャの人々の祝祭及び葬祭儀礼の際に、円錐形の吊り下げ飾りとして、また来賓の歓迎・案内の役割を担う女性の背肩装身具として用いられ、セレモニーの場に荘厳な空気感を演出します。

ビーズワークは数百年を遡る時代にインド更紗等とともに交易品としてこの地にもたらされたものと考えられていますが、天からもたらされたものという主旨の文言が神話に記され歌に詠まれ、またビーズワークの模様がトンコナン(住居)やアラン(穀物倉)の彫刻に転化されるほどトラジャの人々の感性・美意識を刺激し、その魂の内に深く根付いてきたものと言うことができます。

トラジャの儀礼に用いられる染織の多くは今では手仕事から離れていきましたが、この見事な細工・造形のビーズワークは、ママサ等の地方村で伝統手仕事として技術が継承されております。