本の迷宮

漫画感想ブログです。「漫画ゆめばなし」(YAHOO!ブログ)の中の本の感想部分だけを一部ピックアップしています。

夢幻紳士 逢魔篇 (高橋葉介)

2007-10-15 19:48:32 | 漫画家(た行)
(2006年発行)

「夢幻紳士 幻想篇」の最終頁からそのまま続いている。

夢幻魔実也氏はず~~~~っと料亭で酒を飲んでいるだけ。
そこへいろんな妖怪が現れては退治されるという話。
普通<妖怪ハンター>は旅に出て、その途中で妖怪に出くわすっていうパターンが多いと思うが、流石は魔実也氏。一筋縄では動かない。(笑)

まったりと纏わり付くような美しい線に魅了されながら、魔実也氏と奇妙な世界に浸る事の出きる快感!
彼の妖しげな瞳に見つめられるともうこの世界から抜け出す事が出来なくなってしまいます。

是非一度、場末の料亭で魔実也君と一晩中一緒にお酒を酌み交わしてみたいものです。


夢幻紳士 幻想篇 (高橋葉介)

2007-10-13 23:30:31 | 漫画家(た行)
久しぶりの魔実也君。(この文章は2005年に書いてたものです)
ちょっと私好みの感じになってきたので非常に嬉しい。
流れるようなタッチも、一時期私好みからちょっと離れてきた時があって心配していたのだが、昔のタッチとはちょっと違うが、前以上に良くなってきたような気がする。

表紙のタッチもいい。
最初のカラーページも良い感じ。
ちょっと天野喜孝の「吸血鬼ハンターD」のイメージと似ているような気がする。
黒服、黒帽子の男って私は大好きなのです。

ストーリーも結構いい。
今までとは少々趣向を変えたところがいい。

「夢幻紳士」は、この作者のライフワークらしい。もっともっと続けて欲しい。

宗像教授異考録 第三集 (星野之宣)

2007-10-12 12:24:49 | 漫画家(は行)
(2006年発行)

この表紙の宗像教授の鬼気迫る形相!!
いいですね~~~♪
惚れ惚れしてしまいます。

今回も宗像教授はカッコよくて、渋くて、いい男♪
かなづちで泳げなくて女性(忌部)に助けられるのも可愛い!
そして、その後寒いと言う忌部にコートを与えて、
「これで貸し借りなしだぞ」
なんてセリフを言う教授もとっても可愛い!
まあ、要するに何をしても教授は可愛いのです♪(笑)

教授はいつも同じ服、同じコートを着ているのかと思ったけど違うんですね。
「人穴」では、助けの合図のために服を燃やしているし、
「鬼の来た道」では、コートがビリビリに破けてしまってるし、
「神在月」では、コートと帽子は横月さんが持っててくれたから大丈夫だったけど、木の下敷きになった時にたぶん背広はかなり痛んだのではないかと・・・。
こういう風に見ていくと結構教授の服はすぐにボロボロになってるみたいだから、たぶん同じような背広やコートをいっぱい持っているのでしょうね。
この事に気がついて、連想したのが「パタリロ!」(魔夜峰央)
パタリロもいつも同じ服みたいだけど実は同じようで微妙に違う服をいっぱい持ってるんですよね。



宗像教授とパタリロが似たもの同士だったなんてちょっと面白い。(笑)


宗像教授伝奇考 (星野之宣)

2007-10-11 19:02:00 | 漫画家(は行)
宗像教授・・・格好いい!!・・・と言うと、たぶん子供達に「お母さん好みのハゲだもんね」・・・と言われそうだが、ハゲだから好きなのではなくて、好きなのがたまたま「ハゲ」だというだけなのです。
三つ揃いに黒いコート(ああいうのって何て言うんだっけ?)帽子にステッキ、そして鼻の下にヒゲをたくわえている。体型も大きくて、いかつい顔。
・・・もう最高!!モロ私の好みのタイプです。もちろん、性格も私好み。頭が良くて、冷静沈着。行動力もある。いう事ないですね。

ストーリーは流石、星野之宣!豊富な知識量に奇想天外な解釈を加えて、面白い読み物にしている。
専門家に言わせると、「学会に発表するとかなりつっこまれますよ」てな事になるんでしょうけど、つまらない真実よりもよく出来た嘘の方が面白いんですから、これでいいんですよね。

宗像教授の帽子の下には勿論、毛はありません。(笑)
禿げた為、毛がないのか、あるけど、剃っているのか、それは判りませんが、男は髪の毛があってもなくても構わないのです。
バーコードにするぐらいなら、思い切って剃ってしまった方が格好いいと思うのですが、どうでしょう?
アップにしても結構いい男なんだけど、似顔絵を敢えて全身にしたのは、トレードマークともいえる、この姿がとっても素敵だからです。

頭が良くて、深い考察力、洞察力があり、優しいし、食べるのが好きで、もぐもぐ何かを食べているところなんて可愛くて最高!性格も、ちょっと天然っぽいところもあったりして、言う事なし!っていう感じ。
とにかく、一言で言えば渋くて素敵な大人の男・・・でしょうか?

雲を殺した男 (今市子)

2007-10-10 20:13:03 | 漫画家(あ行)
(2005年発行)

<裏表紙の説明文より>
水のない国では、遠くはなれた地に
水乞いの儀式をする習わしがあった。
雲竜が棲むといわれるその国では、竜使いがおり
雨をもたらしてくれるというが・・・・・・。
表題作「雲を殺した男」他3編を収録した
壮大なるオリエンタルファンタジー傑作集。


「岸辺の唄」に続く水乞いシリーズ第二弾。

今回は水がない国だけでなく、水が多すぎる?川が氾濫する国の話なんていうのもある。
流石に、水乞いだけでは話のネタも尽きたか・・・?(笑)
まあ、とにかく人間にとって水っていうのは切っても切れないものだってことなんですよね。
私の住んでいる四国は時々水不足になったりします。
幸い今年は大丈夫だったけど、雨が降らない日が続くと、必ず
四国の水がめと言われる早明浦ダムの貯水率のニュースが流れるんですよね。
そして、どんどん貯水率が下がると、ダムを造る時に沈んだ村役場が水の中から顔を出してくるのです。

ダムって造る時に村とか沈んでしまうんですよね。
私のご先祖様のお墓があった所も30年以上前だけど、某ダムを造る時に沈んでしまいました。
自分が住んでいる所が沈んでしまうって哀しいでしょうね。
ああ、こういうテーマでもひとつお話が作れそうですね。(笑)


いつものことだけど、今市子のカラーイラストは美しいですよね。
今回の表紙もいい。
こういう淡い色調のタッチは実に素敵です。

山へ行く (萩尾望都)

2007-10-09 12:41:12 | 漫画家(は行)
(2007年発行)

この本を読んでの最初の感想は・・・
やっぱり萩尾望都はすごい!大御所中の大御所だね・・・。
っていう感じだった。

これに収録されている「山へ行く」は雑誌掲載時に本屋で立ち読みしていたのだが、その時の感想は、
良質の演劇を観たっていう感じだった。

「山へ行く」のあらすじは、一言で言うと、主人公が山へ行きたかったのに行けなかったという話だ。(笑)
この「山」っていうのは別に「海」でも「川」でも「湖」でもいいのだと思う。
いや、自分の部屋の中でひとり好きな音楽を聴くのでも好きな本を読むのでもいいのだと思う。
<日常生活からの脱却>が出来ればいいのだ。
ああ、そういえば、この本のサブタイトルは「シリーズ ここではないどこか」だった。
その通りなのだ。
ここではないどこかに行きたかったのだ。
それなのに、いろんな日常の出来事に煩わされて結局「山へ」行けない。

多くの人間はたまには日常の生活から脱却して、自分ひとりだけの落ち着いた空間に浸ってみたい・・・と思っているのではなかろうか?
そういう<想い>がここで表現されているように思える。

家族内の何気ない一コマ。
みんなそれぞれバラバラに好き勝手しゃべっていながらそれはそれで何となく会話が通じている状態。
普通の家族の普通の朝の光景・・・これを見事に表現するっていうのは結構難しいと思うのよね。
何気なさをさらりと描いてるけど、こういうところ、かなりスゴイです。

・・・で、ちょっと気になったのが<手袋>。
手袋を無くしてつぶやく生方。
「今日はもう・・・やめようかな・・・
山に行くの・・・
手袋もないし・・・」

手袋がなければ行けないような山ではないのです。
その証拠に次のページでは、さっき自分が思ったことを忘れたように、
「もう山へ向かう道だ・・・
あと少しだ
頂上へ着いてもちょっとしかいられないだろうけど・・・・・・」
なんて事を言ってるのだ。

次の話「宇宙船運転免許証」では<手袋>が重要な小物として使われている。

そういえば、このシリーズではないけれど「完全犯罪」でも<緑色の手袋>は非常に重要な小物だった。
ただ単に手袋を小物として使ったのかもしれないけど、何か作者の秘められた意図があるのかな~?ってフト思った訳です。


「メッセージ」で登場する少女。
まるで「ポーの一族」のメリーベルのような髪と衣装。
でもね・・・最近の絵ではどうしてもあの頃の絵の雰囲気は出ないんですよね。
まあ、それは仕方ないんですけどね。

家族に嫌われていると思っている少女が首吊り自殺をしようとしてひも?が千切れて地面に倒れてるところにやってきた男性。彼は言う。
「あなたを愛しています
あなたはすばらしいひとです・・・」
何度も何度も「あなたを愛しています」
と言う見知らぬ黒いマントの男性。
ラスト・・・少女は思う。
わたしこれから
眠れない夜はあなたのことを思い出すわ
そしてあなたのメッセージをだきしめるわ
ありがとう

生きる事に絶望した時に・・・こういうメッセージを貰えるといいんだけどね・・・。




「メッセージⅡ 貴婦人」では、同じ男性が同じような内容の事を<貴婦人>に語りかける。
その貴婦人は神を信仰していて自分もみんなに親切にしようと思っている。
「わたくしみなさまに親切にしてさしあげたいの
そう考えるとなぜか涙がこぼれますわ
たくさんの愛をさしあげたいの」

ところが、男性の右手が青い手だとわかった途端、態度を一変する。
「あなたは神の罰を受けているのではなくて?
その手は罪の証なのではなくて?」
・・・で、ラスト、黒いマントの男性を追い出してつぶやく貴婦人。
「怖かったわ」
同じページ左半分には、
男性は一人高い岩?の上で顔を手で覆ってしゃがみこんでいる光景。

こういう貴婦人のような人って多いと思うのよね。
自分は正しい。自分は優しい。自分はなんていい人なんだろう!・・・って信じている人。
でも、それは単なる自己満足でしかないのだ。
この貴婦人も、黒マントの男性に対して実に残酷なことを言い、非情にも追い出してしまったではないか。
貴婦人のセリフ「怖かったわ」・・・は、右手が普通ではない男性が怖かったというだけの意味なら単にそれだけの浅い人間。
もし、ここで貴婦人が自分の偽善に自分で気が付いてそういう自分自身が「怖い」と言ったのなら・・・実に深いんだが、果たして・・・?


「柳の木」では定点にいるものがいて、それは変化しないのに周囲が変化するという手法。
こういう手法で描かれたものは他にもあると思う。
今、すぐに思い出せるのは「宵闇通りのブン」(高橋葉介)の「パパを待つ」。
こういう手法は演劇的な感じがするから、もしかすると演劇にこういうのがあるのかもしれない。
・・・で、ここでは柳の木の生長と少年の成長、それをず~~っと見守る女性。
ラストがいいですね。余韻を感じます。

天崩れ落つる日 (諸星大二郎)

2007-10-08 19:07:28 | 漫画家(ま行)
(1997年発行)

ゼピッタのシリーズや怒々山博士のシリーズなど、馬鹿馬鹿しくてナンセンスな作品を集めた本。

どれもこれも諸星流のナンセンスで面白い。
怒々山博士の顔なんて一番最初に登場してきた時は、
<少女マンガ家と劇画家とギャグマンガ家の合作キャラクターなのだ>
・・・と説明されてるが、とにかくそういう感じの顔だ。
ただ、後の作品になると、怒々山博士の顔も普通のおっさんの顔になってきてちょっとつまらない。あのめちゃくちゃ変な顔が良かったのに~!(笑)


シリアスなものからコメディ・・・そしてこういうナンセンスなものまでどれも諸星ワールドで描ききっているところが流石だな~~って思うのよね。

皇妃エリザベート (漫画:名香智子 原作:ジャン・デ・カール 監修・解説:塚本哲也)

2007-10-07 19:54:29 | 漫画家(な行)
(2001年発行)

<カバー裏表紙の説明より>
19世紀半ば、隆盛を誇る名門ハプスブルク家の若き当主、オーストリア帝国皇帝フランツ・ヨーゼフは、バイエルンの公女エリザベートに出合い、電撃的な恋に落ちる。
身分的には何の問題もなく見えたこの結婚は、自由を愛するエリザベートの個性によってけっして幸福とはならなかった。
しかし全ヨーロッパを魅了したこの美貌の皇妃と、彼女の苦しみを深く理解し愛した皇帝との物語は、時代を超えて人々の心を打ち続けている。
華麗なタッチで綴る歴史絵巻!!



水野英子の「エリザベート」は孫娘の方だが、こちらはシシィ・・・おばあさまの方である。
名香智子はお貴族様を主人公にした漫画をよく描いてるから、こういう華麗でゴージャスなものを描くのに最適である。
・・・が、水野英子と比較すると、水野英子の方が<歴史>に重点を置いてるのに対し、名香智子の方はどちらかと言うと人間心理とでも言うか、夫婦間の想い、嫁姑の葛藤その他・・・エリザベートを皇女として、というより、一人の女性として描かれているような気がする。

歴史に翻弄される女性として見るか、一人の女性として見るか・・・それは作者の好みであり読者の好みでもあるから、どちらがいいとか悪いとかいう問題ではない。

とにかく・・・日本の一庶民には想像も出来ないような世界があるんだな~と思うばかりである。(笑)

仮面少年 (高橋葉介)

2007-10-06 19:10:49 | 漫画家(た行)
(昭和54年発行)

<カバー折り返し部分の説明より>
退屈でうす汚れた現実も、ヨウスケのペンにかかるとたちまち美しい花園に変わる。
現実から遊離したこの幻の世界にこそ、われらが求める”豊潤な遊び”の魂(こころ)がある!
虚構(フィクション)の花々が咲き乱れる”奇妙な世界パートⅡ”。



この表紙の絵が好きだ。
初めて見た時もとっても好きだったが、今見てもやっぱり非常に魅力的。
流れる線、不思議な眼差しの少年。実にすばらしい!
こういうタッチがどんどん進化して、今の夢幻魔実也(大人版)になったのかな~とも思う。


この本には「我楽多街奇譚」「江帆波博士の診療室」「触覚」「新しい人形」「惑星LOVFの崩壊」「仮面少年」「ハイ、オカアサマ」「荒野」が収録されている。
かなり久々に読み返したのだが、ほとんど覚えていた。
これを買った当時、何度も何度も繰り返し読んだ賜物だろう。
近頃はたいてい一度しか読まないことが多いせいか、数年前に読んだものを読み返すとほとんど内容を覚えていない。
それとも・・・昔のことは覚えてるが最近のことは覚えていないって・・・年のせい?(笑)


この中で「荒野」がかなり記憶に残っている。
本屋で雑誌の立ち読みをしていて、この作品に何故か衝撃を受けたから強く印象に残っているのだ。
多分、その時に初めて<高橋葉介>の作品を読んだのではないだろうか?
作品全体を覆う雰囲気、独特の線、少年の魅力的な目、・・・そういうものに一目ぼれをしてしまったに違いない。
今読むと内容は”若いな~”って思うけど・・・でも、それはそれでいい・・・と思う。
若いときはこういう若いストレートなものを描くのもまたいいと思うのだ。


ライヤー教授の午後 (高橋葉介)

2007-10-05 15:28:37 | 漫画家(た行)
(昭和55年発行)

<カバー折り返し部分の説明より>
ふしぎなふしぎな物語。
奇抜な発想、ブラックな味覚、鋭いエスプリ・・・
ヨウスケの豊潤な感覚が、あなたをえもいわれぬワンダー・ランドへとお招きする。
トロリとした美味が、あなたの日常を鮮やかに生き返らせる!


高橋葉介の初期の作品。
この頃の筆のタッチの素晴らしさは、今読み返しても全く色褪せていない。

不思議で魅力的な葉介ワールドを表現するのには、この筆のタッチが最適だろう。
普通のGペンなどでは逆立ちしたってこの雰囲気を表すことは出来ない。

こういうのはナンセンスコミックとでも言うのかな?
とにかく発想がすごい!
心臓をペットにしたり、首が売り買いされたり、目玉や口や耳が勝手に動き出す世界。

キャラも実にいい!
ミリオン少年は可愛いし、
ライヤー教授もとぼけた味わいがあるし、
何と言っても猫婦人が最高にいい!!!

美しく、妖艶で、自分勝手で、わがままで、残酷で天然・・・。
この後「夢幻紳士」(冒険編)で、魔実也くんのおばさんとして登場してたけど、作者も結構このキャラが気に入ってるのではなかろうか?

ラスト、ミリオンがつぶやくセリフがいい。
まあ、色んな所で色んな人が同じような意味のことを言っているから、目新しいものではないんだけどね。



いま僕のいるこの世界が
夢じゃないなんて誰がいえる?
いまこの瞬間僕をゆり起こす者が居ても不思議じゃない
そうしてまた別の悪夢が始まるのさ
悪夢なら悪夢でその中をせいいっぱい生きるよりしかたがないんだ……

宵闇通りのブン (高橋葉介)

2007-10-04 19:33:26 | 漫画家(た行)
(昭和55年発行)

<カバー折り返し部分の説明より>
心のさみしい人たちが、ひっそり暮らす宵闇通り。
皮肉な笑いの仮面の下に、生きる哀しみ隠して生きる。
狂気と笑いが暴発する非現実の空間を、ユニークな発想であぶり出す高橋葉介の奇妙な世界。



「宵闇通りのブン」に出て来るブンは毎回、物語の最後に
「ばっかみたい」とか「ばーか」というセリフを言う。

「ばっかみたい」とか「ばーか」などという言葉はあまり好きではない。
特に自分自身が何にも考えずに何にでもとにかく「ばーか」と言ってるような類の人間には
「ばかって言う方がばかなんだよ!」
・・・って、言い返したくなる。(笑)


このブンの言う「ばっかみたい」というセリフ。
皮肉な笑いの仮面の下に、生きる哀しみを隠している・・・そういうセリフだ。
単なる薄っぺらいセリフではない。

だから、そのセリフを言うことの出来ない物語もある。
「One Man's Ceilling is Another Man's Floor」が、そうだ。

人々に笑いものにされても、ひとりで愛と平和を説いて歩く老人の話である。
ある日老人はビルを悪魔がけり倒しに来ると言われ、人々を救うために一晩中ビルが倒されないように壁を両手でしっかりささえ続けるのだ。
それが原因で老人は死んでしまうのだが、最期にブンにこういう言葉を遺す。

「わしが死んだら誰が・・・・・・
誰が人々のために祈るのかね?
誰が人々のために愛を説くのかね?
誰が人々に救いをさしのべるのかね?
いったいこの世の何人が選ばれた者として箱舟に乗れるだろう?
わしゃそれだけが心配だよ・・・・・・」

この老人にはブンは何も言わない。
ただ、心配そうに哀しそうに老人を見つめるだけだ。
くさ過ぎるぐらいくさい話なのかもしれないけれど、何となく心に残る話。



「将軍大いに語る」では、ブンは実に可愛いメイド服を着ている。
肩のフリルが大きくてまるで羽のようにも見えるエプロンだ。
これは1980年の作品だが、今流行のメイドの元祖って言えるかも?(笑)
いや、元祖はやっぱり吾妻ひでお???
ま、どっちにしても、どちらも可愛い♪


フラワー・オブ・ライフ (よしながふみ)

2007-10-03 07:01:31 | 漫画家(や・ら・わ行)
(4巻は2007年発行)

これは青春群像・・・とでも言うのだろうか?

この作者はフランス革命あたりを題材にしたもの、日本の大奥を題材にしたもの、或いは日本の普通っぽい家庭もの・・・BLだったり、そうでなかったり、う~~~ん、考えてみると実に多種多様なものを描いてますね~。

これは、高校生が普通に高校生活を送っているという作品。
もちろん、よしながふみが描くのだからちょっと普通ではないけどね。
でも、恋の話や友達の話、家族の事、勉強の事・・・取り上げてる題材は”普通の高校生”。
それなのに、よしながふみが料理するとちょっぴり違う味付けになるんですね。
実に不思議です。

キャラも身近にいそうでいない・・・いや、いなさそうで実はいるかも?って思ってしまうような・・・
現実か虚構かのギリギリボーダーライン???
こういう感覚が不思議な魅力となっているのだろう。

「フラワー・オブ・ライフ」というタイトル・・・さほど気にしていなかった。
主人公が<花園春太郎>だから、それにかけているっていう程度にしか思っていなかった。
しかし・・・4巻にflower of lifeの文字が出て来る。



He died in the flower of life.
彼は若い盛りに死んだ


白血病が完治していると思っていた春太郎だったが、
実は一割の人間が5年以内に白血病が再発して死ぬっていうことを姉から聞かされる。
冷静を装い、英語の辞書を見る春太郎。
そこで偶然目に飛び込んでくる例文がこれ・・・”He died in the flower of life.”なのだ。
友人達との思い出が頭によぎる。
涙が溢れてくる春太郎。
「嫌だ
死ぬのは嫌だっ…!!」



こういう心理表現が実に上手い。
次の日の春太郎のセリフも実に泣ける。
「フツーの何がいけないんだ
俺は普通がいい!!
普通の高校生で
普通に恋愛して
普通に失恋して
普通に恥かいて
普通に普通の人間には
なりたくないと思いたい!!
俺はお前みたいに普通になりたい!!
お前がうらやましい…」
このセリフを言うに至る経緯などもう少し、詳しく言いたいところだけど、ネタバレになるからこれ以上は言わない。

いいシーンがいろいろあるのだが、ラストのみを紹介してみる。
(ネタバレ注意)
204・205ページ
ぱっと見ると一つのコマに見えるが実は二コマ。
204ページは三国翔太と花園春太郎が画面向かって左方向に向かって歩いている姿を横から描いている。
これは<左方向>でなければいけない。
彼らは前(未来)に進んでるのだから・・・。
日本の漫画の場合、右から左に進むから左は未来を表している・・・と思うのよね。
この話のタイトルページで三国と花園と真島が右向きに歩いてるのは、この話のラスト集大成ということで今回の話は<総まとめ的な話>ですよ・・・って事なんです。たぶん・・・。
いや、ただ単に作者が左利きだからこっち向きのほうが描き易いだけ?(笑)

205ページは春太郎ひとりだけ。
実は最初ぱっと見て、真島かと思ったんだけど、メガネもないしやっぱり春太郎なんですよね。
204ページからどんどん歩いて、三国は画面からはみ出して春太郎が残ってるという表現なんですよね。だから次の見開きには桜の花びらとFinの文字しかないのです。

・・・で、205ページの春太郎をよ~~く見て欲しい。
204ページに比べるとわずかに胸を張ってるのです。

それが、春太郎のこれからの生き方を暗示してると思うのです。
作者の細かい気配りがいいですね~。

21世紀少年 下巻 (浦沢直樹)

2007-10-02 13:29:08 | 漫画家(あ行)
(2007年発行)

とうとう終わってしまいました。
8年かかりました。

最終巻、いい終わり方だと思います。
細かい部分、人によっては物足りないと思う人もいるかもしれないけれど、全体的には良かったと思います。
私は満足です。
これを読んだ直後は知らず知らずのうちにニヤニヤしてたようです。
ダンナに、
「何か嬉しい事でもあったの?」
・・・って、きかれてしまいました。(笑)
また、1巻から引っ張り出してきて読み返そうと思います。

ラストを読めて嬉しいけど、終わってしまってちょっと寂しいですね。
また、ドキドキ、ワクワク出来る作品を描いてくれることを期待しています。


わらってクイーンベル (一条ゆかり)

2007-10-01 19:03:38 | 漫画家(あ行)
(りぼん 昭和43年4月号~9月号掲載)

これはリアルタイムで読んでました。
一条ゆかりは、絵が綺麗で結構好きな漫画家だったのだけど、この作品で大好きになってしまいました!

理由は簡単。
ジュノに惚れてしまったんですよね~♪

主人公のクイーンベルやそのお相手のエルなどはどうでもよいのです。(笑)
プレイボーイでちょっぴり悪っぽい・・・そして優しいジュノ。

私が長髪ストレート金髪のキャラが好きになったのは、たぶんこのジュノからではないかと・・・。

ストーリー的には、孤児の女の子が実は大金持ちの家の子供だった・・・という実にありきたりなものだけど、豪華な家や華麗な登場人物・・・これぞ少女漫画の醍醐味っていう感じですね~。


この本に同時収録されている「ラブ・ゲーム」。
これも大好きだった作品です。
15歳の少年が20歳の女性を引っ掛けて、肉体関係を結び・・・
実はそれは、ある復讐のためで、最後に毒を飲んでベランダから飛び降りて自殺する。
・・・というメチャクチャ無理のある設定!!(笑)


でもまあ、少女の妄想の世界では、ちっとも無理がないんですよね~。
一条ゆかりの美しい絵で描かれると、何でもあり!・・・で、いいじゃないかっていう気持ちになってしまいます。

今だと簡単に自殺するような作品を描くのはどうか・・・なんて言われそうだけど、あの当時はそういうことは全然問題にならなかったのかな?


作者もこれを描いた当時は若かったし、読者も当然若い。
”死”・・・ってことにある種かすかな憧れが入ってたのかな~?
う~~~ん???
深く考えてしまうとなかなか難しい問題ですね。
でもまあ、こういう作品は、
現実と空想の世界は別物なんだって割り切って軽~く読めばいいのかもしれませんね。