消えた立小便

「あやしむ【怪しむ】」の用例の変化。

　「白昼、立小便をして怪しまない〔＝平気で立小便をする〕」（初版～第四版）

　→「違法駐車をして怪しまない〔＝平気でいる〕人が多いのは困ったことだ」（第五版）

最近、立小便している人っていませんね。それで用例が差し替えられたのでしょう。第五版の用例も早く差し替えられたらいいのに。

ぽつんとつぶやく

「ぽつんと」の用例。

　「下宿代りの部屋で目を覚まし、ぽつんとつぶやきます」（第四版・第五版）

何とつぶやいたのかわかりませんが、なんだかこの人こわい。東京になじめずひきこもってしまった大学生でしょうか？（それより、例えば国語のテストで「ぽつんとを使って文を作りなさい」という問題が出たとして、こんな答えを書いたのでは点がもらえないような気がします。）

女性の体臭の魅力

いろか【色香】〔もと、美しい花の色と、そのかおりの意〕離れて見た女性の顔かたちの美しさと、近寄って感じる香料と体臭の交じった、なんとも言えない魅力。〔男性を魅了するに十分なもの〕（第五版）

「香料と体臭の交じった」の部分が、なんとも言えません。妙にリアルです。（においフェチか？）

未だに続く垂れ流し

いまだに【未(だ)に】の用例。

第四版では「―〔＝今になってもなお〕行くえが分からない」だけでしたが、第五版で「工業廃水による水質汚染は―続いている」という用例が付け加えられています。

わざわざ用例を追加した部分に、倫理観の欠如した工場に対する新明国の怒りが伝わってきます。

工場廃水の垂れ流し

たれながし【垂(れ)流(し)】〔すべきでない所に〕大小便を・無意識に排出する(してそのままにほうっておくこと)（初版・第二版）

初版・第二版では上のようになっていましたが、第三版では当時大きな社会問題となっていた公害問題に言及されます。

たれながし【垂(れ)流(し)】身体が不自由な人が排泄物を、倫理観の不足のために工場が汚水や廃液を、排出すべきでない所ヘ排出して、周囲に迷惑をかけること。（第三版）

「倫理観の不足のために」と一言多いのが新明国流。それはさておき、排泄物の垂れ流しについて「身体が不自由な人が」「周囲に迷惑をかける」と書いてしまったのは、さすがにまずい。恐らくクレームがついたのでしょう、すぐに書きなおされました。

たれながし【垂(れ)流(し)】大小便を始末出来ないで、放って置くこと。〔倫理感の不足のために工場が汚水や廃液を、排出すべきでない所ヘ排出して、周囲に迷惑をかける意にも用いられる〕（第四版・第五版）

「排泄物」が「大小便」に戻ってしまったのはなぜでしょう？

オゾン層の破壊

これも第五版から追加になった用例。

ちめい【致命】
【―的】適切な処置を怠ると、修復不能な事態になりかねない様子。
用例　「オゾン層破壊は人類に―な影響を及ぼすだろう」

新明解国語辞典の大予言？

東京砂漠

さばく【砂漠】降雨量が少なかったり 川が無かったり するため植生や生息動物の種類が限られている一帯の荒れ地。アフリカ北部・中近東・オーストラリアその他、熱帯・温帯に属する大陸の各地に存在する。
「東京―〔＝開発が進み過ぎて、人間が健全な生活を営むには今や不適かと判断される社会環境の東京〕」

第四版まで砂漠の用例は「ゴビ砂漠」と「サハラ砂漠」だけでしたが、第五版でついに「東京砂漠」が登場しました。（あなたのそばで暮らせるならば東京砂漠もつらくはないそうです。内山田洋とクール・ファイブが言ってました。）

土木工事で山崩れ

やまくずれ【山崩(れ)】山腹の斜面にある土・岩が、いろいろな原因で安定を失い、急速に崩れ落ちる現象。規模の大きなものは山間部の交通路や村落を破壊したり 川をせきとめたり する。主因は降雨であるが、大地震・火山の爆発によっても起こり、土木・砕石工事に伴って起こることも有る。

私がすごいなと思ったのは、山崩れの原因として「土木・砕石工事」をわざわざ入れている部分です。無理な宅地開発・道路工事などによって、人為的に危険性が増すこともあります。自然の力にはかないません。

恥部

ちぶ【恥部】「陰部」の別称。〔広義では、出来るなら他人、特に外人などに見せたくない、社会構造上の裏面を指す。例、「大都会の―《＝スラムや街娼など》」〕（第三版・第四版）

外人の目を気にしているところがユニークです。なお、第五版では語釈が少し変更されています。

ちぶ【恥部】「陰部」の別称。〔広義では、出来るなら他人、特に外国人などに見せたくない、社会構造の裏面を指す。例、「政財界の―《＝公金の不正支出や贈収賄など》」〕（第五版）

例が「大都会の恥部」から「政財界の恥部」に差し替えられています。公金の不正支出や贈収賄は社会の「陰部」だったんですね。

タラコとサイドカー

たらこ【鱈子】(一)スケトウダラの卵を塩漬けにした食べ物。普通、一腹がサイドカーのように並んでおり、焼いたり 酢の物にしたり して食べる。(二)大きな黒い皮をかぶった、マダラの卵。煮付けて賞味する。たらのこ。

版によって多少文章が違っていますが、「たらこ」の語釈中、「サイドカーのように並んでおり」という表現が出てきます。普通の人は、たらこを見てサイドカーなんて思いつかないと思います。そもそも似てないと思います。恐るべし、新明国！

なお、写真は人造人間キカイダーです。サイドカーと聞いてこれを連想するなんて、年がばれてしまいますね。