ペイン様番外編 ーjokerー 第7話

2018-10-31 18:30:07 | 日記
ペイン様 番外編 ーjokerー7






「はい、タイムアップ~」
コウは歩きながら箱とクジを久納の手から回収し、クジを箱の中へ入れると、片手で久納の腕を掴んだ。
「アニキもこの際ですから、出てください」
「は?」
すると強引に久納を舞台の中央へ連れ出した。
メンバーとプラス久納の登場に、会場が再び沸いた。
スタッフからマイクを受け取るとコウは
「ちょっとしたお遊びの企画考えましたんで、楽しんでもらえたらと思います」
と切り出した。
「なぁ~に~?」
とたずねる観客に、クジで当たった人は、引いたメンバーとツーショットチェキを撮影できる旨を伝えた。

ファンクラブのメンバーたちはこの発表に、隣と顔を見合わせて たいそう喜んでいる。
久納はちょっと胸が痛んだ。


「そこで、本日のスペシャル・・・ゲスト!ではなく!
スペシャル助っ人のペイン様にも、手伝っていただきましょう」
コウのトークも冴えわたっている。
久納はまるで素人のようにペコペコ頭を下げた。楽器を持っていないというのは、やはり なんだか落ち着かない。
妖艶な吸血鬼は笑顔で横から見守っている。
カボチャは拍手している。が、おそらく何も見えていない。

「では!本日はカボチャマンとしてドラムを叩いてくれている、オンドラムス明!!
明さんから引いてもらいましょう!」
明が両手を挙げて歓声に応えた。しかし、本人からは何も見えていない。
「じゃ、ペイン様は箱を持ってください。で、カボチャさんがクジを引いたら、それを開いて読み上げてあげてね」
コウはおどけて、わざとお茶目な話し方をする。
ファンは喜んでいるが、久納はこの大袈裟な道化具合に内心ちょっとイラついていた。



明が引きやすいように、久納は箱の向きを調整してやる。
首を傾げながら箱の中を無言で まさぐるカボチャは、実に滑稽だった。
この間、コウが「ドゥルルルルルルルル」と口でドラムロールを真似ている。
「ジャン!はい、出た!
ペイン様、開いてあげて!」
コウの指示に従い、カボチャから受け取ったクジを開く。
“カボチャ リボン”なんて、思えばかなり人物を特定しているが、全ての真実が明らかになって、コウが一人ほくそえむことだけは防ぐことはできる。
なんでも思い通りになると思って調子にのってる青二才も、たまには人から騙されてみるといいのだ。
終演後、メンバーには全て洗いざらい ぶちまけてやろう。
コウが未発表曲と引き換えに明の好みを尋ねてきたことも全部。


「さあ、ペイン様読み上げてくださいどうぞっ!」
コウがマイクを久納に寄せた。








「・・・・メイド」
バカなっ!メイドだと!!? やられた!一体どういうことだ!?
久納は自分の目を疑った。メイドのクジはさっき捨てられたはず。
だが、確かにクジには「メイド」と書かれている。


会場後方に注目が集まっている。
あの大人しそうな黒髪 長身の女性が、キョロキョロしながら動揺をしているのが酒井の後ろに見える。
久納の隣でカボチャタイツもオドオドしている。
「おめでとう!後ろの方にメイドさんいますよね!?
ステージ上がってきてもらってもいいですか?一緒に写真とりましょ、カボチャさんと!」
コウのアナウンスを受けて、スタッフが彼女の元へ駆け寄り、前へ促す。
メイドはステージに近づいてくるが、うつむいているので、やはりまだ顔はわからない。

振り向くと、久納と目が合ったコウは、やはり不敵な笑みを浮かべている。
こいつ~~~
声にならない声。久納の口は悔しさであべこべに動いていた。


ドリンクカウンターへ再び目をやると、カウンター内に見慣れた女性が。
不二子である。なんと久納の手元にある箱とそっくりな箱をラウンドガールのように得意げに翳しているではないか。
すり替えられたのか!?それも箱ごと!いつ?いつだ??
手作りのボックスであるが故に、この世で一つだと思い込んでいた。
だが、手作りだからこそ、同じようなものは誰にでも作れてしまうということか!?
あの女忍者め!!
そしてコウのやつめ!!




そうこうしている間に、あのメイドさんがついにステージに上がってきた。
「おめでとうございます!メイドさん!喜びの言葉をお願いします!」
コウがメイドにマイクを向けた。
「あ・・・ありがとうございます。
あの・・・ずっとペドノンヌのファンでして・・・」
会場が笑いに包まれた。
そして声を聞き、やっと顔を上げたメイドの正体がわかった。

「き・・・君!」
男だったのである。
女性用のトイレ前で張っていても現れないはずである。
彼は通称メタリカ君。ライブの時には必ずメタリカのバンTを来て現れるギターキッズ。
ペドノンヌがメジャーに行く前からの常連。静を街で捕まえては質問攻めにする男である。
思い返せばいつだって彼は上手側後方にいて、静かに楽しんでいる。
スリムで長身で、あのポジションに立っているという時点で気付くべきだった。
しっかし解せない!
ギターキッズの君が、なんでメイドの格好なんてしているのだ!
なんだ、よりにもよってメイドって!?メタリカが泣いてるぞ!!
メタラーのサラサラロングヘアーが憎い!
今日のような日こそ、浮かれたコスプレの連中に、君のような音楽ファンが鉄槌を下すべきではないのか!
シルバーのアクセサリーはどうした!?ヒラヒラのヘッドドレスなど付けおってからに!
ギターキッズならば、コウのアドリブの無さに、いちゃもんつけたっていいくらいだぞ!!
彼は最後にコウの方を向いて
「僕、CDのギターソロがすごく気に入ってるので、音源に忠実な演奏で、今日すごく嬉しかったです」
とコメントを結んだ。
そうきたか。君そっち派か。


会場は大盛り上がり。
メタリカ君はメイドの格好のまま 明とチェキを撮影し、満足げにステージを降りて行った。

しかし、ここからはどうするのだろうか?
明が「メイド」クジを見事に引き当てたということは、あの箱の中にはもう何も入っていないと考えるのが妥当。
テキトーな理由をつけて他のメンバーは辞退などとコウは言っていたが。。。


その時
「では、続いて遊さんも。そして俺もクジに参加します!
ボックス カモン!」
コウが指をパチンと鳴らすと、袖から不二子がモンローウォークで現れた。
手作りと思しき箱を両手に一個ずつ持っている。
そうか、コウは盛り上がる手段をあれこれと予め考えて準備していたのだ。
二枚も三枚も向こうが上手だったということだ。


久納は耳打ちした
「コウ、もしかして手品ってこれのことか?
お前には負けるよ」


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小説
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