れきしどころ真理庵

江戸時代の江戸を中心に、医学史・蘭学史を調べています。日々の暮らしを歴史からみた写真日記。

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司亮一著『男爵九鬼隆一』

2006-12-26 00:55:34 | 真理庵文庫・歴史&医学

世間には「年末進行」という言葉がありますが
別段仕事に「年末進行」が入っているわけではないのです。
ですが、ここのところ私の毎日は目が回りそうな感じです。
何故かと言えば私自身が自分に課したことを
年内に終わらせようとしているから。
今の私は夏休みの宿題を8月31日だけで終わらせようと
躍起になっている子どもの心境です!

司亮一氏のこのご本も、
本来なら『川本幸民』に次ぎに続けて読むべきでした。
そういう流れで行った方が、本当は自然でした。
ですがそれができず今頃になってしまいました。
その点をまず司氏にお詫び致します。
(司氏にそういったお約束をしたわけではありません。
ですが、物事は一番ホットな時にやるべきでしょうし、
それが親切というものでしょう)

この『男爵(バロン)九鬼隆一』は、
司氏として初めての歴史小説(orノンフィクション?)です。
ですから本来なら「バロン」、『川本幸民』と読むべき処を
私は2作目から読み始めました。

『川本幸民』がほぼ川本幸民のみでまとまっていたのに対して
「バロン」の方は、九鬼隆一を中心とした群像小説です。
いつもながら司氏の参考文献の多さには脱帽です!
濃度が凄く濃い、エキスをぎゅっと煮詰めたような小説で、
面白いのですが、読む側にとっては盛りだくさんすぎて大変な作品です。
勿論処女作としてここまでの作品が描ける司氏の力量は大したものですが、
この1作で少なくとも3~5作分のエッセンスがある。
多分職業作家ならこんな勿体ないことはしたくてもできないでしょう。
また、(処女作故でしょうが)司氏は書いていて
魅力ある人物を次々に発見してしまって、
どの人も捨てがたかったのでしょう。
その感覚、読んでいて良く分かりました!
「あとがき」で北氏がお書きになっていらっしゃいますが
これは「偉人伝」ではないと。
その通りかもしれませんが、
それゆえ皆自分に正直でキラキラ(あるいはギラギラ)輝いて見えました。
司氏はそれを「業」と書きましたが、
出世欲にしても権力欲にしても、はたまた性欲にしても
エネルギーの塊のような人間がゴロゴロしていた時代があったのだと、
そのパワーに目を見張りました! 

この本を読めば、その後長編「白洲次郎」を書かれるに至った
経緯が分かるような気がしました。
また、次回作が福沢諭吉ということも納得のいくことです。

個人的には九鬼初子の狂乱、精神病院での入院生活は興味深かったです。
実は学生時代心理学を専攻し、
ゼミは精神医学それも東大系の先生でしたから、
基を辿れば呉修三や松沢病院は慣れ親しんだ言葉です。
また和田三郎(岡倉天心の息子)が長じて精神科医として
(岡倉天心の元カノ)初子の前に現れわれるのは凄い皮肉というか、
運命のいたずらを感じました。

また、九鬼周造の人生も面白かった!
実は深川をやっているうち、「粋って何?」という疑問にぶち当たり
『「いき」の構造』を読み出したのですが、手に負えませんでした。
その著者のことを(こちらか見れば)事も無げにお書きになってしまう司氏に
敬意と同時に(年が近いせいか)嫉妬してしまいました!

私の手元には本名北康利でお書きになった『白洲次郎』がまだあります。
この本今年中に読めるか、
あるいは2007年最初の本となるか、微妙なところです。
きっとまた、ため息つきながら、嫉妬してるんだろうな~、氏の才能に。。。



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