鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

松本清張賞を受賞した社員食堂のおばちゃんがグラスを傾け、「ああ、うめえ」と叫んだ

2013-05-25 | Weblog
 24日朝、テレビ朝日の「モーニングバード」を見ていたら、注目する人としてことしの第20回松本清張賞を受賞した54歳の女性、山口恵以子さんを取り上げていた。画面には有楽町のガード下の社員食堂を切り盛りするどこにでもいる割烹着姿の女性が登場し、この女性が松本清張賞を受賞したというのだから、驚かされる。食堂で食事している社員も驚きの表情をしていたが、とてもミステリーを執筆するようには見えない。テレビは自宅で夜、ドレスに着飾ってグラスを傾け、至福の表情で「ああ、うめえ」とつぶやくその女性を映し出し、昼間の割烹着姿とのギャップがなんともいえずドラマティックだった。
 文芸春秋社が選考する松本清張賞には595扁の応募があり、山口さんの「月下上海」がめでたく受賞した、という。山口さんは早大を卒業し、若いころは漫画家を目ざしていたが、30歳ころから脚本家に切り替え、これまでにいくつかの作品を書いてきている。受賞した「月下上海」は昭和7年ころの中国・上海を舞台とするロマンスをからめたミステリーで、来月には文芸春秋社から出版されることとなっている、という。10年前から勤めている丸の内新聞事業組合の食堂には朝6時から11時までで、あとは執筆のための調査や執筆に充てている、という。お母さんと猫2匹と暮らしており、「小説を書くのが生きがいだ」という。
 趣味は執筆後にお酒を飲みことで、日本酒、ワイン、シャンパンなどなんでもござれ、というからすごい酒豪でもある。来月の渡される賞金500万円も世界中のうまいお酒を呑むことに使ってしまう考え、という。昼間とは違った表情で、シャンパンを飲みながら、モットーは「細かいことは気にしないこと」というから面白い。
 前に小さな会社の社長をしていたころに、付いていた秘書の女性が司法試験を受けるといって、辞めてしまい、それから3、4年してから突然電話をしてきて、やってきて、いきなり風呂敷に包んだ本を取り出し、「今度、横溝正史ミステリー大賞を受賞しました」と言ったので、のけぞったことがあった。その女性には2年ばかり仕えてもらったが、ついぞ文学に関する話をしたことがなく、そんな小説を書いているとはとんと知らなかった。それだけに大いに驚いた。そのことを知っている人に話した際に、多くの場合、そうした女性はいかにも書いています、という風情を見せないものだ、と聞いてなるほどと思ったことがあった。心のうちに秘めた思いを持って、一心に事を成そうとする芯の強さがあるのだろう。テレビで見ていた山口さんにもそうしたものを感じさせるものがあった。
 鈍想愚感子もいつか小説でも書いてみたい、と思っていて、かつて雑誌に載った松本清張賞の応募要領を切り取って、手元に置いておいたことがあったが、とうとう書き出すまでには至らなかった。松本清張賞への応募が600近くもあることも初めて知ったし、松本清張賞を受賞した人と聞くだけで、心底、尊敬してしまう。山口さんのような人を見ていると、とても敵わないと思ってしまう。放映を横で聞いていたコメンテーターの崔洋一監督が「山口さんが吉永みち子さんと飲んでいる姿を離れてみていたい」といったが、そんな心境にさせられた。
 
コメント (1)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする