高橋虫麻呂が 詠う 伝説歌謡
葦屋の うなひ処女の 八年児の 片生の時ゆ 小放髪に 髪たくまでに
並び居る 家にも見えず 虚木綿の 隠りてませば
見てしかと 悒憤む時の 垣ほなす 人の誂ふ時
《芦屋の うないの処女 八つの歳から 年頃までも 隣も見せへん 箱入り娘
見たいもんやと 胸焼き焦がし 引きも切らない 求婚話》
血沼壮士 うなひ壮士の 盧屋焼く すすし競ひ 相結婚ひ しける時は
焼太刀の 手柄押しねり 白檀弓 靭取り負ひて
水に入り 火にも入らむと 立ち向ひ 競ひし時に
《血沼の壮士と うなひの壮士 火花を散らす 嫁取り競い
かなた太刀提げ こなた弓 水中 火の中 厭いもしない》
吾妹子が 母に語らく 倭文手纒 賎しきわがゆゑ 大夫の 争ふ見れば
生けるとも 逢ふべくあれや ししくしろ 黄泉に待たむと 隠沼の 下延へ置きて
うち嘆き 妹が去るぬれば
《優しい処女は 胸痛め 私のことで 人が死ぬ 生きての結ばれ 考えず
あの世で待つと 母に言い 本心告げず 旅に出る》
<続きは今昔291>
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葦屋の うなひ処女の 八年児の 片生の時ゆ 小放髪に 髪たくまでに
並び居る 家にも見えず 虚木綿の 隠りてませば
見てしかと 悒憤む時の 垣ほなす 人の誂ふ時
《芦屋の うないの処女 八つの歳から 年頃までも 隣も見せへん 箱入り娘
見たいもんやと 胸焼き焦がし 引きも切らない 求婚話》
血沼壮士 うなひ壮士の 盧屋焼く すすし競ひ 相結婚ひ しける時は
焼太刀の 手柄押しねり 白檀弓 靭取り負ひて
水に入り 火にも入らむと 立ち向ひ 競ひし時に
《血沼の壮士と うなひの壮士 火花を散らす 嫁取り競い
かなた太刀提げ こなた弓 水中 火の中 厭いもしない》
吾妹子が 母に語らく 倭文手纒 賎しきわがゆゑ 大夫の 争ふ見れば
生けるとも 逢ふべくあれや ししくしろ 黄泉に待たむと 隠沼の 下延へ置きて
うち嘆き 妹が去るぬれば
《優しい処女は 胸痛め 私のことで 人が死ぬ 生きての結ばれ 考えず
あの世で待つと 母に言い 本心告げず 旅に出る》
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