万葉集ブログ・2 まんえふしふ 巻九~巻十

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1755 高橋虫麻呂歌集

2010-10-22 | 巻九 雑歌
詠霍公鳥一首(并短歌)

鴬之 生卵乃中尓 霍公鳥 獨所生而 己父尓 似而者不鳴 己母尓 似而者不鳴 宇能花乃 開有野邊従 飛翻 来鳴令響 橘之 花乎居令散 終日 雖喧聞吉 幣者将為 遐莫去 吾屋戸之 花橘尓 住度鳥

鴬(うぐひす)の 卵(かひご)の中に 霍公鳥(ほととぎす) 独り生れて 己(な)が父に 似ては鳴かず 己が母に 似ては鳴かず 卯の花の 咲きたる野辺(のへ)ゆ 飛び翔(かけ)り 来鳴き響(とよ)もし 橘の 花を居散(ゐち)らし ひねもすに 鳴けど聞きよし 賄(まひ)はせむ 遠くな行きそ 我が宿の 花橘に 住みわたれ鳥


ホトトギスを詠む一首(ならびに短歌)

「『鶯(うぐいす)の卵(かいご)の中の時鳥(ほととぎす)』

ウグイスの、卵の中の(巣)で、ホトトギスが、一人ぼっちで生まれた。自分の養父(ちち)に、似た声では鳴かない。自分の養母(はは)に、似た声でも鳴かない。ウツギの白い花が、咲く野辺から、飛翔して、(私のところまで)やってきては鳴き(声を)響かせ、タチバナの(枝に止まって)、花を散らす。終日鳴くがよい声である。

(かわいいおまえに)贈り物をしよう。(だから)遠くへは行かないでおくれ。我が家の、タチバナの花に住み着いておくれ。(小さな)ホトトギスよ」