SOK 「木の上で犬」

2018-10-31 12:54:58 | 日記
5-3 木東うたげ 
「木の上で犬」



私って、ホント物事の良いところばっかり見ちゃうんですよ。
会社のいいところだけ見て入社して、彼の家族の良いところだけ見て同居して。
そういう性格だから、得もいっぱいしてきたとは思うんですけど、
娘を真剣に守っていこうと思ったら、そうも言ってられないですからね。
良いところだけじゃなくて、ちゃんと問題がありそうなことには母親として目を光らせておかないと。


実は、ちょっと長いこと喧嘩してまして。今日のイベントでやっと梢と仲直りしたんです。
ころもさんがお忍びでイベントに関わることになったのよって自慢したんですよ。
しかも、うちのお店でって。
「周りの友達に内緒にできるっていうなら見に来てもいいのよ~」って、ちょっと意地悪な誘い方しちゃいましたけどね。
好奇心には勝てなかったみたいで、来てました。うちの子。
分かりやすいやつなんですよ。
「かーちゃん、すごいじゃん!」て言ってました。




喧嘩の原因は・・・まぁ、よくある話といえば、よくある話ですね。

離婚が成立してから、私たちは親子二人三脚で頑張ってきたんです。
前の職場は契約社員で入社して、頑張って正社員にまでなったんですけど、残業が長引いてしまうことも結構あって。
都合が合えば、ママ友が梢を預かってくれたりするんですけど、やはり毎日毎日というわけにもいきませんし。



あるとき、もう・・・限界かなって思うことがありまして。

学校から呼び出しがあったんです。
先生のお話によると、駅の裏に空き家があって、そこのガラスに向かって梢が石を投げつけてたそうなんです。
どうも 梢がひとりでやっていたわけではなく、一緒に中学生くらいの子が数人いたそうなんですけど。
ガラスが割れる音に気がついた近所の人に目撃されたとかで。
中学生たちは その場からすぐに逃げたそうなんですけど、うちの子バカなんで、学校と名前聞かれて素直に答えたらしいんです。



空き家ですから、誰かを傷つけたり、物を盗んだわけでもないですけど・・・。
それにしたって、うちの子らしくない遊びだなとは思いましたね。
もし・・・そこから悪い遊びがエスカレートして、空き家に火をつけたりとか?
取り返しのつかないようなことになってもいけないですし。
うちの子バカだから、相手してもらえると思うと、誰にでもついていっちゃうんですよね。

その「中学生」っていうのも、それまで梢と話していて聞いたことがなかったですし。
たまたま仲良くなって、一回遊んだだけだ と本人は言うんですけど・・・。
いつもだったら、その手のことは、梢と私の問題として話し合って 解決してたかもしれません。

でも、そのときはタイミングも良くなかったですね。
実は・・・その呼び出しがあった頃って、私も結構 精神的に参っていた頃でして。
仕事で責任が重くなっていた上に、かなり気難しい人が部下として配属されてきて、色んなことが同時に考えられなくなってたんです。
そんな時に、たまたま元夫から電話がかかってきて、梢が学校から呼び出されたという話を ポロっとしてしまいまして。
先程も 月に一度は、元夫と梢が会う機会を作っているとお話しましたけど、
呼び出しの件を 私が元夫に話してしまったすぐ後、二人の面会の日がきまして、例の石投げ事件の話になったそうなんです。
そこで、あの人 必要以上にキツく梢を叱ってしまったらしいんですね。


驚きました。
普段はと~っても温厚な人ですし、梢を叱っているのも見たことがなかったので。
養育費はもらっていますけど、離れて暮らしていることに負い目もあったようですし、彼は彼で、内心 色々と思うところがあったんでしょうね。
父親らしいところも見せなければ と思ったかもしれません。
でも・・・裏目に出ちゃったんですよね~。


それからですよ。梢との戦争が勃発したのは。
「なんで パパにわざわざ あの話したの!?」って。
「たまにしか会えないのに大目玉くらったし、
たった一回 通りすがりの中学生と遊んだだけなのに、普段から不良みたいなことしてると思われた!!
全部 かーちゃんのせいだ!!」
って、それはもう すごい剣幕で怒っちゃって。
近くにあったティッシュを私に投げつけきたんですよ。
でもバカだから、ティッシュの箱ごと投げればいいのに、ティッシュを一枚一枚抜き取って投げてくるんですよ。
全然 届かないし、痛くもなんともないし・・・。

・・・で、最後に一言。







「なんだよコレッ!!!」


いやいや、こっちのセリフだからそれは。
ころもさん、笑ってますけど本当なんですよコレ。実話ですから。




そんなしょーもない喧嘩が約1年前。そこから長い冷戦状態に入りまして。
そして、6年生に上がるタイミングになったとき、いよいよ回ってきたんですよ。恐怖のPTA役員が。

もう・・・無理。。
色々無理。。
すべてお手上げだと。
職場にも、仕事をセーブしたいと相談したんですけど。
小さい会社ですから、融通きかせてもらうのも難しくて。結果的に辞めることになりました。

これはもう、こういう運命なんだなと思うことにしました。
意地になるのをやめて、実家に帰ることにしたんです。


うちの母と私は、水と油みたいに性格が反対でして。
何事もハッキリさせたい母と、穏便に済ませられるならグレーのままでいいじゃないかという私と。
そんな感じで、子供の頃から母とは反りが合わなかったので、頭を下げるのは正直 良い気分ではありませんでしたね。
しょうがないことなんですけど。

家事の分担やら、細かい決まりごともそこで全部決められて。
出戻るための条件の一つに、どういう発想かわからないですけど、資格を取るように言われました。母に。
なので、家で医療事務の勉強を始めたんです。
仕事が終わってから机に向かうのって、最初はすんごくしんどかったですけど。
家に戻るための条件だったので、やるしかないですよね。だんだんと習慣になりました。
そしたら思わぬことが起こりまして。
二人で暮らしていていた頃、あんなに毎日毎日「宿題しなさい」って言っても聞かなかった梢が、自主的に机に向かうようになったんです!
ああ・・・そうか。
やっぱり親の背中を見て育つんだなって、こっちが教えられましたね。
横になってお煎餅かじってテレビ見ながら「勉強しなさい」って言っても、なんの説得力もなかったんですね。

忙しくただ働いてるだけだった時とは、違うコミュニケーションがとれるようになって。
それは私の両親の協力あって成り立つことですから、感謝しかないですね。
母は厳しいですけど、なんだかんだで父は私に甘いので、サポートしてくれますし。




梢と二人で机に向かってるかって?
ああ、いえいえいえ。そういうわけではないんです。
梢と私は、その時まだ冷戦状態でしたし。
梢は、私が独身の頃に使っていた部屋をいま使ってます。梢が部屋で静かにしているときは、おそらく漫画でも読んでるんだろうと思ってました。
でもね。いつだったか、あの子が教えてくれたんですよ。
「梢ちゃんは部屋で勉強してるから賢い」って。






あの子と最初に会ったときは、それはもう衝撃でしたね。
〝空き家に石投げ事件〟以来、梢には特別おかしな行動がなかったんですけど、帰りがいつもより遅い日がありまして。
遅いといっても、ほんの20分くらいのものだったと思うんですけど。
母親の性なんでしょうかね、心配になって探しに出ました。
近所の公園にいるのをすぐに見つけたんですけど、木に登ってたんですよ。
なんじゃそりゃと。

しかも、梢とあの子と二人で並んで、犬の遠吠えしてました。
いや、ホントですよ?これも。
本当に二人並んで、木の上で犬になりきってたんですから。



呆気にとられて、しばらく下から見てたんですけど、ようやく二人が私の存在に気がつきましてね。
梢が「あ、かーちゃん」て。
同世代のお友だちだと思ったら、案外大きなお友達だから、それもビックリしちゃいました。
高学年になる娘と大人の女性が、木の上で犬 ですからね。


そんな状態で、もう何て声かけたらいいものかわからなくて
「・・・あなた・・・悪いお友だち?・・・」
って聞きました。私の質問の仕方もおかしいんですけど。


そしたら、うちの子バカだから あの子に直接
「え!あなたは悪いお友だちなの!?」
って聞いたんですよ。
面と向かって聞くことじゃないだろうよ とは思ったんですけど。
でも もっとビックリしたのが、今度は あの子の方から梢に
「え!私は悪いお友だちなの?」
って聞き返してきて。最終的には二人で
「お母さん、私たちは悪い友だちなんですか?」
って聞いてきたから流石に
「もう ええわい!!」て。
もはやコントですよね。
いや、本当なんですよ、コレ。全部 実話ですからね。



まぁ、バカはバカなんだろうけど、悪い人ではなさそうだなと分かったので。
なんでそんなところで遠吠えなんてしてるんだ?って聞いたんですよ。
あの子は
「ゆうかってヤツに犬の真似をバカにされたから、ここで練習してるんだ」
って。
で、梢の方は
「ちょっと疲れたから人間サボってるんだ」
とか言ってました。お前でも疲れるのかと、そこには少々驚きましたけど。

「我々は同じ目的を持った仲間同士だから、邪魔せんでくれるかな?」
とか訳のわからんこと言われたんで、これは ややこしくなりそうな気配だなと。
ところが
「ご飯がもうすぐできるんだけど、あなたもよかったら食べていく?」
の一言で、あっさり木から降りてきました。
あの子たちホントに単純ですからね。




基本的にうちの両親は、連れてきたお友だちには友好的な人たちです。
梢の友だちって聞いたら、喜んで迎え入れてました。

でね。みんなで食卓囲んだときに、あの子が仏壇に興味を持ったんです。
「こういうのの でっかいヤツ持ってる人いるでしょう?」
って言うから、最初なんのことかよく分からなかったんですけど、父が
「お寺のこと言ってるんじゃないかな?」
ってピンときて。
それが どうも当たっていたようなんです。
「オテラ?オテラは恋愛しちゃいけないの?結婚しちゃいけないの?」
っていう疑問を何故かあの子は持っていて。
何がきっかけなのか、そう思ったらしいんですね。だから
「そんなことはないと思うよ。
結婚して、子どもを生んで、その子がお寺を継いで、そうやって子孫が代々受け継いでいくっていうのが
現代のよく見るお寺のスタイルだよ」
って、私の父が教えてあげたんです。

「私の知ってるオテラは、恋愛できないって言った。修行に行くから」

そういうことだったんですね。あの子、お寺の人を好きになって、告白したけど振られちゃったみたいで。


だけど父がすかさず、
「その修行っていうのは、一生続けるものなのかい?」
って聞いたんです、あの子に。
あの子もよく分かってないみたいでした。

私たちもそれ以上詳しいことは分からないんで、なんとも言えなくて。

ただ、その修行が一生かかるから、女性にはそもそも興味を持たないっていうのと、
修行が数年かかるから、待っててもらうのは申し訳ないという気持ちがあって断るのと、
体良く断るための口実として修行に行くって言ってるのと・・・
結局 本当のところは本人にしか分からないなぁ・・・。
真実はなんなのかで、意味が全然違ってくるんだろうなぁ・・・と漠然と浮かんではいました。

そこで梢がね
「一生なのか、数年なのか、確かめてから決めたら?」
って言ったんですよ。
あんな絶妙なタイミングであんなに気の利いたこと言える子だったなんて、親の私でも知りませんでした。
うちの子、意外と賢いのかもしれないわって!


あの子も目がランランと輝いちゃって、ご飯をすごい勢いでかき込んでからバッと立ち上がって
「おっしゃ!子孫作れるかオテラに確かめてくるわ!!」
って出て行きました。
出会った初日が いきなりそれですからね。衝撃もいいとこですよ。
それだけ騒いで、結局その日は会えなかったらしいですけどね。




そこからまさか、ああいう展開になるなんて、まさか まさか。。。
ジャンル:
小説
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