目も見え侍らぬに
―帝願うの皇子お召し―
押し頂きて 桐壺更衣母
「涙に曇る この目しも
光りお言葉 頼りにと」
開く便りに 認むは
《時過ぎ行かば 紛れると
思いて過ごす 月日やに
忍び難きの 増々ぞ
幼き人は 如何にとぞ
共の育ての 出来無くの
気掛かりなるに 如何がやな
桐壺更衣形見と 参内を》
こと細やかと 書きたるに
添えたる歌ぞ これぞかし
宮中に
居りし桐壺
露と消え
里ある皇子を
思うは遥か
宮城野の
露吹き結ぶ
風の音に
小萩がもとぞ
思いやられる
御文涙で 読み切れず
「生きておるさえ 辛き身に
松が思うも 辱かしの
この身宮中 参るなど
憚り多き ことにてぞ
【松が思うも】
いかでなほ
有りと知らせじ
高砂の
松の思はむ
事も恥づかし
―古今集―
(長寿なる
高砂松も
驚くの
長らえ為すの
知られ恥ずかし)
重ねお言葉 賜わるも
内裏参内 とてもにて
若宮胸は 如何なるや
思うに直ぐに 参内を
したき様やの 諾なるも
この身とりては 悲しゅうに
見侍りおると お伝えを
桐壺更衣先立て 不吉身と
共のお過ごし 畏れ多い
思えど桐壺更衣 形見にて・・・」
若宮既に お就寝を
「お目に掛かりて 詳しくに
ご様子なりと 思いしも
帝帰りを お待ちかね
夜も更け行くに そろそろと」
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