真実をはつか避けゐる気のすれば坂をゆくバスふいにかたむく
首都の夢みたかもしれぬ中之島水たうたうと獅子(ライオン)の橋
花屋には旅人の木が売られゐて冷たき手触りひと日のこれり
迷走ののちの春なりペルセフォネの帰還をまねてみどりをまかむ
ときにふかく思惟の貌する三歳とならびて春のクレーンをみる
あふぎみるものに焦がれて雨の日を八百年の楠に逢ひにゆく
眼も口も埴輪となれば菜の花のやうにはかなく笑へるひと日
草もみぢが冬の陽にもゆ散歩道ささやかなことにひとは救はる
とほくちひさくなりゆく母か木枯らしの吹く日に携帯の契約をとく
渡りきるまでのはなやぎ戯れて合流地点の飛び石わたる
(水原茜 ペルセフォネの帰還)
**********************************
二首目は、大阪中之島の難波橋のこと。水の都大阪にふさわしい歌だ。
四首目。あとがきによると、ギリシャ神話から題材を取った歌で、集題となった。
「ハデスにより冥界に攫われていたペルセフォネの帰還は、母デメテルに女神の役割を想い出させ、大地には再び春が訪れる」とある。作者の親子関係にも何か変化があったのだろうか。
八首目。こんな何気ない歌に私はこころを惹かれた。
十首目。これは出町柳の風景だろう。わたしもほぼ毎日、この川の合流地点の様子を見ている。家族で列になって渡った日もあった。あの華やぎがいまは懐かしい。
首都の夢みたかもしれぬ中之島水たうたうと獅子(ライオン)の橋
花屋には旅人の木が売られゐて冷たき手触りひと日のこれり
迷走ののちの春なりペルセフォネの帰還をまねてみどりをまかむ
ときにふかく思惟の貌する三歳とならびて春のクレーンをみる
あふぎみるものに焦がれて雨の日を八百年の楠に逢ひにゆく
眼も口も埴輪となれば菜の花のやうにはかなく笑へるひと日
草もみぢが冬の陽にもゆ散歩道ささやかなことにひとは救はる
とほくちひさくなりゆく母か木枯らしの吹く日に携帯の契約をとく
渡りきるまでのはなやぎ戯れて合流地点の飛び石わたる
(水原茜 ペルセフォネの帰還)
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二首目は、大阪中之島の難波橋のこと。水の都大阪にふさわしい歌だ。
四首目。あとがきによると、ギリシャ神話から題材を取った歌で、集題となった。
「ハデスにより冥界に攫われていたペルセフォネの帰還は、母デメテルに女神の役割を想い出させ、大地には再び春が訪れる」とある。作者の親子関係にも何か変化があったのだろうか。
八首目。こんな何気ない歌に私はこころを惹かれた。
十首目。これは出町柳の風景だろう。わたしもほぼ毎日、この川の合流地点の様子を見ている。家族で列になって渡った日もあった。あの華やぎがいまは懐かしい。