【掲載日:平成22年4月23日】
故郷の 飛鳥はあれど あをによし
平城の明日香を 見らくし好しも
〈空気が違うわ
飛鳥のは 澄んではいるが 重苦しい
平城の明日香は 華やぎの香り
私は やはりここがいい〉
故郷の 飛鳥はあれど あをによし 平城の明日香を 見らくし好しも
《故郷の 飛鳥ええけど ここ平城の 明日香もええな なんぼ見てても》
―大伴坂上郎女―〈巻六・九九二〉
尋常に 聞けば苦しき 呼子鳥 声なつかしき 時にはなりぬ
《いつもなら 聞く気せえへん 郭公鳥 気持ち良聞ける 季節なったで》
―大伴坂上郎女―〈巻八・一四四七〉
平城風に染まる 心に
恋の奴が 戯れかかる
情ぐき ものにそありける 春霞 たなびく時に 恋の繁きは
《恋心 募ってるとき 春霞 ぼやっと棚引き 鬱としなるわ》
―大伴坂上郎女―〈巻八・一四五〇〉
暇無み 来ざりし君に 霍公鳥 我れかく恋ふと 行きて告げこそ
《暇無いて 言て来ん人に ホトトギス 恋しがってる 言うて来てんか》
―大伴坂上郎女―〈巻八・一四九八〉
五月の 花橘を 君がため 珠にこそ貫け 散らまく惜しみ
《散らすんが 惜しい橘 花つなぎ 薬玉にしてるで あんた思うて》
―大伴坂上郎女―〈巻八・一五〇二〉
夏の野の 繁みに咲ける 姫百合の 知らえぬ恋は 苦しきものぞ
《知られんで ひとり思てる 恋苦し 夏の繁みで 咲く百合みたい》
―大伴坂上郎女―〈巻八・一五〇〇〉
ひさかたの 天の原より 生れ来たる 神の命 奥山の 賢木の枝に
白香付け 木綿取り付けて 斎瓮を 斎ひほりすゑ 竹玉を 繁に貫き垂れ
猪鹿じもの 膝折り伏して 手弱女の 襲衣取り懸け
《雲分けて 遥かな天の 高みから 下りこられた 神さんに 山から採った 榊枝
白髪と木綿と 取り付けて 清い酒壷 掘って据え 竹玉いっぱい ぶら下げて
獣みたいに ひれ伏して か弱い女が 祈布を掛け》
かくだにも 我れは祈ひなむ 君に逢はじかも
《こんないっぱい 祈ります どうかあの人 逢わして欲しい》
―大伴坂上郎女―〈巻三・三七九〉
木綿畳 手に取り持ちて かくだにも 我れは祈ひなむ 君に逢はじかも
《木綿布を 手にし祈るよ 懸命に どうかあの人 逢わせて欲しい》
―大伴坂上郎女―〈巻三・三八〇〉
男運の悪い郎女
旅人も亡くし
寄る辺ない心の 置き所を求め続ける
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