まどか先生の「ママ達のおやつ」

ママの笑顔は、我が子が幸せであるためのママ・マジック。ママが笑顔であるために、この「おやつ」が役立つことを願っています!

ある出来事・・・

2011年06月02日 | にこにこ

 パスモ、スイカ、イコカ・・・こうしてカタカナで書くとピンとこないかもれませんね いつもは PASMO、Suica、ICOCA と表記されていて、その文字に馴染んでいます
 これらは、私も日頃よく使う便利ツールです。これが出来てからは、キヨスクでの買い物も、もちろん切符も、小銭を出して買うことはなくなりました。
 このお陰で、もたもたバッグの中から小銭入れやお財布を取り出さずにすみ、時間の節約にもなっています
 ちょっとしたマイナスは、私立の小学校に通う小さな子ども達が、電車に乗ってお友達のお家に行くとき、頭を使って切符を買うチャンスがなくなってしまったことでしょうか。
 
 さて、この便利なパスモを、先日、私は持ってでるのを忘れてしまいました。
バッグ好きの私は、ついつい出かける前に気が変わり、バタバタと違うバッグに入れ替えることがあります。その日も、違うバッグに急遽取り替えたため、そんな失敗をしてしまったのでした バッグの中身は全部入れ替えたのに、外側のポケットに入れておいたパス入れを入れ忘れたのです。
 でも、実は何の問題もありません。きっぷを買えば良いだけのことなんですからね でも私は、パスモを忘れた不便さよりも、慌ただしくバッグを替えた自分、それによってパスモを忘れて出かけてしまった自分に、何となく腹を立てていたんですねえ・・・
 いくつもの用を済ませ、あれこれとお買い物をしたため、帰りは荷物がいっぱいになりました

 ターミナル駅での切符売り場。今では、ほとんど利用する人がなくなったズラリと並んだ自動券売機。こんなご時世ですから、そのうちの何台もが節電のために使用不可の電光表示がありました。
 そんな券売機の前で、手に持ったたくさんの荷物を置き、お財布を出す煩わしさ・・・またまた自分の失態が思い出され、情けない思いをしていたそんな時。少し離れたところから、大阪弁が聞こえてきました

  「あらへんでえ。石川町なんて、書いてへん。どこやねん。」
  「おとうちゃん、あんた、まちごて聞いたんちゃうん。あんたの耳、あてにならへんもん。」
  「何言うてんねん!東横線て言うてたがな。まちごてへん!」 
  「ほんなら、なんで石川町がないんよ。おかしいやんか。」
  「うるさいなあ・・・むー、こことちゃうんかなあ・・・」

 私は、その夫婦漫才のような大声の大阪弁での掛け合いが何ともおもしろく、思わず耳をダンボにして聞いてしまいました でも、明らかにお困りのご様子。とてもお気の毒に思い、是非お役に立ちたい、と思いました

 日常生活では、私が家族と大阪弁で暮らしていることをご存知の方も多いはず
 私はやっとこさっとこバッグからお財布を出して切符を買ったあと、その初老のご夫婦のところに近づきました。

  「何かお困りですか?私、お役に立てるかもしれません!」
と、大阪人らしい?!人懐っこい笑顔で話しかけると、私が大阪弁で話しかけたからでしょうか、すぐにお二人は反応されました

  「ほんまでっか。困ってますねん。今朝、神戸から○○○○言う大きな船で着きましてんけどな、ガイドさんに中華街の行き方聞いたら、石川町へ行けって教えてもろて・・・東横線言いはったさかい、ここに来ましてんけど、そんな駅、書いてへん。ほんま・・・ウソ教えたんかいなあ・・・」

 私は、石川町はJR根岸線の駅であること、誰かと石川町駅で待ち合わせをしているのでなければ、みなとみらい線(東横線の延長路線)の終点「元町中華街駅」で降りれば簡単に行けること、を伝えました
 もちろん、ちょこちょこと笑いのとれるような小ネタを入れて・・・です

  「やあ、助かりましたわー。奥さん、お忙しいとこ、ご親切になあ。ほんま、地獄に仏とはこのことですわ、なあ、おかあちゃん!」
  「ほんま、ほんま。ええ人にでおたなあ。奥さん、見るからに人がええ!って顔に書いたある。お友達、多そうなお顔やわ。好かれはる顔や!」
 これまた、小ネタ満載です

 私は、降りる方向を間違てしまうと、中華街にたどり着くのが困難になってしまう元町・中華街駅の改札の説明をするために、結局、そのご夫婦と一緒にホームまで歩き、次の電車が来て、お二人に無事に乗っていただけるまで、10分以上、いろいろとおしゃべりをすることになりました

 お二人は、実況放送のように、とても揺れた○○○○号という大型客船の話しをしてくださり、また、かわいいお孫さん達のお話もしてくださいました 
 私も、介護のために頻繁に大阪に帰省していることや、実家が高層マンションで、とても見晴らしが良い話もしました・・・
 奥様は、その間中、ずっと私の手を握り、介護が必要な父の話にはフンフンと頷き、背中を叩いて励ましてくださいました

 とうとう、ホームに電車が入ってきました。
  「なんか、奥さんと別れ難いですわ。ほんまに・・・」
  「おとうちゃん、そんなこと、口に出してしもたら、ほんまに悲しいなるやんか。私、我慢してたのに・・・」
 私も全く同じ気持ちでした

 自動券売機のところで、そのおもしろい大阪弁の会話を聞いてから、時間にすれば20分ほどだったでしょうか・・・
 でも、そこにお互いの「心」が感じられたから、そのわずか20分の時間は、1時間、2時間、いえいえ、決して大袈裟ではなく、一日以上の重みとあたたかさを感じるものでした

 ドアが閉まり、私たちは何度も頭を下げ、手を振り、別れました・・・
 電車が行ってしまったあと、私は一人、取り残されたような寂しい気持ちになりました
 そして大まじめに、次の電車に飛び乗り、あのご夫婦を追いかけようかと思いました。地元の人間として、短時間でご夫婦が中華街を楽しめるようにご一緒したい・・・そう思ったものです

 その後、自宅に戻っても、あの方達は無事に戻られただろうか?と気にかかり・・・そういえば、どちらに戻られるのを聞いていなかったことを思いだし、なぜそれを聞いて、詳しく帰り道の説明をしなかったのだろうかと悔やみました

 一期一会。
漢字検定の初級クラスの問題のようですね。でも、本当に、人との出会い、人とのふれあい、人との会話・・・それは、この上なく素敵なものだと、私はいつも実感しています
 パスモを持って出ていたら、私はあのご夫婦とは出会わず、わずかの時間だったとは言え、あのあたたかくて、心癒される会話はありませんでした。

 私は今日も、あのご夫妻の手を振る姿を、何度も思い出しています


コメント
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