令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

旅人編(17)天娘子(あまをとめ)かも

2009年10月25日 | 旅人編
【掲載日:平成21年11月30日】


君を待つ 松浦の浦の 娘子をとめらは 常世とこよの国の 天娘子あまをとめかも

【玉島川。玉島東方簗場やなば付近】


〔これを 見せずに くものか
 相手は よろしがいい
 あやつ  神仙の思想に 通じておるで 
 そうじゃ  ものがたり風に仕立て
 歌の 前文まえふみとして 添えてやろう〕

《わしが松浦まつらを 尋ねし折に 玉島川を 遊覧せしが たまさかう 鮎釣る娘子おとめ 
 花のかんばせ うるわしかぎり 立ち居の姿 輝くばかり 眉はやなぎ 頬桃の花 
 心気高けだかく 優雅な様子 他に比ぶる ものとてあらず

 わしはいぶかり 娘子おとめに問うた 「何処いずこの里の 何方どなたのお児か もしや常世とこよの 仙女せんにょじゃないか」
 娘子おとめら笑い 答えて曰く 「われら漁師の 家なる娘 草葺き小屋の いやしい子らぞ 
 言うべき里も  家なぞ無くて 名乗る名前も 持ちあわせぬぞ 
 水親しむを  好みとなして 山に遊ぶを 楽しむばかり 
 浦のほとりで 泳げる鮎の 姿よろしと うらやみおりて 
 山の狭間はざまに 座りてままに 雲や霞を 眺めて暮らす 
 たまさかいし 高貴なお人 感に堪えずて 打ち解け話す 
 これより後は 夫婦みょうとの契り 結ばないでは おられはせぬぞ」
 娘子おとめの言葉 それがし受けて「分かりもうした あなたの思い 慎み聞きて かしこみ受ける」

 やがて日は西 なねばならぬ またの逢う瀬と 思いのたけを 歌に託して 贈りて別かる》

旅人たびとに 悪戯いたずら心が 芽生える
〔そうじゃ 
 よろしに またぞろ 羨望せんぼうさせるも 可哀そう
 うまくもないない歌 作らせるも 考えものじゃ
 代わりに  わしが作って
 これも  添えて送るとするか〕

松浦川 川の瀬早み くれなゐの の裾濡れて 鮎か釣るらむ
《川の瀬が  早いよってに 紅い裾 濡らして鮎を 釣ってんやろか》
                         ―大伴旅人―〔巻五・八六一〕 
ひとみなの 見らむ松浦まつらの 玉島を 見ずてやわれは 恋ひつつらむ
みんなして 見てる玉島 ええ景色 わし見られんと あこがれるだけ》
                         ―大伴旅人―〔巻五・五六二〕 
松浦川 玉島の浦に 若鮎わかゆ釣る いもらを見らむ 人のともしさ
《玉島の  浦で若鮎 釣る児らを 見てるあんたら 羨ましいで》
                         ―大伴旅人―〔巻五・五六三〕 

ややあって 吉田宜よしだのよろしからの返書が 届く
そこには  申し訳程度の 一首が
君を待つ 松浦の浦の 娘子をとめらは 常世とこよの国の 天娘子あまをとめかも
《あんたはん 待ってるうた 娘子おとめらは 桃源郷の 仙女せんにょやきっと》
                           ―吉田宜よしだのよろし―〔巻五・八六五〕




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