まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『村の学校』ゆとり教育の極み

2009-09-07 00:43:04 | イギリス・アイルランドの作家
VILLAGE SCHOOL 
1955年 ミス・リード(ドーラ・ジェシー・セイント)

このところH・ジェームズの『大使たち』とかロレンスの『恋する女たち』とか
例えて言うなら “ おしゃべりクソ野郎 有吉 ” な物語を立て続けに読んだので
ほどよく気の抜けた『村の学校』でリフレッシュ。

南イングランドの村の学校が舞台です。
教会に併設された煉瓦造りでとんがり屋根の学校です。
教室内は『大草原の小さな家』みたいな学校を想像していただければいいと思います。

全校生徒40人ほどの学校で年長クラスを教えるリード先生が書き綴った1年間の物語。
年少クラスのクレア先生が病気で変わったり、給食車が事故をおこしたり
農園の卵を生徒が盗んだり…という学校の出来事に加えて
クリスマスに収穫祭、イースターといった季節の行事、音楽祭やバザーなど村の行事が
楽しそうに、ノスタルジックに描かれています。

登場人物も個性的で楽しい。
善い人とくらべると、文句たらたらのプリングル夫人や偏屈なブラッドレー夫人など
コミカルに書かれている曲者の方が印象に残ります。

しかし…時代に違いがあるとしても、ものすごいゆとり教育ぶりに驚きます。
6歳ぐらいから11歳までの子供たちを同じ教室で教えることにも無理がある気がしますが
授業内容ものんびりで、やたらと自習があるのも気にかかる…

でも、こんな長閑な物語の中にも様々な教育問題が盛り込まれています。
お金持ちが通う私立の小学校と公立の小学校の教育格差について論じられています。
確かに、寄宿学校のイメージが強いイギリスでこんなに気ままな学校があるのかいな?
という気がしました。 しかも20世紀なのに。

小さな学校が次々閉鎖されて大規模な学校への転換が計られることへの
住民の不安も書かれていました。
父母、祖父母と何代にも渡って通った村の学校が無くなることへの寂しさが主な理由です。
長年小さな学校を支えてきた、教会や資産家たちの事情も変化していたみたいです。

それから当時の、11歳にして中学校へ行くか職業訓練校に行くかを決めてしまう制度への
問題提起のようなことも書かれています。
作者は教師をしていたということでリアルな悩みだったのかもしれません。

国際的な競争力のことや学力向上のことは抜きにして考えると
たとえ授業の時間がいくばくか費やされるとしても
子供たちが地域の行事に積極的に参加したりするのはいいことだと思う。
お祝いの意味を考えたり、大人と協力することで育まれることはあるんじゃないかしら?

村中の人の名前と顔を知っているというのも100%ではないけれど憧れますね。
たしかに家庭の問題まで知られてしまうというのはうざったいですが
◯◯家の奥さんが入院したから、と学校で小ちゃな子供を預かったり
村ぐるみで助けを申し出たりというのは、なかなかお目にかかれないことだけに
現代の都会人には羨ましい部分もあります。

しかし時代は変わるもの… もともと学校へ行けなかった子が学校へ通い
農繁期で休みをとる子供もいなくなり、教育が当たり前になって
さらに過剰な教育が与えられる、という流れはもう止まらないのかもしれません。
ゆとり教育も見直しのようですしね。

でも学力だけが子供の問題なのかしら?
少なくとも、日能研の子供たちはバスでお年寄りに席を変わるように!!
お菓子のまわし食いもやめるようにね

村の学校 日向房


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こちらは『村の学校』シリーズがあるみたいですよ。
コメント
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