万葉集ブログ・2 まんえふしふ 巻九~巻十

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1754 高橋虫麻呂歌集

2010-10-21 | 巻九 雑歌
反歌

今日尓 何如将及 筑波嶺 昔人之 将来其日毛

今日の日に いかにかしかむ 筑波嶺(つくはね)に 昔の人の 来けむその日も


反歌

「(はたして)今日の日(の楽しさ)に、勝ったであろうか?筑波山には、(かつて)昔の人(たち)も、(大勢)登った(であろうが)今日の(楽しさには、勝らないと思うのだが)」

1753 高橋虫麻呂歌集

2010-10-20 | 巻九 雑歌
検税使大伴卿登筑波山時歌一首(并短歌)

衣手 常陸國 二並 筑波乃山乎 欲見 君来座登 熱尓 汗可伎奈氣 木根取 嘯鳴登 峯上乎 公尓令見者 男神毛 許賜 女神毛 千羽日給而 時登無 雲居雨零 筑波嶺乎 清照 言借石 國之真保良乎 委曲尓 示賜者 歡登 紐之緒解而 家如 解而曽遊 打靡 春見麻之従者 夏草之 茂者雖在 今日之樂者

衣手 常陸の国の 二並ぶ 筑波の山を 見まく欲り 君来ませりと 暑けくに 汗かき嘆げ 木の根取り うそぶき登り 峰の上を 君に見すれば 男神も 許したまひ 女神も ちはひたまひて 時となく 雲居雨降る 筑波嶺を さやに照らして いふかりし 国のまほらを つばらかに 示したまへば 嬉しみと 紐の緒解きて 家のごと 解けてぞ遊ぶ うち靡く 春見ましゆは 夏草の 茂くはあれど 今日の楽しさ


検税使・大伴(旅人)卿が、筑波山に登る時(に詠んだ)歌一首(ならびに短歌)

「“衣手”常陸の国に、二つに並ぶ、筑波の山が、見たいと思う、あなたが来られたので、暑い中、汗をかいて息も乱れ、木の根にすがって、呼吸荒く(山に)登り、頂上を、あなたに見せると、(山を支配する)男神はお許しになり、女神も加護くださった。

通常なら、雲がかかり雨が降る、筑波山も、今は晴れ渡る。見ることがかなわない、国のすばらしい景色を、詳細に、示された。嬉しくて、(衣の)紐をゆるめ、家にいるときのように、くつろいで遊ぶ。“打ち靡く”春を見るのも(よいが)、“夏草の”(雑草が)茂ってはいるが、今日の日が楽しいことだ」

1752 高橋虫麻呂歌集

2010-10-19 | 巻九 雑歌
反歌

射行相乃 坂之踏本尓 開乎為流 櫻花乎 令見兒毛欲得

い行き逢ひの 坂のふもとに 咲きををる 桜の花を 見せむ子もがも


反歌

「国境いの、坂のふもとで、咲き乱れている、サクラの花を、見せる娘がいればよいですね」

1751 高橋虫麻呂歌集

2010-10-18 | 巻九 雑歌
難波經宿明日還来之時歌一首(并短歌)

嶋山乎 射徃廻流 河副乃 丘邊道従 昨日己曽 吾超来壮鹿 一夜耳 宿有之柄二 峯上之 櫻花者 瀧之瀬従 落堕而流 君之将見 其日左右庭 山下之 風莫吹登 打越而 名二負有社尓 風祭為奈

島山を い行き廻(めぐ)れる 川沿ひの 岡辺の道ゆ 昨日こそ 我が越え来(こ)しか 一夜(ひとよ)のみ 寝たりしからに 峰の上の 桜の花は 瀧の瀬ゆ 散らひて流る 君が見む その日までには 山おろしの 風な吹きそと うち越えて 名に負へる杜に 風祭(かざまつり)せな


難波に経宿し、明日、還り来る時の歌一首(并短歌)

「島のように見える山(の周囲)を、取り巻いて流れる、川沿いの、丘辺の道を、昨日、我々は超えてきたばかりだのに。(難波で)一晩だけ宿泊しただけで、峰の上の、サクラの花は、滝の瀬に散って流れます。あなたたちが(サクラの花を)見るその日までは、山から吹き降ろす、風よ吹くなと(祈りましょう)。山を越えて、評判が高い(竜田の)杜で、『風祭』をいたしましょう」

1750 高橋虫麻呂歌集

2010-10-17 | 巻九 雑歌
反歌

暇有者 魚津柴比渡 向峯之 櫻花毛 折末思物緒

暇(いとま)あらば なづさひ渡り 向つ峰(を)の 桜の花も 折らましものを


反歌

「時間があれば、(川の)流れを渡り、向こうの峰の、サクラの花を、手に取ることができるものを」