万葉集ブログ・2 まんえふしふ 巻九~巻十

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1792 田辺福麻呂歌集

2010-11-28 | 巻九 相聞
思娘子作歌一首(并短歌)

白玉之 人乃其名矣 中々二 辞緒下延 不遇日之 數多過者 戀日之 累行者 思遣 田時乎白土 肝向 心摧而 珠手次 不懸時無 口不息 吾戀兒矣 玉釧 手尓取持而 真十鏡 直目尓不視者 下桧山 下逝水乃 上丹不出 吾念情 安虚歟毛

白玉の 人のその名を なかなかに 言を下延(したは)へ 逢はぬ日の 数多(まね)く過ぐれば 恋ふる日の 重なりゆけば 思ひ遣る たどきを知らに 肝向(きもむか)ふ 心砕けて 玉たすき 懸けぬ時なく 口やまず 我(あ)が恋ふる子を 玉釧 手に取り持ちて まそ鏡 直目(ただめ)に見ねば したひ山 下行く水の 上に出でず 我が思ふ心 安きそらかも


娘子(おとめ)を思い作る歌一首(ならびに短歌)

「“白玉の”その娘(こ)の名を(口には出さないもの)、むしろ、心の中でひそかに思う。会わぬ日が、数多く過ぎれば、恋しい日が、重なってゆけど、思いをはせる手がかりもない。“肝向ふ”心配する“玉たすき”(きみを)心にかけぬ時はく、(二人で愛を)語り続ける。

私が愛する娘を、“玉釧”この手に触れ、“まそ鏡”直接見つめ合わねば、“したひ山”地下水(のようなこの思い)、表に染み出すことはない。私が(あの娘を)思う心は、そんなに簡単なものではない」