本の迷宮

漫画感想ブログです。「漫画ゆめばなし」(YAHOO!ブログ)の中の本の感想部分だけを一部ピックアップしています。

TOMOI (秋里和国)

2007-10-28 13:15:26 | 漫画家(あ行)
「眠れる森の美男」の続編。

日本が舞台のものと、ニューヨークが舞台のものと、パキスタンが舞台になってるのと三つに分かれている。
最初の日本が舞台になっているのは、ま、悪くはないのだけど、あとの二つの話の方が面白い。

マーヴィンの妻のナンシーが逆上して友井を撃ち殺しに来る展開は、ちょっと強引すぎる気もしないわけではないが
…マーヴィンと友井の「おだやかな空気の流れている」ような感じの雰囲気が、とってもいい。

友井を庇って死んでいくマーヴィンを抱きしめる友井の表情、
涙を流しながらつぶやくように歌う「もーろびと こぞーりーて むかーえ まーつれー」は、その、友井の歌声が本当に耳元で聞こえてくるような気さえする。

死ぬ間際、マーヴィンが「地獄へは堕ちるな」と、言い残したため、
自殺の出来ない友井は死ぬために戦場に行く。
しかし、アメリカから来たカメラマンのスミスに
「人は 神がもう死んでもいいというまで 生きなけりゃだめなんだ!!」
と、言われる。
その言葉に少し心を揺さぶられた友井だったが、そう言ったスミス自身はその後爆撃で死んでしまう。

「神がもう死んでもいいと いったのかっ」
と、スミスの遺体に向かって叫ぶ友井。
…この部分、映画「ポセイドンアドベンチャー」で牧師がこんな感じで叫ぶシーンがあったよなー、って思ってしまったが、どちらも非常にいいシーンである。

兄の死を目の当たりにしたアデルは声を失う。
友井はアデルとの生活の中で「空が青い」事に気付く。

「ああ ほんとだ 空が 青い」

そして、「生きたい」という感情が芽生え始める。

そこでね、無事帰ることが出来ました。めでたし、めでたし、…で、終わればいいのだけど残念ながら、そうは問屋が卸さない!
そうです。感動する話にする為には悲劇で終わらなければならないのです。

爆撃を受けて、友井から貰った指輪をしているアデルの引きちぎられた腕が、友井の目の前に無残に転がっている。

「神よ!もう…
死んでもいいですか
ああ
きょうも
空が……青い」


ああ、もう悔しいが、こういう展開は好きなのだ。
よくある展開だが、好きなのだ。
水戸黄門で印籠が出てこなくちゃいけないように、こういう話はこういう風に終わらなくちゃいけないのだ。


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2 コメント

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持ってます~! (母宮)
2007-10-31 11:49:52
文庫で買ったので、「眠れる森の美男」から入ってました。
友井はただ、穏やかに幸せになりたかっただけなのに。。
マーヴィンはAIDSにかかり、妻の糾弾に倒れ、
友井は、戦地へ
そして、最後の台詞がせつなくって、、。
秋里さんはゲイの話も結構書いてますが、
このお話は悲しいです。
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本当に悲しいですね。 (ちと)
2007-10-31 16:58:00
何故か心に残る作品です。
どちらかと言うと、私はハッピーエンドの方が好きなんですけどね。これに関してはこのラストが一番いいと思うのです。
切なくて胸がきゅんと締め付けられるような・・・そんな感じがいいのかな~?
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