鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

新興国の通貨はドルにリンクしていることを初めて知った

2012-10-05 | Weblog
 4日は東京・大手町に日経ホールで行われた景気討論会に行った。四半期ごとに行われるもので、当面する景気情勢についてエコノミストが議論するのだが、これだけ世の中が騒がしくなってくると、景気の動向どころではないのか、いつもより少なめの入りだった。三菱ケミカルホールディングスの小林喜光社長ら4人のパネリストが日本経済の見通しなどを語ったが、2時間の議論中、東日本大震災なる言葉が出てきたのは1回きりで、この種のエコノミストの頭からはあの大震災は消え去っているのだ、と実感した。あと、パネリストが一様に指摘していたのは行き過ぎた円高で、いかに日本経済に円高が重くのしかかっているか、改めて思い知った。
 パネリストの4氏とも景気は下向きの踊り場にさしかかっていることで、一致し、中国経済はじめ海外経済も一様に失速しており、特にここ10年好調を続けてきた新興国も勢いを失っていることを懸念していた。最後に司会が日本のとるべき道を尋ねたところ、小林社長に続いて、河野龍太郎BNPパリバ証券チーフエコノミスト、岩田一政日本研究センター理事長がそろって円高是正を指摘していたのが注目された。
 河野、岩田両氏によると、円はドルに対して変動するが、新興国の通過はドルに対して固定されているので、円に対してはそのまま切り下がっていく。現在の円は1970年比4倍になっており、実質実効為替レートは2倍となっているのに対して、ドイツは70年比2.2倍になっているが実質実効為替レートは1のままという。世界で日本とスイスだけがデフレに悩んでいるのは一重にこの行き過ぎた円高・スイスフラン高に理由がある、という。
 しかも世界市場で競争国となる韓国などを例にとると、アジア諸国の通貨はドルにリンクしているため、韓国ウオンはいま1970年比10なのに対し、日本の円は400となっている、という。こんなに差があっては日本の電気メーカーは韓国のサムソン電子に席巻されてしまうのも無理はないわけだ。中国も独自のやり方で同じような固定相場制を採っており、円との差は同じように開いており、これでは日本はますます世界市場で不利な立場に立たされてしまうこととなる。
 1971年のニクソン・ショックを受けたブレトンウッズ体制で金とドルの関係をなくしたことは誰もが知っているが、主要通貨だけが変動相場制となり、他の新興国などの通貨がドルと連動する、と決められたことなど知る人は少なかったのだろう。その当時の自民党政府の大蔵大臣は水田三喜男氏、大蔵次官は鳩山威一郎氏で両氏の責任は重い。まさか今日のような事態を迎えるとはゆめゆめ思わなかったのだろうが、自民党政府の責任であるのは確かである。
 そして、河野氏は円高阻止対策として「少なくとも基軸通貨国は極端な金融緩和をしない取り決めをすべきだ」と提言し、岩田氏は「先進国間でバランスのとれた為替の仕組みを考えていく必要がある」と語る。
 もちろん、円高により、輸入産品の価格が安くなり、消費者は恩恵を蒙るというメリットはあるが、輸入するための外貨を一体何で稼ぐか、となるとやはり輸出で稼ぐしかなく、極端な円高は日本経済を疲弊させることは否定できないだろう。
 
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