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ペイン様番外編 ーjokerー 第6話

2016-10-23 18:21:32 | 日記
ペイン様 番外編 ーjokerー6






「いってらっしゃい!」
タナダは準備が整ったメンバーを見送った。
久納はコウの反応がどうしても気になり、メンバーに付いて袖まで出て行った。

明はローディーの力を借り、視界の狭いカボチャを被りながらも、どうにか持ち場にたどり着いた。
遊は、メンバーの準備が整うのを横目で確認しながら、その後のライブ情報などを告知していた。
コウも上手の持ち場に戻り、ストラップをかけて、調整を行う。







実は久納にも考えがあった。
実際に明に引かせるクジは「メイド」にするつもりなのである。

当然だがペドノンヌは出番の間、ステージを離れられない。
しかし、こちらはステージの袖にいようと、関係者席にいようと、控えにいようと自由なのである。
コウは明がカボチャ柄 リボンのクジを引いて、その子と並んだ瞬間、おそらく笑うのであろう。
しかし、今日こそあの生意気なコウの鼻を明かしてやろう。コウの見ていない所でクジをすり替え、明には「メイド」を引かせようという算段だ。
なぁに。ちょっとしたお遊びだ。




メンバーが位置に着いたのを見計らって、すぐに控えに戻る久納。
タナダも関係者席に向かったようで、誰もいない。
それでもなお、入念に周りを確認して、「カボチャ柄 リボン」のクジを取り出し、こっそりと「メイド」に入れ替えた。



だが、あのメイドの顔をどうにか確認できないものか?という思いが頭を擡げてきた。
雰囲気だけは明の好み そのものであるが、どうせコウの鼻を明かすなら、より確実な形で勝利する手応えがほしいものだ。
関係者の二階席からでは、ドリンクカウンター付近は見えない。むしろ真下に位置する。
控えや袖からも確認は困難。頼みの綱である酒井女史にもメッセージは正しく伝わらない。
そこで思いついた。
動くならアンコール前だ。どうせ自由の利く身なのだから、本編が終わったら、後方の扉から会場内に紛れ込んでしまえばいい。
本番中は客席は暗い。だがその間であれば、本番中より客席の照明も明るくなっているだろう。
ほんの一瞬 確認できたら すぐに戻ればいいのだ。
そうと決まった久納は、再び袖に戻った。







 本編の最終曲が終わったその瞬間、久納は翻ってダッシュした。
通路を走る間、「アンコール」の声が会場から漏れてくる。
会場の出入り口に回り込むと、すでに後方の扉から10~20人ほどの客が出てきていた。
タバコを吸いに出て来た者もいるようだし、女性の多くはトイレの方向へ流れていく。
「すいません、すいません」
と、彼らと逆流するように会場の中を目指す久納。
中にどうにか入ることはできた。すぐにドリンクカウンターのある右手を見たが、こちらもドリンクのために並ぶ列ができ始めていた。
小柄な久納は人波に飲まれながらも、背伸びしてメイドらしき人がいないかを確認しようとする。
メイドの彼女が先ほどまで居た辺りは、だいぶ人が入れ替わってきていた。
彼女らしき姿はない。
会場内をキョロキョロと見渡していると、やはりバレるもので、
「あ!ペイン様!ペイン様!握手して!」
と、顔に血糊付きの眼帯をしたセーラー服に捕まった。その格好に一瞬ギョッとした。
だが、彼女の衣装などまだ可愛いもので、その周りにいた全身を包帯でグルグル巻きにした仮装の男やゾンビメイクの集団もいて
「ペイン様」「ペイン様」と集まってきてしまった。動きのクオリティもそこそこ高かった。
「う~わ~!!!ごめんなさ~い!!」

泣きそうになりながら、会場の外へ飛び出した。
会場の外にいる客はまばらであった。
少し落ち着きを取り戻したところで、ふと閃いた。
もしかして最初の集団の中に紛れていて、いまトイレでメイクを直している最中ではないか?
トイレに向かう人々に目をやったが、長蛇の列になっており、角を折れた先がまだどれほど続くのか想像もつかない。
彼女は長身だった。居れば 目立つはずだ。
だが、トイレの前で待ち伏せするのもおかしな話。
どうしたものか。
周辺をうろちょろしていると、列の一番後ろに並ぶ妖精の格好をした女性がチラチラとこちらを確認しながら
「あの・・・こっち女性用ですけど?」
と、不審者にでも言うように低い声で注意した。
彼女もほとんど背を向けたまま、ほんの少し顔を振り向かせただけだったため、ペイン様であることは気付かなかったようだ。
「あ!ごめんなさい!」
そそくさと退散。
仕方なく、久納はまたダッシュで通路を抜け、控えに戻ることにした。
自ら客席に行って気づいたことは、コスプレで来ている人は実は案外少なく、全体の3割程度だったこと。
この感じだと、メイドの格好をした人も、ナースやカボチャ柄の服を着た人も、それぞれ一人ずつしかいないようだった。それも分かった。







控え室の扉を開けると、タナダが遊の顔を直していた。
明は被り物を脱いで、ドリンクを飲んでいる。
コウは汗を拭きながら椅子にもたれる。
クジのことが気がかりではあるが、まずはステージの感想を興奮気味に話す久納。
メンバーからも笑顔がこぼれる。



会話が途切れたその時、コウが尋ねる。
「アニキ、本編終わる直前まで舞台の袖にいましたよね?その後どこ行ってたんです?」
ギクリとしたが、素知らぬ振りをした。
「え、トイレだよ」
「嘘?そこの関係者用トイレに俺もすぐ行ったけど、会いませんでしたよね」
まずい・・・コウのやつ、何か悟ったのか?
「いや~、ほら、メンバーが使いたがるかなと思ってお客さんの方へいったんだよ」
「わざわざ!?どう考えたってあっちのが混んでるでしょ。まず遠いし。」
「いやあ・・・だって、その・・・し、知ってる人も来てたからさ!挨拶がてらね、うん」
「ふ~ん・・・」
「な、なんだいコウ君」
「アニキ、もう一個聞いていいすか?」
「お、おう??」
「公演中、ドリンクカウンターの方ばっかり気にしてませんでした?」
「え!いいや!?気のせいじゃないの!?」
「でっかいヤマンバの人に、なんか合図送ってた」
「あ、あれは知り合いなんだよ!順ちゃんがお世話になってて!」
「へ~。そうですか・・・」
口ではそう言いながらも、コウの疑いの眼差しは変わらない。
「そ、そうだ!俺、クジ書き直そうかな!
クジに書いたら盛り上がりそうな人、他にいた気がするし」
「え!?今更!?」
それまでくつろいでいた他のメンバーも振り返った。

「久納、俺たち もうそろそろ出るぞ」
「わかってます!超特急で書き直しますので!」
「おいおい頼むぞホント」
「すいません!」
全員の顔を見渡してから
「すぐ!ホントすぐに戻りますんで!タナダ、ペン貸して!」
タナダが筆ペンとメモ用紙を渡し、受け取ると慌てて駆け出そうとした久納。
「待って!」
コウが隅にあったボックスを手に取った。
「てことは、この中に入ってるクジはもう使わないんですよね?紛らわしいので捨てておきますよ?」
コウは一枚のクジをボックスから取り出した。
「おう、それでいい」
「了解」
コウは中身を開くことなく、クジをゴミ箱へ入れた。
そして、空になったボックスを少し離れた位置にいた久納に投げ渡した。
「そのまま持ってっていいですよ」
「お・・・おう」
箱ごと渡されたということは、後は任せたぞということなのか?
しかし考えている暇はない。久納はボックスとペンとメモ用紙を手に舞台の袖へ走った。





再び舞台袖の黒いカーテンの裏側に。
ドリンクを受け取った人も、トイレ休憩にいった人も、ほとんどが会場内に戻ってきている様子だった。
せっかく一度フォーメーションが崩れたというのに、例のメイドさんと酒井女史の立ち位置は、ほとんど元通りになっていた。
従って、相変わらず酒井女史に隠れてメイドの顔は見えない。
久納は、改めて別の人を書くと皆の前で言った。
だが、あそこまでコウに疑われてしまったのだ。おそらくコウは「カボチャ リボン」がダミーであることは見抜いている。
だが、酒井やその周辺を怪しんでいるだけで「メイド」こそが本当の狙いであることまでは気付かれていないはずだ。
とすれば、「メイド」以外の選択肢を選べば、少なくとも負けにはならない。
久納は紙とペンを置き、ポケットから「カボチャ リボン」のクジを取り出した。
これを再び箱へ・・・


次の瞬間、背後で物音がした。複数の足音。
振り返るとペドノンヌは準備を終えて出てきた。
想像よりも近くに迫ってきていたことと、先頭にいたのがコウだったことで、久納は少し面食らった。
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