まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
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『土曜の夜と日曜の朝』人は贅沢になっていく・・・

2010-07-27 23:33:28 | イギリス・アイルランドの作家
SATURDAY NIGHT AND SUNDAY MORNING 
1958年 アラン・シリトー

この物語の舞台は戦後のロンドンで、登場人物は全てブルーカラー。
世間や国に対する恨みつらみで溢れかえっているかと思いきや
読後にかなり落ち着いた気持ちになる一冊でした。

20歳を越えたばかりのアーサーは腕のよい工員です。
彼自身は自分を反権威主義者でアナーキストだと思っています。
しかし、特に反社会的な運動をしているわけではありません。

現状にはそこそこ満足しているからです。
稼ぎの良いアーサーは、遊びに出かける洋服に金をかけることができます。
家にはテレビがあるし、父親はタバコが好きなだけ吸えるようになったし
母親は苦労せずに食料を手に入れることができます。

工場では歩合が減らされないようにノルマぴったりの数量を仕上げることに専念し
土曜日の夜はお洒落をして町へくり出します。
同僚ジャックの妻ブレンダとの恋愛を楽しんでいます。

アーサーは「誰が首相になっても同じだ」的な言葉を口にしてますが
誰が首相でも生活が向上していく高度成長期っていいものですね。
早く戻ってきてほしい…

そんなアーサーにちょっとした不安材料ができました。
ブレンダが妊娠し、ジャックが気づいたようです。
それから、手を出してしまったブレンダの妹ウィニーの夫ビルに狙われるようになります。
ドリーンという恋人ができたのですが、彼女はおカタくてなかなか先に進めません。

アーサーはどうやらハンサムな青年みたいですね。

モテモテぶりや喧嘩以外は、極めてなんてことない毎日を綴った内容なのですが
登場人物が多く、(当時の)ブルーカラー居住区らしいエピソード満載で
どんどん引き込まれていきました。

ラブストーリーじゃないので書いちゃうけど
結局アーサーはドリーンとの結婚を決意するのね。
結婚を決めたあとのアーサーはやけに平穏で常識的になったように思え
「お若いのに落ち着いちまって 」という残念さは否めませんが
人ってそういうものかもね…

しかし、ほんの60年前にはこんなにもありがたがられていた普通のテレビ…
今や、デジタルだ! 簡単に録画もできてよ! 4原色になったぜ、3DもOK、と
なんと贅沢になったことでしょう。
今後テレビがどうなっていくのか…いや、人はこれ以上テレビに何を求めていくのか
少しおそろしい気がしております。
テレビだけじゃないけどね…

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