鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

09年5月30日は日本経済新聞が岐路に立った日

2009-05-30 | Weblog
 30日付けの日本経済新聞朝刊を見て驚いた。31面から35面まで「Uー29(29歳以下)」として特集を組んでいるが、そのうち3面にわたって劇画を掲載していたからだ。数日前に新しい「Uー29」面が始まるとは告知され、そのなかで劇画が掲載されるとは知っていたが、ここまで派手に扱うとは予想していなかった。日本経済新聞がかつて社会面に4コマ漫画を掲載していたことがあると思うが、最近は漫画を載せていなかったのに、突然、紙面いっぱいに劇画を掲載するとは思いきったというか、経営陣のセンスが狂ったとしか言いようのない”英断”である。いかに広告のつかない土曜日の紙面とはいえ、自ら紙面を汚す振る舞いではなかろうか。
 掲載された劇画は「子連れ狼」で知られる小池一夫の新作「結い親鸞」と題する親鸞上人を主題としたもので、源義経が奥州・平泉で頼朝軍の攻撃で最後の時を迎え、武蔵坊弁慶が敵軍に囲まれ、義経の遺髪を13歳の童子、範宴(のちの親鸞)に託し、比叡山で弔うことを依頼するところから物語は始まる。いままでにないストーリーで面白そうではあるが、これが半年、もしくは1年も続くのか、と思うと疑問が残る。15段の新聞紙面いっぱいに劇画が掲載され、登場人物のセリフも大きな文字で載っているのは迫力あるが、果たして新聞の1面すべてを使って掲載するものであろうか、と思った。
 「Uー29」は29歳以下の男女を対象にした紙面ということで、31面では「あなたも私も『贈りびと』」と題し、若者のプレゼントの実態を、35面では「百貨店閉店 なんで大騒ぎに」と百貨店の凋落の歴史と動静を取り上げ、若い読者層に読んでもらおう、との姿勢を打ち出してはいるが、メインが劇画ではねらい通りいくのか心もとない。
 確かに最近の祝日の新聞紙面は魅力がなく、広告もつかなくなっている。どうせ広告がつかないのなら、新しい読者層の開拓に向けて、大胆な紙面づくりをしよう、ということで始めたのだろう。特に日本経済新聞の主要な読者層は50代後半から60代に移り、団塊の世代が定年に入るに従い、部数が減少していくのは明らかである。
 だからといっていきなり劇画にいってしまうのは飛躍しすぎではなかろうか。日本経済新聞では電子新聞なるものの開発を進めており、インターネットで新聞を売ることを考えている。その場合、ターゲットは若い20代、30代に当てられるのは当然のことだろう。だから、ここで、一挙に20代の心をとらえよう、ということにでもなったのかも知れない。
 ただ、冷静に考えれば、日本経済新聞が歩んできた道はビジネスに関連した情報、つまり「BtoB」情報に特化していたことが強みとなってきた。それをインターネットによる電子新聞を出すからといって一般消費者向けの「BtoC」情報にもマーケットを広げよう、としても却って持ち味を失くす方向に進んでいくことにならないだろうか。インターネットに深入りすればするほど「BtoC」マーケットに突っ込んでいくことになることを知らないのだろうか。
 小池一夫はその世界でトップの能力を持った人で、劇画そのものの社会に果たす役割りは相当なものがあるのはわかる。が、劇画はだれが見ても「BtoC」に属する情報である。そんな「BtoC」志向の新聞には企業はますます広告を出そうとはしなくなることだろう。しかも新聞に掲載した劇画を子会社の日本経済出版社から出版することにでもなると、子会社の持ち味すら危うくなってくる。
 どう考えても日本経済新聞社の幹部がビジネスの基本を取り違えている、としか思えない。09年5月30日が日本経済新聞が岐路に立った日と思えてならない。

追記 注目の「結い親鸞」の第2回目にあたる6月6日は「作者小池一夫の都合により」とわけのわからない理由で休載となってしまった。週刊文春6月11日号に「小池一夫は小室哲哉と同じようにすべての著作権を第3者に譲り渡しているが、今回はそこを通さずに連載を始めてしまい、もめている」との記事が載った。真相がわからないが、評判がよくなかったのも事実だろう。日経では休載の期間を当面としているが、実際はとりやめということだろう。あれだけ大々的にスタートしたのがわずか1回でとりやめとは前代未聞のことである。やはり、日経のなにかが狂っている、としか思えない。
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4 コメント

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Unknown (ホント)
2009-06-01 22:02:47
私も、朝刊の紙面を見て唖然としました。若き日に同社との取引で日経新聞の気概を聞き、大変感動してから四半世紀。何かが変わったのでしょうか。自分と同年齢の人間が中核となり、世代的に軽いノリで「やってみよう」ということになったのでしょう。理解できる気もしますが、あまりに社会や若者へ迎合しているようで何か複雑です。自分も年取ったんでしょうね
結い 親鸞 (kouji)
2009-06-01 22:54:33
誰でも自分の予想外のことがおこると、戸惑うものだし、それが大々的な宣伝も無く、近くなってから突然なら尚更だと思う。

理解できないものは恐れるし、怒りもするだろう。だが、嫌なら読まなければいい。最後まで読んだ人だけがつまらなかった、面白かった、と言える資格があるのだ。
初回だけ見て、いきなり批判を言うのは愚の骨頂。主観だけでなく多角的な視点に立って、考えて欲しい。漫画はアメリカでは普通に日曜版に入ってます。

批判がある程度起こるのはそれこそ日経の想定内だろうし、誰もやったことのない事業に挑戦する先駆者として、私は日経新聞を評価したい。
困難を乗り越えて是非成功事例を作って頂き、
新しい文化発信を歴史に変えて欲しい。
いつか新聞に漫画連載できることが漫画家にとってステータスになり、世間が新聞に漫画の連載があることを現在の小説連載と同様に、あって当たり前と思う日が来るように。
Unknown (すみません)
2009-06-03 21:40:33
日経の人ですね。杉田会長に謝っておきます
Unknown (ホント ホント)
2009-06-08 19:37:15
koujiさんには悪いがやはり大人の感覚は間違ってないのでしょう。「愚の骨頂」がそのままご自身に返ってしまいましたね。
同時に誰も責任を取らずにうやむやになるのでしょう。
大切なのは、新しい分野への挑戦を大らかな気持ちで受け入れる素養と同時に、過去の経験から「何かおかしい」と思うことにモノ申す気概は忘れてはいけないのだと思いました。杉田会長云々で逃げるのではなく、表現が稚拙であろうともモノ申す年寄りにならないと。

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