映画のせかい

私が最近見た映画 ※ネタバレあり

地獄の黙示録 #274

2005-03-29 | さ行の映画
1979年 アメリカ 153分(特別完全版203分)

夕焼けのオレンジの空。爆発する炎の黄色。薄暗い夜の闇。川面に写るそれぞれの景色に反し、川の流れは妙に美しい。夜明けのジャングルの青。発炎筒の紫。朝霧の白。多様な色が幻想的に現れると共に、風景そのものがうなされた悪夢のようで、ベトナム戦争の狂気を反映している。この後の戦争映画ではこういう手法の元、なんだかよくわからないけど狂乱さが伝わるというものが多くなったが、映像が伝える迫力ではこの作品もいまだ上位に位置するだろう。

カーツ大佐を追うウィラード大尉(マーティン・シーン)と4人の部下を乗せた河川巡視艇はナン川を上っていく中で、途中で立ち寄るいくつかのエピソードから構成されている。

「ワルキューレ」に乗って登場するヘリ部隊から出てくるのはキルゴア中佐。銃弾が飛び交う中、サーフィンをやれと命じ、部下が逃げていく。
「スージーQ」に乗せて踊る慰問したプレイメイトは、燃料と引き換えに兵士とヘリコプターの中でSEXに興じながら、悩みを打ち明ける。
フランス軍の停留地では冷静にアメリカ軍の動きを分析される。

奥に行くにつれ、陸地からの攻撃は激しさを増し、一人また一人と巡視船の部下が倒されてしまう。そしてついにカーツ大佐の住む帝国へ到着する。

ジョセフ・コンラッドの小説「闇の奥」を映画化したものだが、「闇の奥」は戦争モノではない。ジャングルの奥地で帝国を作る主人公の話なのであるが、それをベトナム戦争と結びつけ、川を上がっていきながら、戦争の狂気を映し出しつつ、そこにたどり着くというストーリーにうまく変えている。カーツ大佐のモデルは日本におけるマッカーサーだとも言われるが、当てはめようと思えば誰でも当てはまる。私でもあなたでも・・・。主演のマーティン・シーン(当たり前だけど息子チャーリーそっくり!)を通して、映し出すカーツ大佐という人物像を想像を膨らませた上で、あのような形で登場してくるとは思いもよらなかった。マーティン・シーンの冷静であくまでも第三者的な視線は、この映画を見ている大多数の人々の視線でもあり得ると思うが、その行く先にあるのは、果たして滅亡か存亡か?