まりっぺのお気楽読書

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『シェリの最後』使い道のない美貌を持つと…

2011-05-25 15:11:30 | フランスの作家
LA FIN DE CHERI 
1926年 コレット

25歳近く年下の十代の美少年の心を釘付けにした女性レアに大絶賛を送りたくなった
『シェリ』の続編、と言っていいのかしら? 数年後を描いた物語です。
登場人物はほぼ同じですが、クローズアップされている人物が違います。

シェリは、19歳の美少年から、戦争帰りの30歳目前の美しい男性になっています。
人の顔色ばかり伺っていた友人のデズモンは事業をおこして成功し人柄も変わりました。
母のマダム・プルーは娼婦仲間が集う優雅な生活におさらばし、金儲けに飛び回っています。

ものすごく変化を見せているのが、シェリの妻エドメです。
シェリを崇めるように愛して、おどおどしているだけだったようなエドメは
傷痍軍人のための病院を営業して、毎日を忙しく、優雅に過ごしています。

忙しい母や妻と違って、シェリは手持ち無沙汰です。
誰もがシェリに「何もしないでじっとしていればいい」と言います。
昼食や夜食には毎日のように来客があって所在がありません。
シェリは次第に家を空け、パリの街をぶらぶらするようになります。

息子を心配したマダム・プルーの取りなしもあって
シェリは以前愛し合ったレアと5年ぶりの再会をすることにしました。

40代後半でも充分美しかったレアは、今や60歳になろうとしています。
どんな風に変わっているのでしょうね? まだ美しいままでしょうか?
シェリは期待と恐ろしさ半々、という状態でレアのアパルトマンを訪れるんだけれども…
再び会って、シェリとレアはどうなっちゃうんでしょう?
正直言って、レアには  違う展開を期待していたんだけどなぁ…

エドメが見せる美しさに愕然としながらも受け入れられず
アルノー博士とエドメの関係を想像して嫉妬しながら冷淡にしか振る舞えないシェリ。
日々疲れを覚え、やつれていくシェリに、レアと再会したことが重荷として加わります。

同じ頃シェリは、落ちぶれた高級娼婦でレアの友人ラ・コピーヌにバッタリ会うんだけど
彼女との再会が無ければ、彼の行く末も少しは変わっていたのかも…

だんだん追いつめられていくシェリにとって必要になっていくラ・コピーヌですが
彼女との交流が無ければ、あるいはシェリは再起できたかもしれない…という気がします。

シェリが最後にどうなってしまうかはお楽しみ…というか
読んだ私からして、70%ぐらいしか確信が持てないラストでした。

美貌の人が、その美しさ故に悲劇になってしまう物語は多いですよね?
不本意な相手との結婚とか、老いていくことの怖れとか、犯罪に巻き込まれるとか…
シェリの場合はなにがいけなかったんでしょう?

もちろん、戦争から帰って来たらすっかり居場所がなかったことへの焦りとか
燃尽き症状群って言うんですか? 目標を失って途方に暮れたとか、いろいろあると思うけど
私が思うに、早熟だったことがシェリの悲劇だったんじゃないかなぁ…

シェリは幼い頃から美しい顔立ちを意識して生きてきたわけですが
大人になった今、俳優や歌手などのように仕事に容姿が関わるわけでもなし
女性にもてたいわけでもなし…宝の持ち腐れ?
今でも女がほっとかない美貌であることを自覚しているシェリにとって
もはや愛し合うことができないという事実は存在意義の否定に思えたのではないでしょうか?

それよりなにより、まわりの女たちがシェリに至れり尽くせりで、その上おしゃべりすぎる。
読んでいる私でさえうざったくて「少しほっといてあげれば?」と言いたくなっちゃったわ。

「あ~、綺麗に生まれたかった!」って、生まれてこのかたずっと思ってますけど
峠を過ぎた後の苦しみを考えると…羨ましい人生なんだかどうだか…

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