記憶探偵〜益田啓一郎のブログ(旧博多湾つれづれ紀行)

古写真古地図から街の歴史逸話を発掘する日々。ブラタモリ案内人等、地域の魅力発掘!まち巡りを綴ります。

堺・京都・彦根で吉田初三郎を満喫!最新企画展も!

2007年04月28日 23時49分01秒 | Weblog
 京都・彦根出張から先ほど帰宅した。今回の目的は吉田初三郎につい
ての諸調査であった。堺市博物館では、5月6日まで開催されている、
企画展「描かれた都市の姿-パノラマ地図の系譜-」を観た。初三郎の
「堺市鳥瞰図」絹本原画をはじめ、久々公開の初三郎資料に混じり、1
点初見の作品があり驚喜した。

 それは田八作「堺市鳥瞰図」絹本原画。昭和30年頃の作品だが、田
八作とは言わずと知れた?吉田初三郎の後継者、二代目となる吉田朝太
郎の別ペンネームである。保存状態も良い。この作品は全く知らなかっ
たので、今日お会いした研究家の藤本氏、石黒氏にも尋ねたがお二方と
も知らないレアな作品であった。

 昨日はその後に京都入りし、お孫さん宅へ伺った。来年の企画展につ
いての下打ち合わせである。九州・山口関係の直筆トレース図5点を預
かり、先日発見された「串木野市鳥瞰図(昭和28年)」絹本原画と対
になる直筆トレース図も印刷物と全く同じことを確認。5月に現地へ向
かい原画の細部を確認をする予定だ。

 その後、今回の調査のハイライトである、和多田印刷さんへ伺う。私
が状況証拠から仮説を立てた印刷工程や初三郎の観光社との関係が、ほ
ぼ全て正しいことが判った。しかし、今回はそれよりももっとすごい発
見や証言を聴けたのだが、これは追って記すことにする。予想以上の大
発掘が続き、簡単には書けないのだ。

 その夜、京都で定宿にしている河原町のビジネスホテルに入り、ぶら
りと夕食を食べに先斗町へ向かった。一人であるし一見の店に入ろうか
とも思ったが、何気なくいつも行く老舗料理屋・藤の家のてんぷらコー
スを食べることにした。知っている人は知っている、藤の家は初三郎ゆ
かりのお店。お孫さんの実家でもある。

 食事を始め、何気なく店員さんにお孫さん宅へ今日伺ったことを話す
と、なんと「あぁ、今見えられてますよ」との返答(笑)。ご本人も顔
を出していただき、一時の後の再開?にお店の終了まで杯を交わした。
GWということもあるのか、この日の店内は外人客ばかり。納涼床は5
月に入ってからとのことだったが、既に床を敷き準備は整っていた。

 仏や米の方々がいる所で、お孫さんは「あんたに今日会って、まだ資
料があるかもと思って倉庫を調べに来たんよ」と言って、新たに見つけ
たという「洞爺湖温泉」絹本原画と直筆トレース図を、お店の中で見せ
てくれた。資料は家や実家など数カ所に分けて保管されている。外人さ
んがいる中で広げた鮮やかな図に、皆さん遠巻きに何かとのぞき込む。

 洞爺湖といえば、来年北海道サミットの計画がある。これって何か役
に立つんじゃなかろうか。とお孫さん。終戦後の芦田首相はじめ、初三
郎存命時の首相や外相などは皆、初三郎と面識あり晩餐会や懇親をした
ことが記事などの記録で残る。初三郎の画業が観光振興だけでなく、経
済や産業とも密接に関わっていた証拠でもあろう。

 芦田氏は戦後の日本がどう進むべきかを初三郎に尋ね、産業振興と観
光立国という思惑で一致し意気投合。国立公園や国定公園の整備推進、
都市観光推進による日本復興をもくろんだことが初三郎が記念に進呈し
た直筆画などに対する首相の御礼状が残ることで判る。初三郎は自身の
図絵が少しでも日本の復興に役立てばと新たな志を見つけ、戦後の復活
を果たすのである。

 同様に都市復興を担う地方都市の財界人なども初三郎に一目おいてい
たことは同様に資料が残っているため明朗である。宇部興産社長と俵山
温泉へ一泊で出掛け夜通し話し合ったことなどがその一例だ。美の国日
本を描き続けた初三郎の作品とその見識が今こそ役に立つ時代かもしれ
ない。

 今日28日は朝いちで伏見の月桂冠・大倉記念館に伺う。初三郎屏風
絵を観たいのと、日本酒の酒蔵めぐりも趣味である。屏風絵の複製を観
ながら学芸員さんと話すと、縁があるものでその方は4月に赴任したば
かり、しかもその前は福岡博多、それも私の住む街の隣町に住んでいた
そうだ。初三郎や月桂冠ポスターを含むデザイン分野の研究では意見が
会いそうだ。それにしても大倉記念館はこのところ大忙し、1週間に1
万人もの来場者があるのだそうだ。

その後は彦根へ向かい、彦根まちなか博物館特別展「鳥瞰図展~近江鉄
道・全国私鉄沿線ガイド鳥瞰図」~5月23日迄を観覧し、観光と鳥瞰図
に関する講演を聴いた。今日の講演者は滋賀大経済学部の阿部氏であっ
た。観光と鳥瞰図の役割を多彩な例を用い解説された。

 この日は初三郎研究の藤本・石黒両氏とも合流。研究の第一人者が来
ていることで、講師は少々話しづらかったと思うが、滋賀県では初とな
る初三郎作品の紹介は、現地での資料探索や活用には最適である。

 帰りは京都まで藤本氏と一緒だった。氏は京都駅にあるという初三郎
絹本原画を確認に下車、私はそのまま新幹線で帰福したのだが、帰宅後
すぐに藤本氏から電話が入り、京都駅11Fの食堂街に「京都市鳥瞰図」
絹本原画があり、誰でも観ることができるので1時間ほど見入ったと興
奮ぎみに話された。

 とにかく初三郎づくしの2日間であった。

※今日の写真は、彦根で開催中の鳥瞰図展会場。

以下、現在開催中の鳥瞰図絡みの企画展を記載。お近くの方はGW中に
観に行くのも楽しいかもしれない。

 ●企画展「描かれた都市の姿-パノラマ地図の系譜-」
 2007年3月3日~5月6日・堺市博物館
 ※吉田初三郎「堺市」原画や印刷物を中心に構成。
 http://www.city.sakai.osaka.jp/hakubutu/kikaku.html

 ●彦根まちなか博物館 
 特別展「鳥瞰図展~近江鉄道・全国私鉄沿線ガイド鳥瞰図」
 ※吉田初三郎「彦根市」原画はじめ処女作印刷物など展示。
 2007年4月27日~5月23日・アルプラザ彦根6F

 ●春の企画展「鳥瞰図の世界-観光地図で旅気分」
 2007年4月21日~5月27日・うのはな館(愛知県東浦町郷土資料館)
 http://www.town.higashiura.aichi.jp/25unohana/kikakuten.htm

 ●特別展「ようこそかながわへ-20世紀前半の観光文化-」
 2007年 4月21日~ 2007年 6月 3日・神奈川県立歴史博物館
 ※初三郎「神奈川県観光図」原画他、記念講演会も。
 http://ch.kanagawa-museum.jp/
この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 佐敷 居よいか 住みよいか... | トップ | 昭和の日に賑わう、豊後高田... »
最新の画像もっと見る

Weblog」カテゴリの最新記事