(4巻は2007年発行)
これは青春群像・・・とでも言うのだろうか?
この作者はフランス革命あたりを題材にしたもの、日本の大奥を題材にしたもの、或いは日本の普通っぽい家庭もの・・・BLだったり、そうでなかったり、う~~~ん、考えてみると実に多種多様なものを描いてますね~。
これは、高校生が普通に高校生活を送っているという作品。
もちろん、よしながふみが描くのだからちょっと普通ではないけどね。
でも、恋の話や友達の話、家族の事、勉強の事・・・取り上げてる題材は”普通の高校生”。
それなのに、よしながふみが料理するとちょっぴり違う味付けになるんですね。
実に不思議です。
キャラも身近にいそうでいない・・・いや、いなさそうで実はいるかも?って思ってしまうような・・・
現実か虚構かのギリギリボーダーライン???
こういう感覚が不思議な魅力となっているのだろう。
「フラワー・オブ・ライフ」というタイトル・・・さほど気にしていなかった。
主人公が<花園春太郎>だから、それにかけているっていう程度にしか思っていなかった。
しかし・・・4巻にflower of lifeの文字が出て来る。
He died in the flower of life.
彼は若い盛りに死んだ
白血病が完治していると思っていた春太郎だったが、
実は一割の人間が5年以内に白血病が再発して死ぬっていうことを姉から聞かされる。
冷静を装い、英語の辞書を見る春太郎。
そこで偶然目に飛び込んでくる例文がこれ・・・”He died in the flower of life.”なのだ。
友人達との思い出が頭によぎる。
涙が溢れてくる春太郎。
「嫌だ
死ぬのは嫌だっ…!!」
こういう心理表現が実に上手い。
次の日の春太郎のセリフも実に泣ける。
「フツーの何がいけないんだ
俺は普通がいい!!
普通の高校生で
普通に恋愛して
普通に失恋して
普通に恥かいて
普通に普通の人間には
なりたくないと思いたい!!
俺はお前みたいに普通になりたい!!
お前がうらやましい…」
このセリフを言うに至る経緯などもう少し、詳しく言いたいところだけど、ネタバレになるからこれ以上は言わない。
いいシーンがいろいろあるのだが、ラストのみを紹介してみる。
(ネタバレ注意)
204・205ページ
ぱっと見ると一つのコマに見えるが実は二コマ。
204ページは三国翔太と花園春太郎が画面向かって左方向に向かって歩いている姿を横から描いている。
これは<左方向>でなければいけない。
彼らは前(未来)に進んでるのだから・・・。
日本の漫画の場合、右から左に進むから左は未来を表している・・・と思うのよね。
この話のタイトルページで三国と花園と真島が右向きに歩いてるのは、この話のラスト集大成ということで今回の話は<総まとめ的な話>ですよ・・・って事なんです。たぶん・・・。
いや、ただ単に作者が左利きだからこっち向きのほうが描き易いだけ?(笑)
205ページは春太郎ひとりだけ。
実は最初ぱっと見て、真島かと思ったんだけど、メガネもないしやっぱり春太郎なんですよね。
204ページからどんどん歩いて、三国は画面からはみ出して春太郎が残ってるという表現なんですよね。だから次の見開きには桜の花びらとFinの文字しかないのです。
・・・で、205ページの春太郎をよ~~く見て欲しい。
204ページに比べるとわずかに胸を張ってるのです。
それが、春太郎のこれからの生き方を暗示してると思うのです。
作者の細かい気配りがいいですね~。