まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『ブッデンブローク家の人びと』没落の典型を読んでみた

2011-03-28 00:45:47 | ドイツの作家
BUDDENBROOKS 
1901年 トーマス・マン

読み応え充分!!です。
以前イーヴリン・ウォーの『ブライヅヘッドふたたび』で「没落があまい!」と書きましたが
ブッテンブローク家はしっかり没落してしてくれてよかったっす。
こういう人がいて、こういう出来事が重なると家は滅びる…という
カタログみたいな物語です。
「そりゃぁそうなっちゃうよね~」という展開に心躍りましたよ。
ただブッテンブローク家は貴族ではなくて “ 貴族的な ” 都市の名士であるので
ちょっとスケールはダウンするんですけれどもね。

家を大きくして都市で一目置かれる存在になった最盛期から没落に至るまでの
家族四代を綴った物語です。
あらすじは盛りだくさんすぎて長くなるのでやめときますが、さらさらと流れを…

ヨハン・ブッテンブロークは、ブッテンブローク商会の代表で都市のコンズル(参事会員)、
広大な屋敷を持ち、妻アントアネットは名家ドュシャン家から嫁いできました。

息子はふたりいますが、前妻の子ゴットホルトは小売店を始めたため勘当されています。
ヨハンの後を継ぐのは次男ジャンで、彼の妻は名家クレーガー家出身のエリーザベトです。
トマス、クリスチアンという男の子と、アントーニエ、クララという女の子がいます。

家族三代が貴族のような暮らしを送っている中、まずアントアネットが亡くなり
次いでヨハンが亡くなります。

後を継いだジャンは堅実に商売を行い、コンズルになり、父と同じ道を歩みます。
ただ子供たちがね…
長男トマスは問題ありません。 真面目な若者で、しっかり家を継いでくれそうです。
しかし次男クリスチアンはお調子者で、学校の成績も芳しくありません。
長女アントーニエは王女様のように育てられたせいかわがまま放題で、貴族至上主義者です。
次女クララはからだの弱い静かな子で、成長するにつれ宗教生活に没頭していきます。

登場人物が山のようにいるのでブッテンブローク家の主要人物に絞って書いてますが
もうひとつ、忘れちゃならない家族がいます。
ハーゲンシュトレーム家… 先代ヨハンの頃には成り上がりもの扱いだった商人ですが
会社を大きくし、都市でも次第に注目を集める一家になりつつありました。

さてブッテンブローク家はというと、ジャンの時代はまだ安泰でした。
しかしアントーニエの結婚とクリスチアンの放蕩ぶりが少し不安を感じさせます。
ジャンは金詰まりを感じ始めた矢先に亡くなりました。

ジャンの後を継いだトマスは、アムステルダムの大富豪の娘ゲルダと結婚し
ヨハン(ハンノ)という息子を授かりました。
ゲルダは芸術好きで人嫌い、すぐ疲れるタイプの女性です。
ハンノは虚弱体質で、母親の音楽好きを受け継ぎ、極端に父を怖がります。

トマスも堅実に商売を行います、が、堅実すぎて縮小傾向になってしましました。
それでも一時期は資金も潤沢で、実家を上回る壮麗さの屋敷を買いました。
そこからブッテンブローク家の雲行きは怪しくなります。

アントーニエの二度目の結婚、アントーニエの娘エーリカの結婚、クララの結婚が
ことごとく失敗に終わりました。 持参金どころか遺産の一部も泡と消えます。
クリスチアンは病気を理由に働かず、借金は膨れ上がります。

母親のエリーザベトが亡くなると、資金繰りのために実家の屋敷を売る事にしますが
その屋敷を購入したのがハーゲンシュトレーム家でした。

ハーゲンシュトレーム家の当主はトマスと同じ年代の精力的なヘルマンで
息子たちもひとりは商売に精を出し、ひとりは検事として活躍していました。
ヘルマンの妹でアントーニエの宿敵ユールヘンは名家に嫁いで立派な奥様になっています。

物語はこのあたりから没落に向かってスピードアップします。
どうなるか書きたいけどやめときます… こうなるしかないでしょ、というラストです。
あれれれ…と言ってる間に一家は分解しちゃいます。

膨大なエピソードの中から、特に二代目、三代目の懊悩煩悶が心に残りました。
なにもかもを背負って生きる名家の当主の苦労たるや、並大抵ではありませんね。
特にこの一家は当主に依存しすぎてると思うのよ。

対照的に描かれているハーゲンシュトレーム家も、いつか同じ目に遭うのかもしれません。
上りつめたら落ちるだけだものね。

強固な階級制度が守ってくれた時代なら二代目や三代目が多少頓馬でも
浪費家や遊び人を抱え込んでも、名家は生き延びてこられたのかもしれません。
しかし(一応)制度が崩壊した今、やっぱり強靭な精神力と優れた手腕を持つ後継ぎが
とっても大切なのね…ってことでしょうか?

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« イギリス王ジョージ3世王女 ... | トップ | イギリス王ジョージ3世王女 ... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (エリア55)
2011-03-28 14:28:13
昔、北杜夫が好きで読んでた頃に
よく話題になってました^^
北杜夫ってマンが好きで
これのオマージュ?かなにかで「楡家の人々」を書いたとか書かなかったとか・・・^^;
でもどっちも読んでない気がします><

メールでコピーを送ったんですが届いたでしょうか?
添付ファイルが8個もあるので、何となく心配^^;
こんばんわ (まりっぺ)
2011-03-30 23:31:03
エリア55さま、こんばんわ。

メールありがとうございました。
お返事が遅くなってしまってすみません。
ファイルは全てちゃんと到着しています。
本当にお手数をおかけしました。

北杜夫も『楡家の人々』も読んだことがないのですが、この本をマンガ化したらベルバラくらいの長さになりそうですね。

解説は長くてちゃんと読んでいないのですが、内容はともかく、人物には各々モデルがいるみたいです。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

ドイツの作家」カテゴリの最新記事