マーブリングファインアーツのブログ

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プロジェクションマッピングとミニチュア

2013年12月02日 | 製作物
昨年の東京駅でのイベント『TOKYO HIKARI VISION』を皮切りに、
一般的な認知もますます高まってきているプロジェクションマッピングですが、
公共施設の建物への映像投影が主ということもあり、
マーブリングでも実際の建物へ投影する前のしシミュレーション用として、
いくつかミニチュアを製作させて頂く機会がありました。

建物への投影が主体となっていたプロジェクションマッピングですが、
プロジェクター機能の向上やアイデアの多様性により、
車、靴、マネキンや、または雲への投影など、様々なスケール感でのパフォーマンスが行われています。
そしてイベントだけではなく、食玩として手のひらサイズで投影が楽しめる『ハコビジョン』(http://www.bandai.co.jp/candy/hakovision/)が、
来年の頭に発売予定となり話題を集めています。今後もますますの発展を予感させます。

それはミニチュアへもまた然りで、シミュレーション用に製作していたミニチュアが、
その後様々な展示やイベントへ持ち出され、会場でのパフォーマンスに使用されることも多々ありました。

ミニチュアを使ったプロジェクションマッピングには、これまで大きく分けて二つのタイプがありました。
1つは密集したいくつものミニチュアへの投影による見せ方、もう1つが作り込まれた1つのミニチュアへの投影による見せ方です。

前者のミニチュアは、1つ1つの建物への作り込みや彩色はほとんど施されず、
長方形や三角錐、円柱などと行ったシンプルな形状と色のものを密集させ1つの都市のような見せ方をします。
マッピングのデータとミニチュアのサイズやセッティングの擦り合わせを入念に行い、
細かな部分にまで形状に合わせた映像がかっちりと合わさることで、その密度感がより際立ちます。
ミニチュア自体の表情がシンプルなため、映像を引き立たせるための下地としての役割をバランス良く担うことができます。

そして後者の、作り込まれた1つのミニチュアへの投影ですが、
鉄道模型のジオラマや特撮で使用されるもののように、
ミニチュア自体を見るためのミニチュアと同等の作り込みが求められるわけではありません。
やはり投影される映像がメインとなるので、会場の暗さも相まって見る側の細部にまで目が留まるものではないのです。
そのため通常のミニチュアに比べ、より「作り込まれているように見える」ことが重要になります。

例えば壁面の目地。通常はレーザーカットの出力調整によるスジ彫りによって表現がなされますが、
このような場合には、illustratorでサイズや太さを調整し、実際の建物の壁面と色味を合わせた背景の上にラインを
描いたものを出力紙に印刷しそれを張り込んだり、目地の形に合わせたマスクを作りその上からミニチュアの
壁面へ塗装することでレンガ目地を描き込むなど、平面的な処理によりディティールを表現します。
一見しただけではレーザーでの製作によるものとほとんど印象が変わりません。

<出力により表現された壁面の目地>

今回の目的である映像の投影に直接影響する要素というわけではないのですが、
投影された映像の光の中に一瞬映り込むディティールがあるのとないのとでは見る側の臨場感に差が出てきます。
全体の形状を正確に作った上で、「ディティールにはなるべく手をかけない、しかしディティールがあるようにみせる工夫」を施しています。

プロジェクションマッピングのように近年発展の目覚ましいデジタル技術との組み合わせは、
造形物の新しい在り方の1つと言えるかもしれません。

以前、いとうせいこう氏がパーソナリティを務めるネット配信番組「DOMMUNE」にて放送された
「AMAZING BANG・REVERSE4~メディアアート・インタラクティブへの参加性」内にて、
プロジェクションマッピングの可能性や魅力に関するお話の中で
デジタルな要素のみで構成されたものではなく、実際にそこにモノが存在しているという当たり前のことに人は興奮する
という主旨の発言がされていました。
この言葉は、特撮を含む映像作品のCGと造形物との関係において
造形物の魅力と必然性を語る際に、頻繁に耳にする言葉です。

立体物を使った映像投影の技術発展は今後もますます飛躍し、より多様な形へと拡がっていきますが、
そこに、頭に描いてはいるけどこの世には存在しないものを立体として形にできる造形物の
特性を生かす可能性がまだまだ埋まっていると感じます。

今後の動向に注目です!



広報 井上
http://www.marbling.net/

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