本の迷宮

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四次元世界 (松本零士)

2007-04-12 08:45:34 | 漫画家(ま行)
(1969・1970年頃に描かれた短編集)

「男おいどん」が1971年ぐらいだったから、これらは松本零士が人気漫画家になる一歩手前といった頃の作品だと思う。

この時代っていうのは「高度経済成長」とかいって大阪万博があったり、日本中が浮かれていた時期である。
明るく文化的な暮らしになっていった人たちも多かったに違いない。
しかし・・・そこから取り残された人たちだっていた訳だ。

ある意味、その取り残された人々の悲哀を感じさせる作品でもある。

ただ、救いは彼らには「未来」があったという事である。

主人公たちは、ほとんどが「貧乏」で「ブサイク」で「短足」である。
美しい女性が現れても彼女たちは顔が良くて金持ちの男と去って行く・・・。というパターンばかり。
この「四次元世界」の1巻には同じパターンのものが非常に多い。
2巻になると多少パターンは変わるが根源は同じだ。


作者のあとがきから抜粋してみよう。
「自分自身にとっても四次元的なもの、というのがこの四次元世界シリーズである。
(中略)
良くも悪くも、すべての作品は自分の分身だと思っている。
その分身の中でも、四次元シリーズとして収録したものは、特に愛着のあるもので、恥ずかしい気がするというのは、これらの大部分が、ムキになっていた当時の意地の固まりであるからだ。」


『ムキになっていた当時の意地の固まり』・・・何となくわかるような気がする。
「未来」だけがある若者。
言い換えれば「未来」しかない若者。
暗く冷たい四畳半で必死に未来を夢見て頑張る青少年!!!

近頃の若者のほとんどはこういう体験などしたことがないのだろう。
冷暖房完備のワンルームマンションでお金の心配もせずに
ぬくぬくと生活している若者よ!!
もっと「苦労」してみろよ!!!
・・・と、つい言いたくなってしまう作品だ。(苦笑)


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