【掲載日:平成22年10月29日】
春雨に 萌えし楊か 梅の花 友に後れぬ 常の物かも
家持 関東行幸の留守
書持が 当主代役
家の取り仕切りは 大刀自坂上郎女
書持は 名ばかり当主
しかし 気弱書持は
せずもがなの気遣いに 心を痛めていた
気疲れ書持
夜更けともなると 一日の気重が伸しかかる
鬱晴らしにと 旅人残せし 歌控えを開く
正月立ち 春の来らば かくしこそ 梅を招きつつ 楽しきを経め
《正月の 新春来たぞ 今日の日を 梅呼び褒めて 楽しゅう過ごそ》
―大弐紀卿―〈巻五・八一五〉
〈おお これは 大宰府での梅花宴
紀卿殿の 発句
あの方が 梅を招かれたか〉
み冬つぎ 春は来れど 梅の花 君にしあらねば 招く人もなし
《冬過ぎて 春なったけど 梅花を 紀卿以外に 招く人ない》
―大伴書持―〈巻十七・三九〇一〉
梅の花 み山と繁に ありともや かくのみ君は 見れど飽かにせむ
《梅花が 山といっぱい 咲いたかて あの宴ほど 褒められへんわ》
―大伴書持―〈巻十七・三九〇二〉
春雨に 萌えし楊か 梅の花 友に後れぬ 常の物かも
《春雨が 呼んだ楊か いつも通り 梅と一緒に 芽吹く楊か》
―大伴書持―〈巻十七・三九〇三〉
梅の花 何時は折らじと 厭はねど 咲きの盛りは 惜しきものなり
《梅花は 何時に折っても 構へんが 咲き誇る時 折るのは惜しで》
―大伴書持―〈巻十七・三九〇四〉
遊ぶ現の 楽しき庭に 梅柳 折りかざしてば 思ひ無みかも
《遊呆けてる 楽しい庭で 梅柳 折り髪挿したら 思うことない》
―大伴書持―〈巻十七・三九〇五〉
わが園に 梅の花散る ひきかたの 天より雪の 流れ来るかも
《梅の花 空に舞う様に 散って来る 天から雪が 降ってきたんか》
―主人―〈巻五・八二二〉
〈おう 第壱組結句は 父上か〉
御苑生の 百木の梅の 散る花の 天に飛びあがり 雪と降りけむ
《御苑生を 埋める梅の木 散る花が 天まで飛んで 雪になったか》
―大伴書持―〈巻十七・三九〇六〉
歌作り 全てを忘れ 書持の心安らぐ時
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます